系統用蓄電池での安全面や各種補助金について|系統用蓄電池ビジネス参入セミナーアーカイブ
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2025年03月18日
一般社団法人エネルギー情報センター

2025年2月26日開催のオンラインセミナー「系統用蓄電池ビジネス参入セミナー」にて、電気予報士の伊藤 菜々 氏が講演した「系統用蓄電池での安全面や各種補助金」について、その要約をご紹介します。
私の方から、系統用蓄電池の補助金や保守・メンテナンス、そして接続検討についてご説明します。まず、蓄電池を導入しようと考えた際に、さまざまな届け出が必要になりますが、どのような手続きがあるのか、またどれくらい時間がかかるのかについてご説明します。概要も含めてお伝えしますが、大きく3つのポイントに分けてご説明します。
1つ目は、系統用蓄電池の接続方法についてです。まず蓄電池を設置しようと考えた際に、土地を選定し、そこに系統接続が可能かどうかを検討する必要があります。その流れについてご説明します。
2つ目は、系統用蓄電池の補助金についてです。今後も多くの補助金が提供されると考えられますが、現時点でどのような補助金があるのか、その概要についてご説明します。
3つ目は、蓄電池の保守・メンテナンスについてです。蓄電池は発電事業に位置づけられるため、保守・保安が必要となります。しかし最近では、保守・メンテナンスの人材不足が課題となっており、要件を十分に理解していないと高額な費用が発生する可能性があります。
系統用蓄電池の接続方法
まず、系統用蓄電池の接続方法について見ていきます。「系統用」ということは、必ず電力系統に接続される必要があります。電力市場での取引を行うためには、系統との接続が前提となります。
2023年4月以降は、ノンファーム型接続が前提となっています。これは、太陽光発電でも導入されていた方式で、100%の電力を系統に流せるわけではなく、系統が混雑している時間帯には電気を流すことが制限される仕組みです。ただし、9割以上の時間は電力の出力が可能となるため、一部制約があるものの、基本的には運用可能な接続方式といえます。
接続を希望する場合、一般送配電事業者に申し込みを行い、各種検討が行われます。接続費用や工事費用、工期などの見積もりが提示され、その後、実際の工事が進められる流れとなります。
接続手続きの流れ
1. 事前相談(任意)
事前相談では、簡易的な回答を受けることができます。系統接続の可能性を事前に確認し、大まかな見積もりや接続の可否を把握するために有用です。
2. 接続検討申込み
事前相談の結果をもとに、実際に接続を希望する場合は、接続検討申込みを行います。この際、各エリアの一般送配電事業者に対して「接続検討申込み」を提出し、検討料を支払います。申込み後、事業者が調査を行い、接続にかかる費用や工期の概算を提示します。検討結果は原則3か月以内に通知されます。
3. 保証金の支払い
接続を進める場合、保証金の支払いが必要になります。この保証金は、工事費に充当されるため、最終的には無駄にならないお金となります。ただし、接続を取りやめた場合、以下の条件に該当する場合には保証金の返還が可能となります。
o工事費負担金の増額
接続検討の回答時点では5,000万円と見積もられていたものが、6,000万円や7,000万円に増額してしまった場合など、想定より大幅に費用が増えた場合。
o工期の大幅な延長
予定されていた工期よりも著しく長引いてしまい、計画に支障が出る場合。
o一般送配電事業者の都合による契約解除
事業者の判断で工事を進められない場合。
これらのケースでは保証金が返還されるため、工期の遅延や費用の増額が発生した場合に撤退を選択することも可能です。
4. 技術検討(原則6か月)
保証金を支払うと技術検討が開始され、より詳細な調査が行われます。この結果を踏まえて、接続工事にかかる期間や費用が確定し、一般送配電事業者から回答が通知されます。
5. 工事費負担金契約の締結と支払い
接続を進める場合、契約締結後1か月以内に工事費負担金を支払います。この費用は数千万円から億単位に及ぶこともあるため、事前の資金計画が重要です。
6. 工事の実施と接続完了
工事が完了し、系統と連携が確立されると、初めて蓄電池を利用した電力市場での充放電が可能となります。
接続検討の有効期限と注意点
接続検討の回答には回答があった日から1年間の有効期限があります。この期間内に契約申し込みを行わない場合、再度接続検討を申請する必要があり、再び検討料を支払うことになります。そのため、迅速な判断と対応が求められます。
系統用蓄電池の接続には、事前相談・接続検討・保証金の支払い・技術検討・工事費負担金契約・工事実施という流れがあり、各ステップで費用が発生します。特に、接続検討の回答があった日から有効期限(1年)や、保証金の返還条件には注意が必要です。
接続を検討する際には、事前に資金計画を立て、迅速に手続きを進めることが重要です。
系統用蓄電池の補助金
次に、系統用蓄電池の補助金についてお話しします。これは昨年以前の情報になりますが、どのような補助金があったのかについてお話ししたいと思います。
国や東京都では、それぞれ独自に系統用蓄電池の補助金制度を実施しています。国で提供されている補助金についてですが、対象となるのは系統用蓄電池のほかに、電力貯蔵システムとして水素燃料電池や水電解装置なども含まれています。これらの補助金が適用される可能性があるということになります。
