2025年以降のエネルギーとブロックチェーン

2019年05月28日

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

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セカンドステップでは、「EVとの連携」「蓄電池・家電製品などIoT機器との連携」「エネルギー企業同士での直接取引」の3つを紹介します。事例では、電力会社とブロックチェーンのシステムを開発する会社や自動車メーカーなど、複数社が連携しているケースが多く見られます。

執筆者:一般社団法人エネルギー情報センター
    理事 江田健二

富山県砺波市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア株式会社)に入社。エネルギー/化学産業本部に所属し、電力会社・大手化学メーカ等のプロジェクトに参画。その後、RAUL株式会社を起業。主に環境・エネルギー分野のビジネス推進や企業の社会貢献活動支援を実施。一般社団法人エネルギー情報センター理事、一般社団法人CSRコミュニケーション協会理事、環境省 地域再省蓄エネサービスイノベーション委員会委員等を歴任。

2025年以降のエネルギーとブロックチェーン

セカンドステップの2025年頃からは、ブロックチェーンを活用し始めたエネルギー企業同士、エネルギー企業と他業界企業、エネルギー企業と個人がつながり始めます。

ファーストステップは、自社完結でのブロックチェーンの活用が主流でしたが、セカンドステップは、企業同士がさらなる効率化やスピードアップ、新しいビジネスモデルの展開を進めていきます。

セカンドステップでは、「EVとの連携」「蓄電池・家電製品などIoT機器との連携」「エネルギー企業同士での直接取引」の3つを紹介します。事例では、電力会社とブロックチェーンのシステムを開発する会社や自動車メーカーなど、複数社が連携しているケースが多く見られます。

1.EVとの連携

ドイツのZF Friedrichshafen(ゼットエフ・フリードリヒスハーフェン)社は、ブロックチェーンを活用した「カーイーウォレット」という自動車用決済プラットフォームを構築しています。料金支払いや会員登録、ログインを必要としない充電スタンドの利用のほか、カーシェアリングなどの実現を目指しています。

同社は、EVの利用者が抱える問題として、走行可能な距離が短く頻繁に充電しなければいけないこと、充電ステーションによって決済システムが異なることに着目しています。

利用ユーザーは、パソコンやスマートフォンから「カーイーウォレット」に送金し、一定の上限金額まで自動的に支払いできるように設定します。EVを充電ステーションに接続すると、登録やログインすることなくバッテリーが充電され、自動的に支払いを完了します。

さらに将来的には、信号待ちなどの間に行われる電磁誘導充電とその支払いの実現を目指しています。同社は、運転中に少量でも充電を重ねることができれば、頻繁に充電しなければいけないというEVの短所を克服することができると考えています。

2.蓄電池・家電製品などIoT機器との連携

Fortumは、フィンランドの大手電力会社です。北欧諸国のほか、ポーランド、バルカン諸国、インドで事業を展開しています。フィンランドにおけるブロックチェーン関連のエコシステムづくりを目指し、2016年10月にブロックチェーンのプロジェクト「BOND」を立ち上げました。

BONDでは、仮想通貨としてではなく、非金融系のユースケースに特化するとしており、参加企業の関心が高いユースケースのものを中心に、利活用のための要件の洗い出しや、パイロット開発などを進めるとしています。

具体的には、マーケットプレイスやデジタル資産、物理資産、エネルギー市場/業界、5G、IoT、スマート環境・ビルディング、資産管理、物流などです。

ブロックチェーンを活用した、住宅内の家電製品をインターネット経由で操作するためのソリューションとして、室温を最適な温度に保つと同時に、家庭内の電力使用量に対する意識を向上させることを目指しています。

2016年、コンソーシアムBONDを立ち上げ、VTT、ETLA、Aalto University、NOKIAなどとともにブロックチェーン技術の活用方法を模索する取り組みを開始しています。

また、ドイツのSonnen社は、2008年に創業された太陽光発電設備用の蓄電池メーカーです。各家庭に設置された蓄電池は、インターネットを介してネットワーク化し、余剰電力をリーズナブルな価格で融通し合う仕組みです。

また、発電設備を持たない消費者も、ネットワークから電力を購入することができます。現在、世界に1万8000以上設置されています。2017年には、送電会社Tennetとのパイロットプロジェクトを開始しています。

家庭に設置されたSonnetの蓄電池を、IBMのブロックチェーン技術を使ってネットワーク化し、電力網の安定化について検証しています。「2017 Zayed Future Energy賞」、「Cleantech Global 100」など数々の賞を受賞しています。

3.エネルギー企業同士での直接取引 

ドイツのハンブルグに拠点を構えるPonton(ポントン)は、ソフトウェア開発企業です。電力卸市場や商品市場における業務プロセスの標準化や、自動化のためのソリューションを中心に手がけています。また、ブロックチェーン技術を活用したピアツーピアでの電力取引支援ツール「エナーチェーン」を開発・提供しています。

2016年11月、オランダで開かれたEMARTカンファレンスにおいて、電力取引企業2社による欧州初となるブロックチェーンにおける電力取引が、エナーチェーンを使って実施されました。

また同じく2016年には、ヨーロッパ有数のエネルギー会社であるE.onのフューチャーラボにおいてエネルギーの分散型卸取引の実証試験が行われましたが、このベースとなったシステムもPontonが開発したピアツーピアネットワークシステムです。

2017年5月には、欧州における中央管理者を置かない卸取引市場の立ち上げを目指し、欧州の大手エネルギー企業33社の賛同のもとプロジェクトが発足しました。

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