人の健康をサポートする電気利用データ

2020年09月09日

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

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これからはスマートメーターや家電のスマート、やスマートハウスによって我々の生活が大きく変わるだけでなく、それらテクノロジーの進化によって様々なビジネスやサービスが生まれるはずです。その核となるのが、ビッグデータの活用です。

執筆者:一般社団法人エネルギー情報センター
    理事 江田健二

富山県砺波市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア株式会社)に入社。エネルギー/化学産業本部に所属し、電力会社・大手化学メーカ等のプロジェクトに参画。その後、RAUL株式会社を起業。主に環境・エネルギー分野のビジネス推進や企業の社会貢献活動支援を実施。一般社団法人エネルギー情報センター理事、一般社団法人CSRコミュニケーション協会理事、環境省 地域再省蓄エネサービスイノベーション委員会委員等を歴任。

記事出典:書籍『スマホでサンマが焼ける日 電気とエネルギーをシェアする未来の「新発想論」』(2017年)

スマートメーターで生活スタイルが「見える化」する

スマートメーターの画期的な特徴は、非常に細かい網目のような電気利用データが取得できることだけでなく、ゆくゆくは家の中にある家電ごと、電気製品ごとの電気利用量が分かるようになるということです。例えば、いつ洗濯機を利用したか、部屋の照明がついているかどうかなどもわかります。もちろん家電側にもスマートメーターやインターネットに対応する機能が搭載されている必要がありますが、これからますますスマートメーターなどへの対応型の家電が出てくるはずです。

そうなると、今月の電気代のうち、どの家電で一番多く電気を使ったのか、どの家電が電気を使っていないのかが詳しく分かるようになり、「今月は先月に比べて、エアコンの電気を使いすぎだから来月は少し使用を控えよう」など、節電対策にも役立ちます。

私の知り合いで「子供と、テレビは1日1時間までと決めているのに、子供を一人で留守番させているとき、どうやらテレビばかり見ているようで困っている」という方がいるのですが、今後は「今日1日で何時間何分テレビがつけられていたか」まで分かってしまいますので、子供が「テレビは全然見てないよ」とウソをついてもすぐに分かります。スマートメーターの通信機能を利用して、1時間たったら自動的にテレビの電源をオフにして見られないようにする、といったこともできるようになるでしょう。

また、これは後述するIoTの話とも連動してきますが、子供がテレビをつけたらその瞬間に親のスマートフォンに「今テレビがつきました」と通知される、といったことも可能になるでしょうし、「今リビングの電気だけついています」とか「冷蔵庫が開きました」「玄関が開きました」など、どの家電や機器がどのタイミングで使われたかという、いわゆる「ライフログ」(人の生活や行動の記録)が全部分かるようになるので、子供や高齢者の見守りサービスや防犯にも大いに役立つと思います。

スマートメーター、スマート家電、HEMS(Home Energy Management System/家庭で使うエネルギーを節約するための管理システム)、IoTの連動によって、人が家の中でどう行動しているのかが分かるようになり、さらには健康状態まで分かるようになります。一人暮らしの高齢者であれば、毎日の生活状況や健康状態の情報が、遠くにいる家族やお医者さんに通知される、といったシステムは確実にできるでしょう。

あなたが毎日何回トイレを使っているか、炊飯ジャーを何回使っているか、冷蔵庫を何時頃、何回開け閉めしているか、などなど、その人の電力使用状況=生活パターン、生活スタイルがすべて「見える化」するようになるのです。

電気利用データ活用で得する人たち

今インターネットであれば、誰がどんな端末からどのページをいつ、何分何秒見たか、などが細かく分かります。そこから、この人はこういう行動をしている、こんな趣味嗜好を持っている、といった属性が分かってきます。同じように電気利用情報データがデジタル化されると、それによってその人の嗜好性や生活パターンが全部数値化されます。そのデータを分析することで、たとえば医療や健康関連サービスなど様々な分野に活用できます。電気利用のデータで、いままで分からなかった様々なことが数値化できる世の中、すなわち「人やものの動きが手に取るように分かる世界」がやってくるということです。

