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蓄電池×スマートデバイス 第2回

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スマートフォン市場の進化と普及を支える「蓄電池」と「スマートデバイス」について全3回に渡ってお伝えします。

執筆者:一般社団法人エネルギー情報センター
理事 江田健二

富山県砺波市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア株式会社)に入社。エネルギー/化学産業本部に所属し、電力会社・大手化学メーカ等のプロジェクトに参画。その後、RAUL株式会社を起業。主に環境・エネルギー分野のビジネス推進や企業の社会貢献活動支援を実施。一般社団法人エネルギー情報センター理事、一般社団法人CSRコミュニケーション協会理事、環境省 地域再省蓄エネサービスイノベーション委員会委員等を歴任。

記事出典:書籍『2時間でわかる 蓄電池ビジネスの未来: ウィズコロナ時代に拡大する20兆円市場に注目せよ!』(2020年)

スマートデバイスと「ワイヤレス充電」

ここで、蓄電池技術の進歩とともに、これからのスマートデバイス市場において注目しておきたい次世代技術があります。それは、ここまでの話に何度か出てきたワイヤレス充電です。
今後外で使用するスマートデバイスが増えれば増えるほど、自宅で充電したりモバイルバッテリーを持ち歩くことに不便を感じるようになるはずです。ワイヤレス充電が普及することにより、おそらく2020年代後半には外出中に街中の充電スポットから無線で充電できるようになるでしょう。

皆さんも、外にいるときスマートフォンやパソコン、タブレット端末のバッテリーが切れそうになってイライラした経験があると思います。いつでもどこでもスマートフォンやパソコンに充電できる「ワイヤレス充電スポット」が増えれば、外にいるとき、いちいち充電できるコンセントのある場所を探す必要もなくなり、重たいアダプタ付きの電源コードを持ち歩く必要もなくなります。
また、近年リモートワークなど働き方が多様化する中で、固定のオフィスなどの場所にとらわれることなくカフェなどでノートPCに向かって仕事をする「デジタルノマド」と呼ばれる人々が増えています。イギリスのクーポンサイト「BargainFox」による、デジタルノマドやリモートワークの現状に関するレポートによると、2035年までに世界の人口の14%が、何かしらの形でデジタルノマドになっているだろうという予測もあります。となると、今後ますますワイヤレス充電のニーズが高まっていくでしょう。

ワイヤレスで電気をやり取りすることをワイヤレス給電ともいいます。現在、研究開発が進んでいるワイヤレス給電システムには「非放射型」(電磁誘導、磁界共鳴、電磁結合など)や「放射型」(電波式、レーザー式、太陽発電など)などいろいろな方式がありますが、いずれの方式にせよ、コンセントに代わって電気を家電などに飛ばすWi‐Fiルーターのような機器が必要です。また、飛んできた電気を受け取るデバイス側も、ワイヤレス給電に対応したシステムを搭載している必要があります。

充電、送電のワイヤレス化が一般的になれば、Wi‐Fiによってインターネットの使い方、仕事・ライフスタイルの可能性が大きく広がったように、私たちの生活は大きく変わるでしょう。これから医療サービスをする介護用ロボットなども普及してくるでしょうし、そうするとワイヤレス給電のニーズがにわかに高まる可能性はあります。
実際にアメリカのリサーチ会社IHSは、ワイヤレス給電の市場規模は今後大きく拡大するという統計を公表しています。また国内でも成長戦略の一つとしてワイヤレス給電がテーマに上がり、標準化に向けて総務省も動いています。ワイヤレス給電は、国を挙げたプロジェクトとして様々なメーカーや大学などで研究が進められている世界的にも注目の技術なのです。

「インバウンド」「災害時」にも役立つワイヤレス充電

近年、日本は訪日観光客(インバウンド)向けのWi‐Fiサービスの充実が課題になっていますが、もし日本国内の街中にワイヤレス充電スポットが増えて、Wi‐Fiのように簡単に、いつでもどこでもスマートフォンに充電できれば、旅行者にとってこれほど便利なことはないでしょう。

ワイヤレス充電は災害時にも大いに役立ちます。災害時に通常の電力供給がストップしてしまい、携帯の電源が切れてしまいそうなとき、そこにワイヤレス充電の機械があればすぐに充電でき、家族とも連絡がとれます。また、よく山で遭難してしまった人がスマートフォンの位置情報で自分の位置を確認して捜索隊に連絡して助かった、という話を聞きますが、山岳地帯などにもワイヤレス充電スポットがあれば助かります。
このように、どこにいてもワイヤレスで電気が確保でき、それを貯めておける蓄電池がさらに高性能化すれば、これまで送電線が整備されていないために暮らせなかった場所でも生活できるようになります。そうなれば後述する「オフグリッド生活」も急速に広がります。このようにワイヤレス充電は蓄電池の普及とともに今後大きな利用価値が出てくる技術であり、この技術によって、地球上での私たちの活動範囲がさらに大きく広がる可能性を秘めています。

電気のシェアとスマホの蓄電池化

もう一つ、電気のやり取りがワイヤレスになることで非常に重要な変化が起きるはずです。それは、「電気を人に分け合う」「共有がしやすくなる」=電気をシェアできるようになることです。前述したように、もうすでに「電気をお裾分けする」という動きが現実のものになっています。そうした行動が拡大していくために必要なのは、蓄電池とワイヤレス充電システムです。
今後、ワイヤレス充電システムとIT技術の進化によって、外出先であなたのスマートフォンの電源が切れそうになっていたら、友人に「ちょっと電気貸してくれない?」と言って、その友人のスマートフォンに貯まっている電気を赤外線通信のようにピピッと送ってもらう、といったこともできるようになるはずです。貸し借りした電気の量はきちんとデジタルデータとして残っているので、後でまとめてきちんと返す。こうしたスマートフォンを介した電気の貸し借り、電気のシェアは近いうちにごく当たり前になるのではないかと思います。
そうなると、本当にスマートフォンがひとつのバッテリー兼電気の送受信装置のような感じになり、スマートフォンに貯まった電気を他の家電製品に、まるでリモコンのようにピピッと飛ばして充電できるようになるでしょう。
こうしたことが可能になる前提条件が「電気のデジタル化」です。無線でお互い融通し合った電気でも、どれだけ誰が使ったかが分かるようになる、どの端末にどれだけ給電したかが分かるようになるからこそ、こうしたニーズに対応できるようになるのです。

先ほどお話しした訪日観光客向けのワイヤレス充電サービスも、日本にいる間どんな場所で充電をしても、クレジットカードの明細のように帰国してから電気代の請求書が届いて、いつどこでいくら電気を使ったかが分かるようになるでしょう。それもすべて電気のデジタル化が可能にするものです。かつそれが将来的には仮想通貨でオンライン上で決済されて払われるようになったらもっと便利です。今後そうしたシステムが急速に普及していくはずです。こうしてブロックチェーン、IoTなどを活用した電力・エネルギーマネジメントシステムのデジタル化とワイヤレス充電技術が「電気エネルギーのシェア化」を後押しするのです。

先ほど、EVが蓄電池としての役割を果たす、という話をしましたが、スマートフォンも今後、コンパクトで高性能な蓄電池として進化していく可能性は大いにあります。スマートフォンは、コンピュータであり通信機器であり、カメラであり、音楽・映像視聴機器であり、サイフであり、発電装置、蓄電池でもある、といったように、すべての機能がさらにスマートフォンに集約されていく時代になりそうです。

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