EV用「車載電池」の最新動向と、リユースの可能性

2022年02月07日

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

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世界の電気自動車(EV)シフトが加速するにつれて、EVの性能を最も左右すると言われているバッテリー(電池)にも注目が集まっています。EV製造時のCO2排出を抑え、循環型社会を実現するにはバッテリーの再利用(リユース)の取り組みも重要です。今回は、EVにまつわる車載電池の最新動向と、リユース電池の可能性についてご紹介します。

次世代電池の技術開発でEVの普及に期待

2022年1月、パナソニックは2023年にもEV用の新型リチウムイオン電池を量産すると発表しました。車載電池はEVコストの約3割を占める中核部品で、その性能が航続距離を左右します。今回の新型リチウムイオン電池では、航続距離を従来より2割長くでき、電池重量あたりの航続距離で世界最長水準になるとみられます。EVは航続距離の短さが課題でしたが、1回の充電で長距離移動できれば既存のガソリン車と遜色ない使い勝手が実現します。

近年、次世代電池として電解液を固体に置き換えた安全性の高い「全固体電池」が注目を集めてきました。全固体電池は、リチウムイオン電池に使用されている液体電解質の代わりに、固体素材で作られた電解質を使用します。バッテリーの安全性を高めるだけでなく、リチウムイオン電池と比較して、約2倍のエネルギー密度を持つことにより、航続距離の拡大や充電時間の短縮を可能にすると期待されていました。トヨタ、日産、ホンダ、メルセデスベンツなど各自動車メーカーも開発を進めていますが、実用化(量産)には当面時間がかかる見通しがあり、リチウムイオン電池を利用した新しい技術に再び注目が集まっています。

中でも注目されているのが「ドライ電極」という技術です。2020年にテスラが開催した「バッテリー・デー」で、次世代電池の見通しとして同技術を採用することを発表しました。

現在、テスラに続き、フォルクスワーゲン(VW)も開発に乗り出しているということです。2022年1月18日、VWが米電池開発スタートアップの24Mテクノロジーズに25%出資したことを発表しました。24Mテクノロジーズの技術を利用することで、乾燥工程をなくし、製造設備で大きな面積を占める「乾燥炉」をなくすことができます。すると、電池事業の課題である莫大な設備投資と製造コスト、製造時のCO2排出量を削減できる可能性があるということです。

これらの車載電池に関する技術革新の動向から、性能の良いEVが市場に出回ることで、ますますEVの普及が進んでいくと考えられます。

EVは製造時のCO2排出量が多い!?カギは電池のリユース

次に車載電池のリユースということを考えていきたいと思います。

今までは走行時のみのCO2排出量が見られてきたが、ここにきて世界中でライフサイクル全体の排出量を評価する「ライフサイクルアセスメント」が強まっています。EVは走行時にCO2を排出しません。しかし、車種などにもよりますが、生産時の排出量はガソリン車の2倍を超えるとも言われています。その半分を占めるのが電池で、材料に使う化合物などの製造に多くのエネルギーを使います。

そのため、EV製造時のCO2の排出を抑え、循環型社会(サーキュラーエコノミー)を実現するにはそのバッテリーの再利用(リユース)分野の技術開発がカギとなります。
EVバッテリーは耐久性に優れ高性能ですが、劣化が進み走行距離が短くなってくると取り外され廃棄されているのが現状です。

一方で、先ほどの「ライフサイクルアセスメント」評価が厳しくなってきているため、新車としての役目を終えたEVは、中古車としての再利用に加え、中古バッテリーがゴルフカートやフォークリフト等に再利用されてきています。さらに、定置型蓄電池への利用についても、市場が広がりつつあります。

リユース・リサイクルのフロー(一例) 出典:経済産業省

エネルギーマネジメントシステムに活用をされているリユースEV蓄電池

ここで、2つの国内の事例をご紹介します。

1.セブン・イレブンの再生エネルギーによる電力調達

2010年に設立した4Rエナジー (日産51%/住商49%)は、EV蓄電池の再利用に関してこれまで多くの実証事業を重ねています。例えば、神奈川県内のセブン・イレブンの 10 店舗で開始した「再生エネルギーによる電力調達の実証実験」です。日産リーフの中古バッテリーを活用した、定置型の蓄電池を店舗に設置。発電効率を大幅に高めた太陽光パネルも設置することで、自家発電による電力を効率的に活用し、更に、2019 年 11 月より、発電分以外の電力の調達を「卒 FIT」電力から調達することで、自家発電分と合わせた再生可能エネルギー比率 100%を達成しました。

実証事業イメージ 出典:日産

2.MIRAI-LABOの自立型エネルギーシステム

省エネ機器製造のMIRAI-LABO(ミライラボ)は、太陽光路面発電パネルとリユースEV蓄電池を組み合わせた自立型エネルギーシステムの普及に努めています。ミライラボの路面発電装置は、シリコンやセラミックを混ぜた透明な特殊樹脂と太陽光パネルを路面に敷き発電します。発電した電気をためるために、車載リチウムイオン電池を再利用したバッテリーとセットで販売を進める計画で、バッテリーは街路灯などの電源にします。EVで一度役目を終えたバッテリーを、独自のバッテリー制御技術により再制御し、モビリティとは別の用途でリユースする事業に取り組んでいます。

これらの太陽光路面発電パネルとリユースEV蓄電池を組み合わせた自立型エネルギーインフラAIRによって、センサー・通信・照明などに自立してエネルギーを供給できるシステムの構築を目指しています。

自立型エネルギーインフラAIRイメージ 出典:MIRAI-LABO

このような取り組みにより、

  1. 「電池の性能劣化は観察されているが、安全性・信頼性に関わるトラブルは一度もない」こと
  2. 「少なくとも数年レベルの短期的な運用では、リユース蓄電池を使ったシステムは、新品のものと全く変わらず運用できる」ことが確認されています。
  3. 一方で、「電力システムのなかで活用する蓄電池は、制度上、その性能全てが正しく評価されていないという課題が残っている」

としています。(「車載用電池リユース促進WG」資料より)

さらに、2020年2⽉10⽇の経済産業省「車載用中古バッテリーのリユースシステム実装に向けた論点整理」では、中古バッテリーの性能に関して、

  1. 「ガイドラインの策定等により、残存価値を⾒える化する必要」があること
  2. 「車載用中古バッテリーの性能を担保する上で、残存価値のレベルに応じた標準づくりが適切」であること

が記載されています。

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