ノーベル賞の有力候補に日本人、ペロブスカイト太陽電池とは
政策/動向 | 再エネ | IT | モビリティ | 技術/サービス | 金融 |
2017年09月28日
一般社団法人エネルギー情報センター

9月20日、米国の科学情報企業であるクラリベイト・アナリティクスは、2017年の「クラリベイト・アナリティクス引用栄誉賞」を発表しました。ノーベル賞クラスと目される研究者が選出されており、日本人では「ペロブスカイト」を太陽電池に応用できることを発見した宮坂力氏が選ばれました。
ペロブスカイトを活用した、日本発の革新的太陽電池
今世紀に入り、地球環境問題はますます顕在化しています。さらにはエネルギーの安全確保の観点から、現在世界中でエネルギー政策の見直しが進んでいます。太陽光発電の大量導入が世界の潮流となる中、制度の後押しもあり、日本国内でも太陽光発電の普及が進んできました。
太陽電池は、太陽光のエネルギーを電気に変換するものです。新たな半導体材料の開発、素子構造の革新などにより、変換効率向上や低コスト化などが進められています。この太陽電池は、現状において、シリコン太陽電池やCIGSなどの無機系が一般的となっています。
これに対して、光吸収に有機材料を用いる太陽電池は有機系太陽電池と呼ばれ、低生産コスト・高柔軟性・軽量であること等を特徴とします。そうした特徴があるため、世界中の研究者が日々研究を行っています。
これら無機系と有機系の材料を組み合わせたものはハイブリッド型と呼ばれ、その中の代表的なものとしてペロブスカイト太陽電池があります。ペロブスカイト太陽電池は、日本では1990年代に発光材料として基礎研究で扱われました。
その後、桐蔭横浜大学の宮坂力氏がペロブスカイト太陽電池において、最初の光電変換の成功例を2009年に発表しています。ペロブスカイト太陽電池は、日本発の革新的太陽電池であり、日本・米国・欧州・中国・韓国等、世界中で研究開発競争が行われています。最近では、9月25日に東芝が、フィルム型のペロブスカイト太陽光発電で世界最高の変換効率10.5%を達成したと発表しています。[関連記事]。
2009年に発表された当時の変換効率は3.8%のため、一般的な太陽電池と比較して低い効率でしたが、2012年には2倍以上の10%を突破したことで世界中で研究開発が進みました。2016年には、米国NRELの認証値において22%を越える変換効率が報告されています(図1)。
図1 太陽電池の変換効率の推移 出典:National Renewable Energy Laboratory
ノーベル賞候補、日本からは化学分野において1名
9月20日、米国の科学情報企業であるクラリベイト・アナリティクスは、2017年の「クラリベイト・アナリティクス引用栄誉賞」を発表しました。ノーベル賞クラスと目される研究者が選出されており、日本人では「ペロブスカイト」を太陽電池に応用できることを発見した宮坂力氏が選ばれました。
今回の賞は2016年まで「トムソン・ロイター引用栄誉賞(ノーベル賞予測)」として発表されていたものです。学術論文の引用データ分析から、ノーベル賞クラスと目される研究者を選出し、その卓越した研究業績を讃える目的で発表されています。
2002年より毎年9月の発表が恒例化されており、今回は16回目となります。今回は22名が受賞し、日本からは、化学分野において桐蔭横浜大学の宮坂力特任教授が選ばれました。「効率的なエネルギー変換を達成するためのペロブスカイト材料の発見と応用」において、今回の受賞となりました。
この続きを読むには会員登録(無料)が必要です。
無料会員になると閲覧することができる情報はこちらです
執筆者情報

一般社団法人エネルギー情報センター
EICは、①エネルギーに関する正しい情報を客観的にわかりやすく広くつたえること②ICTとエネルギーを融合させた新たなビジネスを創造すること、に関わる活動を通じて、安定したエネルギーの供給の一助になることを目的として設立された新電力ネットの運営団体。
企業・団体名 | 一般社団法人エネルギー情報センター |
---|---|
所在地 | 東京都新宿区新宿2丁目9−22 多摩川新宿ビル3F |
電話番号 | 03-6411-0859 |
会社HP | http://eic-jp.org/ |
サービス・メディア等 | https://www.facebook.com/eicjp
https://twitter.com/EICNET |
関連する記事はこちら
一般社団法人エネルギー情報センター
2025年03月17日
2025年開始の東京都による第四期間の排出権取引、非化石証書の利用可否や電力会社の排出係数反映など各種内容が変更
東京都では日本政府に先駆けて2010年から排出権取引を開始しており、2025年からは節目の第四期間となり、これまでの運用経験等から様々な変更が行われています。電力関連では、非化石証書の利用が可能となるほか、電力会社の排出係数が勘案される内容となっており、本記事では変更の大枠を見ていきます。
一般社団法人エネルギー情報センター
2025年02月19日
2026年度から「成長志向型」カーボンプライシング開始の方針、排出権の市場取引を通じた脱炭素経営の抜本変化
日本においては2000年代から本格的に「カーボンプライシング」についての検討が進められてきましたが、2026年度からGXを基調とした新たな排出権取引が始まる方針です。これにより、脱炭素経営やビジネスが抜本的に変化する見込みとなり、本記事では現状の検討状況を整理しております。
一般社団法人エネルギー情報センター
2024年06月05日
2024年度の出力制御①出力制御とは?増加要因と過去事例について
再生可能エネルギーの導入拡大が進む中、「出力制御」の回数が増えているのをご存知でしょうか。今回は、近年増加している出力制御について、2回にわたってご紹介します。1回目はそもそも出力制御とは何か、増加している要因、過去の事例について、2回目ではその対策や今後の予測についてご紹介します。
一般社団法人エネルギー情報センター
2024年02月22日
4月からの容量拠出金による影響は?容量市場の仕組みと創設背景について
2024年度に供給可能な状態にできる電源を確保することを目的に、2020年7月、初めての容量市場でのオークションを実施。それに伴い4月から容量拠出金制度がスタートします。今回は、容量市場の仕組みや消費者への影響についてご紹介します。
一般社団法人エネルギー情報センター
2023年12月29日
持続可能な未来に向けて物流業界の脱炭素化は急務です。その中でも大手物流企業のGX事例は注目すべきアプローチを提供しています。今回は、脱炭素化の必要性と大手物流企業が果敢に進めるGX事例に焦点を当て、カーボンニュートラル実現へのヒントを紹介します。今回は中堅・中小企業のGX事例です。