電気予報士なな子のおでんき予報

2024年2月26日
エネルギーフォーラム

伊藤菜々

電気予報士なな子のおでんき予報の写真

いま話題の電力系ユーチューバー、伊藤菜々の初めての書き下ろし! 「電力システム」「電気料金」「カーボンニュートラル」のこともこの一冊でよくわかる!

著者情報

電力系ユーチューバー(電気予報士)

伊藤菜々氏

1989年埼玉県生まれ。私立浦和明の星女子高校、上智大学経済学部経営学科卒業。大学在学中にミスコンテストに出場し、ファイナリストに選出される。また、タレント活動やバックパッカーとして世界各地を旅行する。大学卒業後は、トレーディングファームに入社し、先物取引のアルゴリズムトレードを行う。FIT制度が始まった際に再エネファンドに入社し、電力全面自由化に伴い新電力の立ち上げに関わったあと2019年から独立。現在のスタジオガルを開業。電気事業の立ち上げ・運営支援、企業PRや商品広報、ZEH住宅、マイクログリッドなどの地域カーボンニュートラル活動を行う。実績として電力会社などの企業での講演、学校での出前授業、展示会・イベントの出演を行う。電力業界を楽しく! わかりやすく! 解説した Youtube チャンネル「電気予報士なな子のおでんき予報」を2020年4月に開設して情報発信中。第二種電気工事士、電験三種を取得。電気主任技術者として独立するための修行をしながら電験二種の合格に向けて勉強中。

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解説

筆者は、いつもユーチューブなどのSNSで情報発信をしていますが、書籍というものは、また違った層の方にお届けできると考えたのが執筆のきっかけです。電気代が値上がりしている中、今のままでは今後も値上がりが予想され、日本の全ての方に「電気」に興味を持ってほしいという気持ちがありました。
筆者がエネルギー業界に関わるようになり、約10年が経とうとしています。当時から今に至るまでに業界の制度やプレーヤー、流行りやビジネスモデルも大きく変化しました。また、電気のコンサルティング事業を軸に独立してから5年目となりますが、会社員であるという後ろ盾がなく、エネルギー業界の中で舵を取って進んでいくには、幅広い知識や実践力が必要だということを身をもって体感しました。
電気を含むエネルギーは、産業や交通、生活まで、人間が生きていくという基本的なことからも必要不可欠なものです。全ての方に関わり、ビジネスをする上でも切っても切り離せませんが、なんとなく難しそうとか制度が複雑そうというハードルの高さがあります。
しかし、そんなこともいっていられません。海外からの化石燃料の輸入が滞ったり、輸入価格が上がることや、カーボンニュートラルの加速、電力系統などインフラの拡充、電力システム改革等のあらゆる要素が絡み合って、電気代を含めたエネルギー価格は上昇しており、潤沢な電力供給が行われないことでリニアモーターカーの建設や経済活動も滞りをみせています。円安が進む中で、日本の相対的価値は世界でも低くなっており、このままでは日本が先進国から取り残されていくことも時間の問題でしょう。
もう一度、日本を世界と戦えるような成長をさせ、元気にするには、動力の源であるエネルギーが潤沢であり、安定的に供給されることが必須です。
エネルギーのことを知りたい! ビジネスで有効活用したい! けれども難しそう、どこから始めてよいかわからないという方のために、日本一わかりやすく簡潔に電気の今と未来を解説してみました。また、全く興味のない方も手に取りやすい書影にしています。
今回の執筆を経て文章に残すことで、改めて自分の現在段階での考えを整理できたり、5年後、10年後の電気予報をすることができました。今までの活動の一区切りとなるとともに、日本のエネルギーを安価に安定的に供給するため、自分自身の決意を改めて確認する機会となりました。これからの伊藤菜々の活動にもコメントやご意見いただきながら、注目していただけるとありがたい限りです。

