東芝、フィルム型のペロブスカイト太陽光発電で世界最高の変換効率10.5%を達成
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2017年09月27日
一般社団法人エネルギー情報センター
9月25日、東芝はペロブスカイト型モジュールで、世界最高のエネルギー変換効率である10.5%を達成したと発表しました。ペロブスカイト太陽電池は、印刷プロセスで作製できるため低コスト化が可能であり、高い変換効率のポテンシャルを有する次世代太陽電池です。
フィルム型のペロブスカイト太陽光電池、変換効率10.5%を達成
現在、主流となっている結晶シリコン太陽電池は、重量および形態の面から設置場所が限られてしまいます。一方、フィルム型の太陽光モジュールであれば、従来は設置できなかった場所で発電することが可能となります。設置可能となる場所は多岐にわたり、例えば耐荷重性の低い建築物、そして曲面や壁にも取り付けられるため、ZEBやZEHの普及にも繋がると期待されます。
このフィルム型の太陽光発電について、東芝はペロブスカイト型モジュールで、世界最高のエネルギー変換効率である10.5%を達成したと発表しました(図1)。ペロブスカイト太陽電池は、印刷プロセスで作製できるため低コスト化が可能であり、高い変換効率のポテンシャルを有する次世代太陽電池です。なお、今回の成果は、NEDOの委託事業「高性能・高信頼性太陽光発電の発電コスト低減技術開発」によるものとなります。
図1 フィルム型ペロブスカイト太陽電池モジュール 出典:東芝
ペロブスカイト太陽電池は世界的にも注目を集めている技術です。最近では、9月20日に米国クラリベイト・アナリティクスが、ノーベル賞の有力候補22人を発表し、日本人では化学賞候補に、ペロブスカイト太陽電池の発見と応用に貢献した桐蔭横浜大学の宮坂力特任教授が選出されました。
独自の塗布印刷技術で大面積化の課題に対応
今回のフィルム型ペロブスカイト太陽電池モジュールについては、東芝による独自の塗布印刷技術が用いられ作製されています。それにより、5cm×5cmサイズで世界最高の変換効率10.5%を達成しました。
ペロブスカイト太陽電においては、大面積化が課題となっています。そこで、東芝が有機薄膜太陽電池の研究開発で培ったメニスカス塗布印刷技術で、セルごとの特性ばらつきを低減させてモジュールとしての効率を向上させました(図2)。
図2 メニスカス塗布印刷技術 出典:東芝
150℃以下の温度で作製可能なプレーナ型逆構造
今回の技術では、樹脂フィルムを基板としていることから、セル構造として150℃以下の温度で作製可能なプレーナ型逆構造が採用されています。
また、高効率化の工夫として、モジュール作製のスクライブプロセスでは、刃圧の最適化と、弱い刃圧でも電極上の膜が良好に除去できる材料の組み合わせにより、ガラス基板を用いた場合と同等なレベルにセル間抵抗を減少させています。加えて、樹脂基板向けに開発されたITO透明電極のシート抵抗低減も、高効率化に寄与しています。
基幹電源並みの発電コスト7円/kWhを目指す
今回の成果により、フィルム型のペロブスカイト太陽光発電において変換効率が10%を超え、モジュールの高効率化、大面積化のポテンシャルを示すことができました。
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一般社団法人エネルギー情報センター
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