【第2回】再選トランプ政権の関税政策とエネルギー分野への波紋 〜日本企業・自治体の現場対応から読み解く実務課題と展望〜
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一般社団法人エネルギー情報センター

2025年4月に本格発動されたトランプ政権の「相互関税」政策は、日本のエネルギー分野にも広範な影響をあたえています。前回の第1回では、制度の背景や構造的リスク、太陽光・LNG・蓄電池といった主要分野への影響の全体像を整理しました。 本稿ではその続編として、実際に通商環境の変化を受けた企業・自治体の現場対応に焦点をあて、最新の実務動向と政策支援の現状を整理します。

出典:The official photostream of the White House
企業の対応:関税政策に対応した調達・生産戦略の再編
トランプ政権による相互関税政策の本格発動は、日本企業のエネルギー関連ビジネスにも幅広い影響を及ぼしています。とくにLNG(液化天然ガス)、再生可能エネルギー機器、蓄電池、電力インフラ部材など、さまざまな分野で通商リスクやコスト上昇への備えが急務となっています。
企業各社は、調達先の分散や現地生産の強化、制度の活用を組み合わせながら、安定した事業運営に向けた対応を進めています。ここでは、それぞれの分野での具体的な取り組みを整理します。
(1) LNG調達の多元化と契約戦略
トランプ政権による相互関税政策は、LNG分野でも米国依存のリスクをあらためて浮き彫りにしています。鉄鋼・アルミ関税の影響による米国LNG輸出基地の建設コスト上昇や遅延が進むなか、日本企業は調達先の分散を急ピッチで進めつつあります。
2025年4月の日本のLNG輸入実績では、アメリカからの輸入量が191千トンとなり、前年同月比で56.3%減少しました(財務省貿易統計 2025年5月速報より)。前年2024年4月実績(437千トン、前年同月比+ 38.6%)と比較しても、短期間での大幅な減少が確認され、減速傾向が一層鮮明になっています。
JERA(日本最大級の電力・エネルギー企業)は2025年5月、米NextDecade社と年間200万トン・20年契約を新たに締結。米国枠を一定確保しつつ、中東・豪州・カナダとの分散契約を拡充しています。特にカタールとの年間300万トン契約(3月締結)が中核となり、通商リスクを抑えたポートフォリオが構築されつつあります。
三菱商事はカナダ西岸の「LNGカナダプロジェクト」に15%出資しており、2025年夏以降の稼働を控えます。年間1,400万トン規模の生産に加え、今後は生産能力の倍増も視野に入れ、安定供給源の確保を進めています。

出典:財務省『令和 6年 4月分貿易統計(確々報)、令和 7年 4月分貿易統計(確報)』をもとに筆者作成。
(2) 蓄電池・電気部材の生産移管
2025年5月時点で、対中関税の強化は再エネ関連部材のサプライチェーン全体に波及しています。特に電池や電気部材では中国依存のリスク回避が課題となり、各社が生産体制の再編を加速させています。
日立ハイテクはポーランド新工場の稼働を開始し、EU原産地ルールの活用によって対米輸出ルートを再構成。関税負担を回避しつつ、供給の安定性も高めています。
一方、パナソニックは「Chinaプラスワン」戦略の一環として、豪州・ASEAN・北米で素材調達や生産拠点の拡大を進行中です。あわせて、米国インフレ抑制法(IRA)の税制優遇措置も活用し、北米域内の電池工場建設や生産能力の拡充に取り組んでいます。
これらの動きは、関税対策にとどまらず、地政学リスクの分散や市場競争力の確保といった複合戦略として展開されています。今後も政策変更や供給構造の変化を踏まえた柔軟な体制整備が重要な経営課題となるでしょう。
(3) インフラ用鋼材・部材コストの上昇と国内供給網の強化
鉄鋼・アルミニウム関税の継続強化は、電力・エネルギーインフラの各種部材コストを押し上げています。送電鉄塔、太陽光架台、風力タワー、変圧器鉄心などの構造用鋼材やアルミ部材の価格上昇が顕在化し、事業コストにも波及しています。
このため、国内調達体制の再構築が進展しています。JFEスチールなどの鉄鋼メーカーは高強度鋼材や特殊鋼板の国内生産体制を強化し、部材メーカーとも連携を深めています。
また、送配電設備を支える電力系統部材でも同様の動きが進んでいます。住友電工や古河電工は、変圧器用電磁鋼板や高電圧ケーブル分野での国内設備投資を拡大し、エネルギーインフラ整備を下支えしています。こうした対応は通商リスクを見据えた分散戦略の一環として位置付けられます。
2. 自治体の対応:関税政策によるエネルギー調達リスクへの現場対応
トランプ政権による相互関税政策は、自治体が進める再生可能エネルギー導入やインフラ整備にも一定の影響を及ぼしています。
特に部材価格の上昇や納期の不安定化を受け、現場では安定調達に向けた独自の対応が本格化しています。こうした取り組みは、地域のエネルギー自立や災害時のレジリエンス向上にもつながっています。
(1) 国産再エネ機器への調達切替
関税強化の影響により、海外製太陽光パネルや蓄電池の価格上昇・納期遅延が顕在化しています。これを受け、自治体では調達方針の見直しが進み、国産機器の優先採用へと転換する動きが広がりつつあります。
北九州市では、小中学校など公共施設の太陽光発電設備更新において国産パネルの導入を拡大。加えて、老朽設備のリユース活用によるコスト抑制と循環型経済(サーキュラーエコノミー)推進も同時に進められています。こうした取り組みは、海外サプライチェーンの不安定化に備えた地域独自の安定供給策の一例となっています。
他の自治体でも、エネルギー関連機器の調達における国産品への切り替えや調達先の多様化が進んでいます。たとえば、ある自治体では海外製蓄電池の価格上昇を受け、国内メーカーとの連携強化を通じた安定供給体制の構築が図られています。
3. 制度支援と実務課題:政府の関税対策パッケージ
トランプ政権の相互関税政策を受け、日本政府も企業や自治体の現場対応を支える制度支援を多面的に展開しています。
価格高騰対策、中小企業支援、資源調達リスク軽減といった政策パッケージが整備され、柔軟な実務対応を後押ししています。ここでは主要な支援策と課題対応の現状を整理します。
(1) 緊急経済対策による価格高騰抑制
2025年4月の関税措置発動を受け、日本政府は速やかに緊急経済対策パッケージを編成し、燃料・電力価格の高騰リスクに対応しました。5月には追加の経済対策も決定され、家庭や事業者のエネルギー負担軽減策が本格的に実施されています。
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