スマホでサンマが焼ける日ーコラムー第19回 電力・エネルギーから考える「これからの世界」

2021年09月06日

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

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エネルギーコストゼロの世界の実現で本当にやりたい仕事、自分の資質を活かす仕事に挑戦できたり、エネルギーシェアで、新しい価値に対して人々がお金を払う時代になったりと、豊かな世界に向かっていると信じています。

執筆者:一般社団法人エネルギー情報センター
    理事 江田健二

富山県砺波市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア株式会社)に入社。エネルギー/化学産業本部に所属し、電力会社・大手化学メーカ等のプロジェクトに参画。その後、RAUL株式会社を起業。主に環境・エネルギー分野のビジネス推進や企業の社会貢献活動支援を実施。一般社団法人エネルギー情報センター理事、一般社団法人CSRコミュニケーション協会理事、環境省 地域再省蓄エネサービスイノベーション委員会委員等を歴任。

記事出典:書籍『スマホでサンマが焼ける日 電気とエネルギーをシェアする未来の「新発想論」』(2017年)

エネルギーコストゼロの時代をどう生きるのか

今までは、生活に必要な電気は電力会社が作ってくれて消費者は使うだけ、というある意味、電力会社にほぼ頼りきりの時代でした。しかしこれからは各々が発電することによって自分で自分の生活を維持し、またお互いに支え合うという時代になると思います。エネルギーに支配されるのはいやだ、といって使うことを全面的に止める、という極端な発想ではなく、もっと柔軟な発想を持って積極的にエネルギー循環に参加していくべき時代です。

今まで自分は国や電力会社に頼りきっていたということをまず認識し、これからはエネルギーとともに在る自分たちの生活、生き方を変えていこう、という意識が大切なのではないでしょうか。

また、以前のコラムに述べたようにエネルギーコストが下がっていき、最終的にエネルギーコストゼロの世界が実現したら、将来お金を稼ぐためだけに働く必要はなくなるかもしれません。エネルギーコストが下がり、すべての製品製造コストも下がり、世の中が次第にコストゼロに近づいていき、かつ最近何かと話題になっているベーシックインカム(国による最低生活保障)が確保されれば、多少の生活費は労働によって確保しなければならないと思いますが、今のようにすべてが生活のため、という働き方が必要なくなる可能性があるからです。

そうなった時、人は生活のためという理由だけでなく、本当にやりたい仕事、自分の資質を活かす仕事に挑戦できるようになります。これは夢のような話ですが、可能性はゼロではありません。むろん誰でも好きな仕事をして暮らしていけるわけではないでしょうが、少なくとも今までよりは多くの人が、好きな仕事を選択し、挑戦できるようになるはずです。

一方、AI(人工知能)の進化、テクノロジーの発達によって、20年後には今人間がやっている仕事の約50%は自動化される、つまり約半分の仕事がなくなるという予測もされています。エネルギーコストがゼロに近づき、お金(生活)のために働かなくてもいい、しかも仕事はAIなど機械が自分たちに代わってやってくれる。その時私たちはどう働き、どう生きていけばいいのか。それがこれからの時代を生きて行く私たち全員に与えられた最も重要な課題だと思います。

エネルギーシェア時代の新しい価値~あとがきにかえて~

私は、本編で述べてきた20年後、30年後の「エネルギーシェアの時代」には、今の社会にはない何か新しい価値が生み出され、その新しい価値に対して人々がお金を払う時代になると思っています。その新しい価値とは、たとえば「雰囲気」というものです。

今でもスターバックスなどのカフェや「蔦屋家電」などに代表される、お店の雰囲気(またはライフスタイル)を新しい価値として売る、というコンセプトが増えています。アパレルブランドが服だけでなくそのブランドにあった生活雑貨やインテリア用品を扱うことで、ブランドの雰囲気を衣食住の丸ごと販売することも、今では珍しくありません。

また、海外の高級リゾートなどは、「何もないシンプルさ」を価値として売り出すことがトレンドとなっているようです。こうした価値観の変化の兆しが少しずつ見えています。おそらく私たちは、これからそうした新しい価値を生み出し、そこから、機械にはできない新しい仕事を生み出していくのだと思います。

本編で述べたように、すでに電力業界、エネルギー業界はIoTなど最先端テクノロジーとの連動により、「情報産業」を中心に新たなビジネスワールドを生み出しつつあります。その世界が、他の産業分野と縦横無尽につながり、新たなビジネスを生み出しアメーバのように広がっていく。そんなイメージです。そんな社会でどんな仕事を生み出し、どういったワークスタイル、ライフスタイルを築いていけばいいのか。このコラムが、まだボンヤリとしか見えていない近未来社会における生き方、働き方を考える上での何かしらのヒントになればよいのではと思っています。

電力・エネルギー分野の話は、これまではどちらかというといわゆる理系分野の話であり、専門的な分野と捉えられてきました。特に、いわゆる自称「文系」の人にとっては関わりの少ない、どちらかというと「食わず嫌い」の分野であったと思います。このコラムは、電気、エネルギー分野の専門的なトピックをベースにしながらも、極力、専門的な知識の解説は省きながら、そうした方々にも電力・エネルギーというテーマを切り口に「これからの世界」「これからの自分」を考えてもらえるように書いてみました。中にはやや飛躍し過ぎたアイデアも多々あるかと思いますが、そのあたりはあくまでも私個人の発想に基づく独自の見解ですので、それをヒントにみなさんはみなさんなりのユニークな未来像を描いてみてはいかがでしょうか。

今から20年後、30年後には果たしてどんな未来社会が待っているのか、誰も明確には分かりません。けれども、人類にとって最も重要な課題の一つであるエネルギーに関する無限の課題、それらを人間の知恵と叡智を駆使して賢く解決していけば、きっと豊かで誰もが幸せに暮らせる世界が実現すると、私は信じています。

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