本書の内容

  1. はじめに――なぜ伊藤菜々が「電気」に興味を持っているか?
  2. 第1章 電気はどうやって供給されるの?
  3. 発電、送配電、小売りの関係
    キロワットとキロワット時の違い
    発電の種類と役割
    原子力発電
    火力発電
    水力発電
    自然エネルギー発電
    ☆コラム 福島第一原子力発電所の状況とALPS処理水について
    電気が送られる仕組み
    電気の調達方法
    FIT電源の組み入れ
    ☆コラム 再エネ賦課金
    非FIT電源
    オフサイトPPA
    自己託送
    環境価値
    電力先物
    電力先物の活用方法
    立会外取引
    ☆コラム TOCOMとしてのカーボンニュートラル
    容量市場
    需給調整市場
    長期脱炭素電源オークション

  4. 第2章 なぜ今、電気代が高いの?
  5. 燃料費
    託送費
    レベニューキャップ制度
    発電側課金
    その他経費
    2024年度の電気代はどうなる?
    ☆コラム 電源卸しの内外無差別

  6. 第3章 電気のお仕事紹介
  7. 電気主任技術者
    電気工事士
    ラインマン
    ☆コラム 伊藤菜々の合格体験記

  8. 第4章 GX、カーボンニュートラルを知ろう
  9. GX実現に向けた基本方針
    企業、家庭の電力使用量
    季節ごとの需要量と節電対策
    省エネ家電は空調から
    ZEHやスマートハウス
    日本の住宅性能の現状とこれから
    HEMS
    脱炭素先行地域
    マイクログリッド
    系統線利用の来間島マイクログリッド
    自営線活用の小城市
    太陽光発電の異常
    先端技術のドローン点検
    電力保安のサイバーセキュリティ
    ☆コラム 配電ライセンス
    系統用蓄電池
    ☆コラム テスラとEV
    水素
    アンモニア
    次世代革新炉
    革新軽水炉
    小型モジュール炉
    高温ガス炉
    高速炉
    核融合炉
    地層処分

  10. 第5章 将来のおでんき予報
  11. 2030年のおでんき予報
    2050年のおでんき予報
    ☆コラム サウジアラビア訪問

  12. おわりに

本書への想い等

ここのところよく聞くようになった「カーボンニュートラル(脱炭素)」というキーワードは、日本にとっては一石二鳥の意味合いがあると思っています。世界的には、温室効果ガスを排出する石油、石炭、液化天然ガス(LNG)といった化石燃料が採れるけれども、地球温暖化対策のために使わないようにしようといった意味合いです。しかし、日本にとっては、それに加えて、必然的にエネルギー自給率を上げることにつながり、より大きな問題が解決するわけです。
本書のテーマである「電気代」と「カーボンニュートラル」―。この2つのワードは、ただ流行りのワードで表面的なビジネスのネタになっているだけではありません。一枚ずつ皮をはがしていくと、エネルギーを軸とした日本や世界の仕組みがわかってきます。本書で聞き慣れないワードなどがあるかと思います。それらは、「電気代」と「カーボンニュートラル」というところに何かしらの影響をもたらしており、他のワードとも関連しています。電気は、どこにでもあり、都心部だけでなく離島や人の少ない山間部にもあります。電気は、生活にも企業活動にも欠かせないものであり、電気を知ることで他の分野のビジネスアイデアに活かされることもあるでしょう。さらに、カーボンニュートラルという言葉は、世界的に2050年までのカーボンニュートラル達成に向けた一丁目一番地のキーワードです。仕事の中でも温室効果ガスの排出状況を求められたり、対策をしながらビジネスをしなければならない環境も始まっています。それらを真剣に考えることは、私たちの今後、数十年の生活を豊かにしたり、ビジネスチャンスにもつながります。これから知っておくべきこと、専門的なことをできるだけわかりやすく説明しています。興味のある分野の理解を深めたり、周辺環境を知るためにも、ぜひ「電気代」と「カーボンニュートラル」というテーマを念頭に考えていただけたら幸いです。
そして、本書を執筆して改めて気づかされたのは、電力の安定供給を守り、日本の未来をより良いものにしようと活動してくださっている皆さんは、とても「尊い」ということです。電気を扱うということは感電する危険性がありますし、災害や事故にも対応しないといけませんし、現場の方々は常に命と隣り合わせです。そのようななかで、この業務に就いてくださっている、そして、日本のエネルギーの安定供給にやりがいと誇りを感じておられていることに、本書を通じて読者の皆さんにも知っていただきたい気持ちでいっぱいです。