また、GX経済移行債を活用し、総額400億円規模の事業を進める予定となっています。この事業は2021年度から開始されており、これまでに国による支援で27件の系統用蓄電池が採択されました。
補助金の基本的な要件としては、電力系統に貢献する形で適切に充放電を行うことが求められます。系統の安定化を目的としているため、電力が逼迫した際には放電を行い、逆に再生可能エネルギーが余剰となっている場合には、その有効活用や普及拡大に貢献するような運用をすることが求められます。
要件は大きく2つあります。
1.系統用であること
つまり、蓄電池が電力系統に直接接続されていることが求められます。
2.電力市場での取引への貢献
各種電力市場での取引を通じて、電力バランスの調整に寄与することが求められます。例えば、電力系統内で余剰電力が発生する際には充電を行い、電力不足時には放電を行うなど、系統の安定化に資する運用が求められます。
このように、補助金にはいくつかの要件があり、蓄電池の規模などによって補助率が異なってくる仕組みとなっています。
蓄電池の保守メンテナンス
蓄電池の保守・保安のメンテナンスについてお話ししたいと思います。今後ますます増えてくる分野だと思いますが、どのような分類になるのか、またどのようなメンテナンスが必要なのかが重要なポイントになります。
電気事業法では、需要設備や発電所、蓄電池について「保守・保安を行うこと」と位置づけています。特に、大型の蓄電池から放電する事業は、発電事業として扱われます。
受給逼迫時に供給力を活用できるように、逼迫時間帯に放電することが増えると考えられるため、発電事業としての位置付けがなされているのです。
蓄電池の発電事業としての位置付けは、2050年のカーボンニュートラルやエネルギー供給構造の転換を後押しするものです。火力発電の減少に伴い、調整力も低下しますが、再生可能エネルギーの普及拡大を支える役割を担っています。そのため、発電事業として蓄電池の保守・メンテナンスを行う必要があります。
蓄電所の定義として、蓄電池を単独で設置することが挙げられます。需要と併設されたタイプではなく、単独で系統に接続されるものです。接続する電力系統と使用電圧・周波数を変えずに充放電できる仕組みとなっています。高圧系統に接続する場合は、高電圧のまま周波数を変えずに充放電することが求められます。従来は、蓄電池は付属設備という位置付けでしたが、蓄電所としては単独設置が基本となる点がポイントです。
蓄電所の規制については、太陽電池発電設備と同様の考え方が適用されます。蓄電池は直流を交流に変換する設備を備えており、回転系がないため摩耗が少なく、故障リスクも比較的低いとされています。また、蓄電池は筐体に収められているため、周囲環境の影響を受けにくい点も特徴です。そのため、点検方法としては太陽光発電と同様に外観点検が主体となります。
太陽光発電と同じ規制を適用する際、小規模事業(50kW以下)の電気工作物に対する規制が厳しくなっています。例えば、使用前の自主検査や工事計画の届出などが求められます。しかし、系統用蓄電池は50kW未満のものはほとんどないため、従来通り電気主任技術者を選任し、技術基準に適合していることを確認した上で運用すれば問題ありません。
電気主任技術者については、外部委託と専任の2つの方法があります。専任の場合は1人が6施設まで兼任できますが、外部委託が主流になると考えられます。太陽光発電では1人の担当件数を増やすことが可能であり、蓄電所でも同様に扱われるため、多くの案件を担当することができます。ただし、外部委託の場合は資格と実務経験が必要なため、人材確保が課題となります。そのため、社内で電気主任技術者を確保し、統括・兼任という形で運用する方法もあります。統括・兼任を活用することで、近隣の太陽光発電所や蓄電所を効率的に管理することが可能になります。
技術基準に関しては、基本的に太陽光発電に準じた保守・保安を行えば問題ありません。ただし、蓄電所は単独で設置されるため、蓄電池自体の事故が蓄電所全体の事故と同じ意味を持つことになります。そのため、発電所と同様の基準で、遠隔監視や常時監視を行うことが求められます。また、取り扱い者以外の立ち入りを制限することや、送配電事業者への影響を防ぐ措置を講じる必要があります。
以上、系統用蓄電池の接続検討方法、補助金、保守・保安について説明しました。近年、インフラ関連の事故も増えているため、適切な費用計画を立て、人材確保をしっかり行うことが重要です。ありがとうございました。
「系統用蓄電池での安全面や各種補助金について」講演アーカイブ
系統用蓄電池ビジネス参入セミナーその他の講演について
・系統用蓄電池ビジネスの最前線
株式会社AnPrenergy 代表取締役 村谷 敬 氏
・系統用蓄電池のアグリゲーションについて
デジタルグリッド株式会社 代表取締役 豊田 祐介 氏
・系統用蓄電池の導入事例について
株式会社パワーエックス 執行役 電力事業領域管掌 小嶋 祐輔 氏
・系統用蓄電池での安全面や各種補助金について
電気予報士 伊藤 菜々 氏
運営事務局 おすすめの系統用蓄電池ビジネス教材
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