これからはスマートメーターに加え、家電のスマート化や家のスマート化(スマートハウス)によって、我々の生活が大きく変わるだけでなく、それらテクノロジーの進化によって様々なビジネスやサービスが生まれるはずです。その核となるのが、電気利用、家電やその他の電子機器の利用状況から得られる様々なデータ(ビッグデータ)の活用「データ活用ビジネス」です。

たとえば、BMWを売っている会社がより効果的なマーケティングを行おうとした場合、その会社がすでに長年BMWに乗っている多くのロイヤルカスタマー(特定の商品・サービスに忠誠心の高い顧客)の生活家電データを持っていたとしたら、BMWは同じような電気利用パターンの人たちのデータを集めて、その人たちに的を絞ってDMを打つ、といったことが可能になります。こうした顧客のセグメンテーション(分類)は非常に役に立ちます。今までならBMWのDMを送るときに、たとえば何々区に住んでいて家族が何人で世帯収入が〇〇以上、と絞っていたのだと思いますが、生活パターンが近い人を抽出しようと思えば、一瞬でそのビッグデータから抽出できる、絞りだせるということです。

また、保険会社がお客さんの保険プランを提案するとき、今だとその人が癌や病気に罹りやすい確率をアンケートからチェックしていると思います。しかし、電気利用データがあれば、それをもとに、個人個人に合ったもっと緻密な保険プランを作ってあげることもできます。「あなたの生活データ1カ月分を送れば今の生命保険がもっと安くなりますよ」といったサービスも出てくるかもしれません。

さらに電気利用データだけではなく、加えて他の趣味嗜好に関するデータ、たとえば購買データとマッチングさせていけば、さらにビッグデータとしての有益性が高まっていくはずです。もし、ある人の電気利用データと、その人が1カ月の間に何をどれだけ買ったか、という購買データを掛け合わせることができれば、かなりの精度でその人の生活パターン、ライフスタイルが浮き彫りにされるはずです。

当然のことながら、電力会社にとっても電気利用データは有効活用できます。今後、どのような規模の発電所をどこに作ればいいかという投資の指標にもなるでしょうし、細かい需要予測もできる。家電メーカーからすると家電の使われ方が細かく分かれば新しい家電開発のアイデアになってくるでしょうし、様々な分野で様々なデータの使われ方が考えられます。

このように、私たちの生活に関する細かいデータが取得され利用されることに対して「個人情報が悪用されはしないか」「情報流出や漏洩によって被害に遭うのではないか」と不安を持つ人も多いでしょう。当然のことながら、こうした情報を適切なルールに則って利用し、市民生活の安全を維持するシステムが構築されることは必須と言えるでしょう。

人の健康をサポートする電気利用データ

電気利用を通して取得されるビッグデータは、医療や健康の分野でも大いに役立つはずです。たとえば、ある同じ病気になった人が100人いたとして、その人たちの電気利用データから生活パターンデータを取得することによって、こういう生活パターンの人たちはこんな病気になりやすい、ということが分かり、そういう生活パターンの人たちに「このままだとこういう病気になりやすいですよ」と先にアラート(警告、警報)を出したり、トイレ使用のデータから、将来どんな病気にかかる可能性があるかが分かるようになるでしょう。こういう生活をしている人は鬱になりやすい、ということも分かり、事前に鬱にならないような予防ができるなど、いろいろな活用ができるはずです。

1カ月間の生活習慣のデータを取って、それをもとにダイエットの仕方をアドバイスしてあげるサービスなども出てくるかもしれません。今までは、その人の生活パターン、生活習慣を知る方法は「聞き取り」しかありませんでした。「ちゃんと夜寝ていますか?」と聞かれて、本当は寝ていなくても本人が「はい」と答えれば寝ていることになってしまう。しかしこれからは電気利用データを見れば一目瞭然です。本当の、リアルな生活スタイルのデータを取るのに一番いい方法が電力使用状況のデータを見ることなのです。

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