電力市場の収益ブレを見える化する──リスク管理の標準化を支えるEneRisQ®
| 政策/動向 | 再エネ | IT | モビリティ | 技術/サービス | 金融 |
一般社団法人エネルギー情報センター

本記事では、電力市場におけるリスク管理の課題を解決するソリューション「EneRisQ®」をご紹介します。大阪ガスとオージス総研の知見を融合し、収益のブレを定量的に把握し、最適なヘッジ戦略を支援。属人的なExcel管理から脱却し、リスク管理業務の高度化を実現します。
電力市場の現状とリスク管理の必要性
2016年の電力小売全面自由化により、電力は本格的に市場取引の対象となりました。
電力はかねてより「価格変動が激しいコモディティ(商品)」として知られ、近年、電力取引の競争が激化しており、市場はかつてないほど流動的になっています。
先物取引や先渡取引の活発化、発電・蓄電技術の進化、新制度・制度見直しといった市場、技術、制度の変化が、新たなリスクヘッジの手段を市場参加者にもたらしており、企業はより高度なリスク管理体制の構築を迫られています。
こうした状況下で市場競争に取り残されないためには、リスクを定量化し、適切に管理することが不可欠です。
電力取引・リスク管理ソリューション「EneRisQ®」は、このような電力事業者の課題を解決し、収益の安定化とリスクバランスの最適化をサポートするために開発されました。
株式会社オージス総研は、大阪ガスのエネルギー事業における知見と長年培ってきた金融取引リスク管理のノウハウを融合させる形で、共同で電力取引リスク管理業務の高度化を目指してソリューション化を進めています。
EneRisQ®のリスク管理4ステップ
電力取引におけるリスク管理は単にツールを導入するだけでは解決せず、いくつかのステップを踏むことで全体像を理解し実践することができます。
EneRisQ®は、こうしたリスク管理プロセスを効率化し、より安定的な経営を実現するための機能を提供します。
ステップ1:時価評価
電力および燃料ポジションを現在の市場価格に基づいて評価し、評価額および損益額を算出します。
ステップ2:感応度(デルタ)分析
リスク要因を一定幅変動させた際に評価額がどのように変化するかを分析し、感応度(デルタ)を把握します。
ステップ3:リスク量計算
損益に影響するリスク要因の発生確率と変動の幅を仮定し、それをもとに多数のシナリオをシミュレーション(モンテカルロ法)することで、将来の損益のばらつき(EaR)を把握します。
ステップ4:ヘッジ条件推計
ステップ3で算出した現状ポジションのEaRと、仮想取引※を加味したポートフォリオのEaRを比較し、仮想取引の限界単価を導き出します。
※仮想取引は、既に契約済みの取引とは異なり、現状のポートフォリオに対して新たに追加される可能性のある取引を指します。
これにより、電力市場でのポジションを調整し、リスク管理や利益の最大化を図ることができます。
EneRisQ®の主な機能と強み
「Solid and Simple」(重厚な計算ロジックとリスク管理への特化)をコンセプトに開発されたEneRisQ®は、複雑な電力取引のリスクを専門知識がない担当者でも分析できるよう設計されています。主な機能は以下の通りです。
分析機能 (Analysis)
・EaR分析
将来の市場変動による収益影響を定量化し、まだ確定していない取引である仮想取引を考慮した収支・EaRの比較をグラフィカルに表示します。
・デルタ分析
各リスクファクターがいつ、どれくらいのリスクを持っているかを一目で表示し、電力だけでなく、JCC・JLC・JCoalといった燃料種のリスク(燃料費調整による買いと売りの乖離リスク)も分析します。
・電力量分析
電力ポジションをコマ単位から日、月単位で可視化し、計画やヘッジ量の策定をサポートします。
・仮想取引シミュレーション
仮想取引を考慮した比較分析により、適切な収支ポートフォリオの構築を実現可能にします。
基本機能 (Base)
・フォワードカーブ推定
東京・関西の電力先物価格から、9エリア(北海道、東北、東京、中部、北陸、関西、中国、四国、九州)・年月・平休日を考慮したコマ単位のフォワードカーブを生成します。
また、先物価格の存在しない日本の燃料平均輸入価格(JCC、JLC、JCoal)のフォワードカーブも生成可能です。
・市場データ自動更新
電力現物・燃料(JCC/JLC/JCoal)現物といった面倒な市場価格の自動更新機能を提供し、価格高騰時にも収支見込みとリスクを常に最新化することで、迅速な判断を可能にします。
・レポート機能
各分析結果をCSV形式で出力可能で、収支見込みレポートなども出力できます。
システム構成
AI・機械学習で利用されるPythonのデータ分析ライブラリを活用し、堅牢な計算エンジンとデータ分析ライブラリをオージス総研のクラウド環境で提供します。
データ作成には、ビジネスシーンにおいて圧倒的なシェアを誇るExcelをベースとした入力支援ツールを採用しており、使い慣れた操作環境の中でマトリクスデータの作成・管理を効率的に行うことができます。これにより業務負荷を抑えつつ、スムーズな運用が可能です。
安心の導入支援
EneRisQ®では導入前に評価版をご利用いただけます。
ポートフォリオ(計画データ)の一部をご提供いただくことで、EneRisq®とのデータ形式や粒度の整合性を分析し、ギャップがある場合にはその解消方法もご提案いたします。
評価版は導入企業のPCからアクセス可能で、製品版と同様の全機能を最長2か月間ご利用いただけます。※
