ワイヤレス化など、進化するEV充電器。国内外のビジネス事例は?最新動向②

2023年09月27日

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

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これまで遅れをとっていると指摘されてきたEV充電インフラですが、2030年までの充電インフラ15万基設置目標を政府が掲げ、民間での動きが活発になっています。国内外のビジネス事例の最新動向をご紹介します。

EV市場の拡大、インフラ整備にも広がりを見せる

EV市場が世界で伸長しており、日本でも2035年までに「乗用車新車販売における電動車の比率を100%」とする目標と、2030年までに「公共用の急速充電器3万基を含む充電インフラを15万基設置」という目標を掲げられています。

前回は、EV充電器の利用事例や海外動向をご紹介しました(ご参考:https://pps-net.org/column/109375))。政府は補助金などで後押しをし、民間企業と一体となり、需要を喚起しています。

パワーエックス、全国7000カ所のチャージステーション設置へ

電気運搬船の開発や、蓄電池事業を進めるパワーエックス社は、EV急速充電網の整備に着手しています。

同社は、2030年までに全国7000カ所へのチャージステーション設置を目標に掲げ、大手提携先とも連携しています。設置場所は、空港、都内オフィスビルや商業施設などが候補にあがっている。フォルクスワーゲングループジャパンのアウディ系列のディーラーにも設置していく。特徴は、併設する蓄電池から電気を供給することです。太陽光などの自然エネルギーの発電量が多い昼間に蓄電池に充電し、そこからEVに充電することで、再生可能エネルギーを最大限活用できます。

7月には同社がすでに発表している蓄電池型超急速EV充電器「Hypercharger」が日本発の急速充電規格であるCHAdeMO(チャデモ)の最新プロトコル「2.0.1」の認証を取得したことを発表。これで、最大出力240kWに対応可能になったことになります。

9月19日には、京都のタクシー会社であるエムケイと、EV向けの超急速充電ソリューションで提携を開始すると発表。2024年1月をめどに、同社の蓄電池型急速EV充電器「Hypercharger」を、エムケイ社の山科営業所内にEVタクシー・ハイヤー専用の充電ステーションとして納入するということです。

出典:パワーエックス

課題を解決するワイヤレス充電の可能性

WiTricityのワイヤレス充電システム

WiTricityは、マサチューセッツ工科大学(MIT)でEVのワイヤレス充電技術を開発していた研究室のメンバーがスピンアウトし、2007年に設立した先端技術企業です。ワイヤレスなので、EVと充電機器とをコードでつなぐ必要がなく、EVを送電パッドの上に停車させ、スイッチを切るだけで、自動で給電が開始されます。

同社のワイヤレス充電システム「WiTricity Halo™」は「磁界共鳴方式」を採用し、地上に設置された送電パッドと、EVに取り付けられた受電パッドとの間で、磁界を共鳴させることで電力を供給します。これにより、高効率な電力転送を実現します。

車両側レシーバーは、PHEV、BEV等にも適用し、既存のEVへの後付けも車種によっては可能です。また、V2H(Vehicle to Home)やV2G(Vehicle to Grid)の技術を用いて、常にEVをワイヤレスで繋げておくことで可能にする、非常電源としての活用も可能です。

エネルギーテック企業のENECHANGE社は8月23日、WiTricityと協業し、EV向けワイヤレス充電の実証実験を行うと発表しました。また、エネルギー事業などを展開するシナネンホールディングスは、WiTricityの日本展開における事業パートナーとして、6月に基本合意を締結しています。

出典:シナネンホールディングス

大日本印刷などがワイヤレス充電機能を搭載した商用EVで実証

ワイヤレス化の技術は商用EVでも実証実験が行われています。大日本印刷・双日・ダイヘンワイヤレス充電機能を搭載した商用EVで国内初の登録認可を取得し、公道実証を開始しました。

脱炭素社会の実現に取り組む企業でのEV運用が増加しています。ワイヤレス化により、充電作業の負荷軽減と利便性の向上が期待されています。例えば、充電ケーブルに起因するトラブルやメンテナンス費用、充電スペースの削減等が見込まれます。また自動駐車技術との親和性も高く、ドライバーを充電作業から解放する完全自動充電が可能となります。

出典:大日本印刷

EV用ロボット充電器で駐車場のどのスペースでも充電可能

EV車のドライバーからすると、駐車場内のEV充電スポットには、現時点では数に限りがあります。ガソリン車のドライバーからすると、EV充電スポットが空いていたとしてもその場所には駐車しづらく、不満を感じることもあります。EVSafe Chargeの「ZiGGY」はこのような双方の不満解消を目指したEV用ロボット充電器です。

EVドライバーが同サービスを利用するには、専用スマートフォンアプリを使って「ZiGGY」が運用されている駐車場を予約します。すると「ZiGGY」は駐車場内で空いたスペースを探し出して待機しながら、その場所をアプリ経由でEVドライバーに知らせます。EVドライバーは予約した駐車場に到着したら指定のスペースに車を駐車し、EVの充電を開始します。「ZiGGY」は利用者が駐車場に戻ってくるまで、もしくは満充電になるまで充電を続けます。ご参考:https://youtu.be/lvyQwPzUNp0?si=t68amuZY8XaisT9_

出典:EVSafe Charge

このEV用ロボットはカメラやセンサーによる自動運転技術と大容量バッテリーによって、スムーズな充電を実現しています。駐車場運営者としては、普段は比較的空いている駐車場で、イベントのある日など混雑が予想される日だけに「ZiGGY」をレンタルで導入する、といった運用が考えられるということです。

まとめ

今回は、EV充電インフラの進化における最新動向に関するビジネス事例をまとめました。
これらの事例から、EV充電インフラの進化は多様なアプローチで進んでおり、ワイヤレス充電技術や蓄電池の活用などが今後の発展に大きく寄与することが予測されます。

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