ブロックチェーンの3つの特徴
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2019年02月27日
一般社団法人エネルギー情報センター
前回のコラムでブロックチェーンは、インターネットの出現時と同じくらいの規模でビジネスに影響をあたえると書きました。今回は特に影響を与える「契約締結・信頼構築・価値の証明や交換」について説明します。
執筆者:一般社団法人エネルギー情報センター
理事 江田健二
富山県砺波市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア株式会社)に入社。エネルギー/化学産業本部に所属し、電力会社・大手化学メーカ等のプロジェクトに参画。その後、RAUL株式会社を起業。主に環境・エネルギー分野のビジネス推進や企業の社会貢献活動支援を実施。一般社団法人エネルギー情報センター理事、一般社団法人CSRコミュニケーション協会理事、環境省 地域再省蓄エネサービスイノベーション委員会委員等を歴任。
契約や取引のスピードが格段に早くなる
ビジネスで契約書を交わすときのフローを思い出してみてください。契約書はあらかじめ2部作成し、2部が同じ内容であることを確認して、押印します。同じ内容の契約書をお互いに1部ずつ保管するのは、契約書が勝手に改ざんされないようにするためです。締結した契約書は、鍵のかかったロッカーなどに厳重に保管します。これまで、契約の締結・保管にはこのように、多くの時間とコスト、手間がかかってきました。
ブロックチェーンは、この契約締結のフローを単純に、かつ早くします。手順はなんと、ブロックチェーン上で契約内容を確認し、双方がインターネット上でサインするだけで終了です。
これは、ブロックチェーンに書き込まれると、その事実は「改ざん不可能な情報として保存される」特徴によるものです。例えば、2月5日に土地の売買契約が交わされ、ブロックチェーン上に契約とサインが書き込まれると、その事実は改ざん不可能な情報として保存され、誰かが勝手に手を加えることはできません。
エネルギー分野でこの特徴を活かす例として、電力会社の切り替え契約があります。ブロックチェーンを使えば、スマートフォンからなんとワンクリックで契約の切り替えが可能になります。つまり、ブロックチェーンを活用することで、契約や取引などにかかる時間やコストが激減します。
個人が直接、安心して取引できる
あまり意識することはないのですが、私たちはビジネスの取引相手に対して、常に信頼関係の有無を前提条件としています。初めて取引をする際に「顔合わせ」という場面をよく設けますが、それもそのためです。
あまりよく知らない、信頼関係がまだ築けていない相手との取引が必要になった場合は、第三者に仲介を依頼します。信頼できる第三者に、信頼を担保してもらう=仲介してもらうことで、安心して取引を進められる、というわけです。
例えば、私が山田さんという、ネット上で知り合った人と取引が成立し、お金を渡す必要が生まれたときは、山田さんの銀行口座に振り込みます。私の銀行通帳の入金データが、入金したという事実になるからです。
そして、こうした仲介者には相応の仲介手数料を支払います。ところが、ブロックチェーンはネットワークが2人の取引内容を保証してくれますので、知らない相手との取引でも仲介者を必要としません。
ブロックチェーンを活用している仕組みとして、ビットコイン(仮想通貨の1種)がありますが、ビットコインは相手に直接ビットコインを渡すことができ、また相手に自分がビットコインを渡したという事実は、ブロックチェーン上で保障されます。
仲介者が必要なくなるということは、仲介手数料も発生しないことを意味します。すると、これまではあきらめていたような取引が実現することになります。非常に少額な取引や、何人もの仲介者を経由しなくてはいけないような取引が、ブロックチェーンの活用で気兼ねなくできるようになります。
エネルギー分野でいえば、家庭同士で簡単に電気を売買しあうことが可能になるでしょう。また、街中を走る電気自動車同士で電気の融通をすることも可能になります。
改ざんできない情報により新しい価値を生み出す
ブロックチェーンの、「第3者によるデータの改ざんができない」特徴は、あらたな情報の価値を生み出します。これまで私たちがパソコンで作った情報は、書き換えが簡単にできるものでした。ワードで作られたテキスト情報は、すぐにコピーや書き換えができます。
請求書をワードで作ってもメールに添付だけではなく、印刷して原本を郵送しますが、これはメールで送った請求書データが書き換えられるため、わざわざ原本を用意するわけです。
しかし、ブロックチェーンは書き込まれた情報が改ざんされていない、つまり正しい情報であることが証明できるため、複数の人で情報を共有、管理するときにとても役立ちます。
例えば、ソニー子会社では、学生の成績証明書等をブロックチェーンで管理し共有できるサービスを始めました。このおかげで、大学入試の際に成績証明書等の書類を受験校ごとに印刷して紙で提出する手間が省けます。
高校の先生、受験生、大学の先生の時間とコストを大幅に減ります。このように、改ざんできない情報を異なる複数の人で閲覧・共有できることは非常にメリットがあります。エネルギー分野でいえば、発電所の資産情報の管理や共有に役立つでしょう。
また、ブロックチェーンを活用して、これまでに証明できなかった情報を証明し、価値を与えることが可能になります。例えば、太陽光発電施設が1日の発電量をブロックチェーンに書き込めば、それだけでその施設の太陽光発電の発電実績が証明されることになります。ブロックチェーンのデータは、改ざん不可能な情報だからです。太陽光で発電されたという環境価値を記録し、共有できるので、取引も可能になります。
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執筆者情報
一般社団法人エネルギー情報センター
EICは、①エネルギーに関する正しい情報を客観的にわかりやすく広くつたえること②ICTとエネルギーを融合させた新たなビジネスを創造すること、に関わる活動を通じて、安定したエネルギーの供給の一助になることを目的として設立された新電力ネットの運営団体。
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