また、操作方法のレクチャーもあるため、初めての方でも安心して試すことができます。
※一部市場データが最新ではない場合があります。
電力事業の課題と将来性
EneRisQ®は、電力小売・発電の全面自由化以降、多くの電力事業者が直面する「収益のブレ」や「データ管理の煩雑化」といった課題に対し、ETRM(エネルギー取引・リスク管理)ツールとして効果的な解決策を提供します。
Excelベースでのリスク分析は、計算負荷、属人化、計算ロジックの複雑化、実績データ反映の難しさ、ヘッジによる妥当性検証の困難さといった課題を抱えがちですが、EneRisQ®はこれらの課題を解消し、リスク管理に必要なデータ管理や計算ロジックをソリューションに任せることを可能にします。
市場が比較的安定している今こそ、将来の不確実な変動に備える絶好のタイミングです。
EneRisQ®は、電力事業者が市場の変動を乗り越え、安定した収益確保と持続的な事業成長を実現するための心強いパートナーとなるでしょう。
動画にてEneRisQ®をご紹介
【電力取引・リスク管理ソリューション(ETRM)EneRisQ】
https://www.ogis-ri.co.jp/pickup/enerisq/
執筆者情報
一般社団法人エネルギー情報センター
EICは、①エネルギーに関する正しい情報を客観的にわかりやすく広くつたえること②ICTとエネルギーを融合させた新たなビジネスを創造すること、に関わる活動を通じて、安定したエネルギーの供給の一助になることを目的として設立された新電力ネットの運営団体。
| 企業・団体名 | 一般社団法人エネルギー情報センター |
|---|---|
| 所在地 |
〒160-0022 東京都新宿区新宿2丁目9−22 多摩川新宿ビル3F |
| 電話番号 | 03-6411-0859 |
| 会社HP | http://eic-jp.org/ |
| サービス・メディア等 |
https://www.facebook.com/eicjp
https://twitter.com/EICNET |
関連する記事はこちら
一般社団法人エネルギー情報センター
2026年02月26日
系統用蓄電池は、いつから「前提」になったのか【第1回】前提化が生まれた三つの流れ
ここ数年、系統用蓄電池という言葉が特別なテーマとしてではなく、電力分野の議論の中で自然に登場する場面が目立つようになりました。再エネ拡大や需給調整、市場制度、投資環境など、異なるテーマを扱う会議や資料の中で、蓄電池が前提として語られること自体、もはや珍しくありません。 議論の入り口は補助金、価格差、市場、系統運用などさまざまですが、気づけば、かつて導入の是非や実証が主題だった蓄電池は、最初から存在する前提条件のように扱われ始めています。 本稿では、この前提化を形作っている要素の重なりを並べながら、背景を見つめ直すところから始めます。
一般社団法人エネルギー情報センター
2026年02月19日
第2回は、第1回で揃えた前提で、GX戦略地域が目指す官民の工程表を揃える仕組みを整理しつつ、各ステークホルダーの実務の論点まで言及して行きます。
一般社団法人エネルギー情報センター
2026年01月12日
【第1回】AIデータセンター時代のシステム設計:ワット・ビット連携、GX戦略地域、PPA・電源ポートフォリオの実務論点
データセンターは、地域の電力インフラ設計を左右する存在へと変わりつつあります。背景には、需要施設の増加や、高負荷率・増設前提という運用特性に加え、脱炭素の要件も加わり、結果として、電力の「量」だけでなく「確実性」と「環境価値」が事業の成否を分ける事が挙げられます。
こうした状況の中で、日本でも制度設計が大きく動いています。具体的には、系統用蓄電池における系統容量の「空押さえ」問題に対して規律強化が議論される一方、国としてはワット(電力)とビット(通信)を一体で整備する「ワット・ビット連携」を掲げ、自治体誘致やインフラ整備を含めた「GX戦略地域」等の枠組みで、望ましい立地へ需要を誘導しようとしています。さらに、需要家側では、脱炭素要請の高まりを受けて、PPAなどを通じた環境価値の調達や、電源ポートフォリオ(再エネ+調整力+バックアップ等)をどう設計するかが、契約論を超えて運用設計のテーマになっています。
本シリーズでは「AIデータセンター時代のシステム設計」を、①ワット・ビット連携、②GX戦略地域、③PPA・電源ポートフォリオの実務論点――という3つの観点から、全3回で整理します。日本の最新の制度設計と接続して、実装するなら何が論点になるかに焦点を当てるのが狙いです。
一般社団法人エネルギー情報センター
2025年09月22日
電力市場の収益ブレを見える化する──リスク管理の標準化を支えるEneRisQ®
本記事では、電力市場におけるリスク管理の課題を解決するソリューション「EneRisQ®」をご紹介します。大阪ガスとオージス総研の知見を融合し、収益のブレを定量的に把握し、最適なヘッジ戦略を支援。属人的なExcel管理から脱却し、リスク管理業務の高度化を実現します。
一般社団法人エネルギー情報センター
2025年05月19日
【第3回】電気主任技術者の人材不足とは? 〜効率的な保安制度の構築と今後の展望〜
これまで2回にわたり、電気主任技術者の人材不足に関する背景や、業界・行政による育成・確保の取り組みを紹介してきました。最終回となる今回は、『制度』の観点からこの課題を詳しく見ていきます。特に、保安業務の効率化やスマート保安の導入、制度改革の現状と課題を具体例とともに解説し、今後の展望を詳しく見ていきます。


