エネルギー業界を変革するAX戦略
発売日:2025年12月20日
出版社:電気書院

エクサウィザーズの実践知で読み解く、現場主導の新たな挑戦! 2030年の未来図ーーAX(AIトランスフォーメーション)の時代に向けた事業・組織・働き方 関西電力、東北電力、中国電力、東京電力PG、関西電力送配電、中部電力PG、東京ガス、出光興産――変革の主役はもう動き始めている。
著者情報

エクサウィザーズ 常務取締役・最高執行責任者(COO)
京都大学工学部卒業。同大大学院工学研究科修了(都市計画AI・データサイエンス)。2013年、ボストンコンサルティンググループ(BCG)に入社。事業成長戦略、事業変革、DX推進、新規事業立ち上げなどの多数のプロジェクトに従事したのち2018年、エクサウィザーズに入社。2019年4月より、AI事業管掌執行役員として年間数百件のAI導入・DX実現を担当。企業の経営層や管理職向けDX研修の講師実績が多数ある。2020年6月に取締役、2023年6月に常務取締役・COOに就任。同年10月よりExa Enterprise AIの代表取締役も務める。兵庫県立大学客員准教授。兵庫県ChatGPT等生成AI活用検討プロジェクトチームアドバイザー。著書に『Web3時代のAI戦略』(日経BP、2022年)、『次世代AI戦略2025 激変する20分野 変革シナリオ128』(日経BP、2021年)。

エクサウィザーズ エネルギーセクター責任者
京都市出身。2013年、京都大学大学院理学研究科物理学・宇宙物理学専攻修了。同年、ヒューレット・パッカードに入社し、システムエンジニアとして電力会社向けシステム開発に従事。2017年よりデロイトトーマツコンサルティングにて、電力会社のシステム企画・開発・運用に携わる。2020年、エクサウィザーズに入社。電力・ガス会社のAI開発・活用促進プロジェクトに年間約10件程度従事し、予測・最適化・画像認識・生成AI技術の活用を通じて、概念実証(PoC)から本番稼働・業務利用への移行を支援。新卒以来、電力業界のIT・AI領域に携わり、さまざまな業務領域でのプロジェクト経験を有する。2025年4月より現職。

