蓄電池×エネルギーマネジメント 第2回
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2024年03月12日
一般社団法人エネルギー情報センター
EVと並んで蓄電池と大きな関わりのある「エネルギーマネジメント」にテーマを絞って、蓄電池の今と未来を全6回に渡ってご紹介していきます。
執筆者:一般社団法人エネルギー情報センター
理事 江田健二
富山県砺波市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア株式会社)に入社。エネルギー/化学産業本部に所属し、電力会社・大手化学メーカ等のプロジェクトに参画。その後、RAUL株式会社を起業。主に環境・エネルギー分野のビジネス推進や企業の社会貢献活動支援を実施。一般社団法人エネルギー情報センター理事、一般社団法人CSRコミュニケーション協会理事、環境省 地域再省蓄エネサービスイノベーション委員会委員等を歴任。
記事出典:書籍『2時間でわかる 蓄電池ビジネスの未来: ウィズコロナ時代に拡大する20兆円市場に注目せよ!』(2020年)
大規模蓄電システム「産業用蓄電池」
家庭以外でも蓄電池(産業用蓄電池)の導入が進んでいます。産業用蓄電池とは、一般住宅以外のオフィスビルや工場、公共施設、コンビニやショッピングモールなどの商業施設などに設置する大規模蓄電システムのことをいいます。
家庭用蓄電池と同様に、産業用畜電池も東日本大地震をきっかけに、非常用電源としての重要性が再認識されるようになりました。また、平常時には電気料金を削減するなど省エネ効果も期待されるため、様々な企業や施設で導入が進んでいます。
産業用蓄電池は家庭用蓄電池に比べ、当然ながら容量が大きいのが特徴です。少ないものでも10数kWhから20kWh台、工場などでは500kWhを超える巨大な蓄電池を使用している場合もあります。また、家庭用蓄電池は前述したようにリチウムイオン電池が主流ですが、産業用にはこれに加えてNAS電池がよく用いられます。NAS電池は価格が安く大容量な上に耐久性が高いというメリットがあります。したがって規模の大きい施設には、リチウムイオン電池よりNAS電池のほうが適しているのです。
一般的な産業用蓄電池以外にも、大規模蓄電池として電力系統につないで利用される「電力系統用蓄電池」というものもあります。この大規模な蓄電池を再エネ発電所や基幹系統につなげば、電力が余ったときには蓄電し、電力が不足したときには放電することが可能となり、系統電力の安定化を図ることができます。
国は、蓄電池を活用したZEHの普及・推進と同時に、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル:年間の一次エネルギー消費量がネットでゼロとなる建築物)の普及を推進する政策目標を掲げています。
経済産業省は、2013年から進めている「大型蓄電システム緊急実証事業」、2015年の「大容量蓄電システム需給バランス改善実証事業」、2016年の「大型蓄電システムによる需給バランス改善実証事業」などを通じて蓄電池の実証実験を支援し、蓄電池の普及に力を入れています。
スマートハウスの進化に欠かせない蓄電池
蓄電池と太陽光発電の普及に伴い、「スマートハウス」に注目が集まっています。
スマートハウスとは、IT技術を使って「電気を創る(創エネ)、電気を貯める(蓄エネ)、電気を効率よくコントロールする(調エネ)」をすることが可能な住宅のことです。
スマートハウスでは、太陽光発電で電気を創り、蓄電池に電気を貯め、HEMS(ヘムス)と呼ばれるシステムで電気を管理しながら、効率的に電気を使うことができます。したがってスマートハウスは、「太陽光発電システムや蓄電池などのエネルギー機器、家電・住宅機器などをコントロールしてエネルギーマネジメントを行い、CO2の削減を実現した省エネ住宅」ともいえます。
ここまでに何度か出てきた「ZEH」は、Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の略で、スマートハウス分野におけるシステムの一種です。住宅の断熱性・省エネ性能を上げ、太陽光発電などでエネルギーを創ることにより、年間の一次消費エネルギー量(空調・給湯・照明・換気)の収支をプラスマイナス「ゼロ」にする住宅を指します。
今、住宅メーカーをはじめ様々な分野の企業や事業者が、スマートハウスに関わる技術開発と製品・サービス提供に取り組んでいます。特に最近はIoTやAI技術を活用したスマートハウスのシステム開発・製品化に拍車がかかっています。こうした状況の中で、スマートハウスに関する体系的かつ業界横断的な知識を持つ人材が求められており、そこには新たなビジネスチャンスがあるといえます。
スマートハウスをさらに進化させるには様々な技術が必要となってきますが、ここでも肝になるのは、電気を貯め、コントロールするために欠かせない蓄電池の存在です。
スマートハウスにおいて重要な要素である創電(電気を創る)を担う太陽光発電は、天候によって発電量が左右されるためコントロールするのが難しいという弱点があります。出力(発電)量が増えて電力が余ってしまう時には、出力を抑える「出力制御」を行う必要が出てきます。そんなとき、大容量蓄電池で余った電気を蓄電できれば、せっかく発電した電気を無駄にすることがありません。再エネの不安定性という問題を解決し、スマートハウス普及を後押しする機器として期待されているのが蓄電池なのです。
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