エクサウィザーズ アドバイザー
1960年、大阪府生まれ。1983年、京都大学工学部機械系物理工学科卒業後、大阪ガスに入社し、主に研究開発(R&D)・IT部門でオープンイノベーション、サービスサイエンス、データサイエンスなどを主導。2016年より業界で初めて米国シリコンバレーに駐在し、欧米のクリーンテック (脱炭素系スタートアップ)企業とのビジネス開発を開拓。2018年、東京ガスに入社し、シリコンバレーのコーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)立ち上げに参画。2021年に帰国後、東北電力に入社し、事業創出部門のアドバイザーに就任。また、大阪大学フォーサイト取締役のほか、エクサウィザーズやグリーンタレントハブ、インベストメントラボ、東京都脱炭素化ファンド・オブ・ファンズのアドバイザーなども兼務。南カリフォルニア大学ロボット研究所客員研究員、京都大学大学院非常勤講師、大阪市立大学(現:大阪公立大学)非常勤講師、日本オペレーションズ・リサーチ学会副会長などを歴任。共著書に『蓄電所ビジネス』(電気書院、2025年)、『図解即戦力 電力・ガス業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』(技術評論社、2024年)。
解説/内容
エクサウィザーズの実践知で読み解く、現場主導の新たな挑戦! 2030年の未来図ーーAX(AIトランスフォーメーション)の時代に向けた事業・組織・働き方 関西電力、東北電力、中国電力、東京電力PG、関西電力送配電、中部電力PG、東京ガス、出光興産――変革の主役はもう動き始めている。
本書のコンセプトと構成/目次等
目次はじめに
第1章 エネルギー業界に迫る構造転換――なぜ今、AXが必要なのか?
1 エネルギー業界を取り巻く環境変化と構造転換の必要性
2 AXを阻む「壁」とは何か?
3 エクサウィザーズが提唱する包括的AXの重要性
第2章 現場から見るエネルギーAX――変革のエンジンは「守り」と「攻め」の両輪で回す
1 盤石なる「守り」の礎――従来型AIという名の支援者
2 生成AI革命――「知の継承」から「知の創造」へ
3 AXの未来図――自律的に「攻め」を実行するAIエージェント
4 ベテランが去る日、組織が手にするもの
第3章 実践知に学ぶ国内主要プレーヤーのAX戦略――トップランナーが語る戦略と実践
1 関西電力 「AI産業革命」を見据えたデジタル改革――ビジョンと組織風土のあり方
2 東北電力 電力会社が目指す、生成AIを用いた新規事業を通じた「地域創生」へのチャレンジ
3 中国電力(火力発電) 石炭火力発電所における燃料運用最適化と脱炭素化への対応
4 中国電力(水力発電) 熟練者と技術をつないだ「AI水力発電所」へ
5 東京電力パワーグリッド 業界の未来と「まちと一体化」したAIビジョン
6 関西電力送配電 ビジョンと実行の「二人三脚」――CDOと推進リーダーが動かす組織変革
7 中部電力パワーグリッド 現場主導で本社は後方支援――自律的なDX推進戦略
8 東京ガス 「稼ぐAI」で進化する東京ガス――AIネイティブ企業への変革のチャレンジ
9 出光興産 事業部との共創を通じた業務プロセス変革の哲学とチャレンジ
第4章 海外の先進事例に学ぶ
1 エネルギー業界におけるAI活用の歴史
2 電力業界(発電)
3 電力業界(送配電)
4 電力業界(貯蔵・調達)
5 電力業界(小売)
6 ガス業界
7 石油業界
8 エネルギー業界(業界標準)
9 エネルギー業界(組織、仕組み)
10 エネルギー業界(研究開発)
11 エネルギー業界(フィールド業務・プラント)
12 エネルギー業界(環境)
13 エネルギー業界(サイバーセキュリティ)
14 異業種からの変革者
第5章 2030年の未来図――AIが創り変える事業・組織・働き方
1 「AIカンパニー」時代の到来
2 「AIカンパニー」は何が違うのか?
3 「AIカンパニー」への変革
おわりに――AGIの足音
著者メッセージ
2022年末のチャットGPT(ChatGPT)の登場以来、生成AI(人工知能の一種)は、瞬く間に社会のあらゆる場面に浸透し、そのあり方を根底から変えようとしています。この変化の波は、蒸気機関の発明が第1次産業革命を、電力が第2次産業革命を引き起こしたように、私たちの働き方、ビジネス、そして社会構造そのものに、後戻りのできない不可逆的な変革をもたらすインパクトを持っています。生成AIは、ホワイトカラーの労働生産性を飛躍的に高める可能性を秘めており、新たな価値創造の源泉となりつつあります。このような技術革新のなか、日本のエネルギー業界は、脱炭素化、安定供給、経済成長などの至上命題に同時に対応するという、極めて困難な舵取りを迫られています。特に国際社会の一員として達成を約束した「2050年カーボンニュートラル」の実現は、再生可能エネルギー(以下、再エネ)の主力電源化や、既存の火力発電における脱炭素燃料への転換、原子力の活用など、エネルギー供給構造の抜本的な転換を求めるものです。また、頻発する自然災害や、緊迫化する国際情勢による燃料コストの変動、地政学リスクの高まりを受け、「社会インフラとしての安定供給」はかつてないほど重要な経営課題となっています。
「脱炭素化」と「安定供給」。この2つの目標は、ときにトレードオフ(二律背反)の関係にもなり得ます。例えば、天候によって出力が変動する再エネの導入を拡大すれば、電力系統の安定性を維持するための調整力がより一層求められます。こうした複雑な制約条件の中で最適解を導き出し、持続可能なエネルギーシステムを構築していくことは、従来の延長線上にある改善活動だけでは到底なし得ません。このように業界が大きく変化するなか、AI、特に生成AIの活用を前提とした「AX(AIトランスフォーメーション)」が、非常に重要な役割を果たします。ここでいうAXとは、企業がAIを前提として業務の再構築を行うことで、抜本的な生産性向上、新たな価値創造を目指すものです。
これまでもエネルギー業界では、局所的なAI活用が模索されてきました。需要予測や設備保全、発電計画の最適化など、特定の業務領域において、従来型のAIが成果を上げてきた事例は少なくありません。しかし、生成AIの登場は、その適用範囲を飛躍的に広げました。熟練技術者が持つ暗黙知であった運転ノウハウや保安技術を、AIが形式知化し、組織全体で共有・伝承する。現場で撮影した写真や手書きの図面、日々の会議の音声といった、これまで活用が難しかった非構造化データをAIが読み解き、新たな洞察や業務効率化のアイデアを生み出す。さらには、自律的にタスクを遂行するAIエージェントが、人の良きパートナーとして、より高度で創造的な業務を支援する。こうした未来は、もはや空想の産物ではなく、足もとで実現しつつあります。
本書は、エネルギー業界が直面する構造転換の荒波を乗り越え、抜本的な生産性向上や新たな価値創造を実現するための羅針盤となることを目指しています。第1章では、なぜ今、エネルギー業界にAXが必要なのか、その背景と構造転換の必要性を解説します。第2章では、生成AIが現場の業務を具体的にどう変えるのか、豊富な事例を交えて詳述します。第3章と第4章では、国内外の具体的な取り組みから、AXの実践知をまとめます。そして第5章では、AIによって事業・組織・働き方がどのように変容していくのか、2030年の未来図を描き出します。
対象読者として、エネルギー業界の経営層や企画部門の方々はもちろんのこと、AIを自社の生産性向上や新たな価値創造に活かしたいと考える、あらゆる業界のビジネスパーソンを想定しています。専門的な内容も含まれますが、可能な限り平易な言葉で、実践的な示唆に富む内容となるよう心がけました。
生成AIによる知の爆発が起こるこの時代に、本書が、読者の一人ひとりにとって、自社の、そして日本のエネルギー業界の未来を切り拓くための一助となることを、心より願ってやみません。
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