スマホでサンマが焼ける日ーコラムー第3回 鍵を握るスマートメーター

2020年08月20日

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

スマホでサンマが焼ける日ーコラムー第3回 鍵を握るスマートメーターの写真

私たちは、今から通信革命と同じような、またはそれ以上の世界的大変革の時代に突入しようとしているのです。その変革の波のキーワードとなるのが、今話題のIoT(アイオーティー:モノのインターネット化)です。

執筆者:一般社団法人エネルギー情報センター
理事 江田健二

富山県砺波市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア株式会社)に入社。エネルギー/化学産業本部に所属し、電力会社・大手化学メーカ等のプロジェクトに参画。その後、RAUL株式会社を起業。主に環境・エネルギー分野のビジネス推進や企業の社会貢献活動支援を実施。一般社団法人エネルギー情報センター理事、一般社団法人CSRコミュニケーション協会理事、環境省 地域再省蓄エネサービスイノベーション委員会委員等を歴任。

記事出典:書籍『スマホでサンマが焼ける日 電気とエネルギーをシェアする未来の「新発想論」』(2017年)

「デジタル化される電気」とは何か?

読者の皆さんもご存じのようにインターネット革命は私たちの生活だけでなく、産業やビジネス、世界を大きく変えました。世の中がここまで短期間に大きく変化したのは、インターネットによる言葉の伝達方法、すなわちコミュニケーションの形態が大きく変わったからです。例えば、以前は、電話や手紙でやりとりしていたことも今は、スマートフォンのメールやメッセンジャーで行うことが大半でしょう。そこに加えてデジタル技術の進歩が拍車をかけ、大変革が起きたのです。

通信、音楽、映像などのデジタル化が進んできました。デジタル化はもうほとんどの分野で完結してしまったかのように見えます。ということはこの先しばらく大きなデジタル化の波は起こらないのでしょうか?私はそうは思いません。私たちは、今から通信革命と同じような、またはそれ以上の世界的大変革の時代に突入しようとしているのです。その変革の波のキーワードとなるのが、今話題の「IoT(アイオーティー:モノのインターネット化)」です。そしてそのIoTと密接な関係にある「電気(エネルギー)のデジタル化」なのです。

IoTは、Internet of Thingsの略語です。家電や自動車などの家やオフィスのあらゆるモノがインターネットと繋がる世界を現す言葉です。モノとインターネットを相互に通信することで、モノの活動を最適化し活用することができます。では「電気がデジタル化される」とはいったいどういうことでしょう?またそれがIoTとどのような関係があるのでしょうか。
「電気のデジタル化」とは、写真が紙からデジタル画像に変わったように、電気それ自体が何か異質なものに変化するということではありません。そうではなくて、「電気の流れ方や流れる量=電気利用情報」がデータ化、数値化されるということです。「電気使用量は、今だってもう数値化されているじゃないか」と思う人もいらっしゃるでしょう。確かに今、毎月の電気使用量は電気メーターによって計測され、その数値によって電気料金が算出されています。

ですが、ここで言うデータ化、数値化とはそういうことではありません。電気利用情報のデータ化とは、たとえばあなたが今日、その時間帯にどれだけの電気を使用したかが、リアルタイムで分かるようになる、すなわち電気利用情報が網目のような細かいデータになり、「電気利用の見える化」が実現されるということです。

そうした電気利用状況のデータを極めて細かく、リアルタイムで取得できるようになるためには、ある新しい機器が必要です。その機器が「スマートメーター」です。これまでのアナログ式の電気メーターに変わる新しいデジタル式電気メーターです。

これまで私たちの生活に密接に係わるものがことごとくデジタル化されてきました。しかし私たちの生活に最も密着した「電気・エネルギー」だけがデジタル化されてきませんでした。しかし、電力自由化、そしてスマートメーターによって、ここにきてようやく電気のデジタル化という新しい時代の幕開けが到来したのです。

鍵を握るスマートメーター

スマートメーターは2016年4月の電力自由化にともない新たに導入、普及し始めています。その特徴はいろいろとありますが、大きな特徴は、これまで検針員が毎月検針に回っていた作業が必要なくなり、自動検針が可能になるということです。しかもスマートメーターは、各家庭やビル等の30分毎の利用データを電力会社に自動的に送信してくれます。1日の計測は48回(1時間に2回)、1カ月で約1500回。つまり、月に1度計測していた時代と比べれば、実に1500倍の詳細な電力利用データが蓄積されていくのです。

またスマートメーターは、これからお話しする新しい技術やサービスのほとんどすべてにつながり、新しい世界を切り開く鍵となる非常に重要な機器の一つです。今回の電力自由化のタイミングで、アナログからデジタルへ、という視点で見ると非常に大きな変化が起こっています。このスマートメーターが、これからお話しする様々な革命的社会変化の出発点になります。

前述のように電気利用情報がアナログからデジタル化され、そのことによって社会全体に大きな変化が起こるためには、スマートメーターが各家庭に導入される必要があります。日本でのスマートメーターの導入スケジュールですが、大体2022年~2024年くらいまでにすべての家庭に設置される予定になっています。現時点では、約半数の家庭への設置が終了しています。導入に関しての家庭の費用負担はなく、無料です。これは、いわゆるインターネットで言うとすべての家でインターネットが使えるようになるような状況です。いずれスマホ(スマートフォン)のように「スマメ」などと呼ばれるようになる日がくるかもしれません。

では電気利用情報がデジタル化され、極めて細かいデータがリアルタイムで取得できることで、私たちの生活、社会にいったいどんな変化が起こるのでしょうか?スマートメーターの利点は検針が自動検針になるということだけではなく、他にも様々なメリットが生まれます。まずは我々消費者にとってのメリットを考えてみましょう。スマートメーターによって、これまで電気利用データが1カ月の積算データしか取れなかったのが30分ごとに取得できるようになりました。

例えば、電力自由化前の家庭の電気の料金メニューは、家庭があまり何も考えずに使った分を計測し支払う画一的な料金メニューでした。つまり、1カ月にいろいろと使っただけの電気料金を1カ月分まとめて支払うというやり方です。しかし今回の電力自由化を契機に、様々な料金メニューが出てきました。たとえば夜間の電気が安いので夜間の電気だけを買いましょうというメニューや、他にも消費者の様々なライフスタイルやニーズに対応して消費者が自分でメニューを選ぶことができるようになりました。

これからはスマートメーターで30分ごとの電気使用量が分かるので、たとえば「市場連動型プラン」のようなものも出てくるでしょう。つまり、金融における為替のように、電気取引市場の30分ごとの電気仕入れ価格に合わせて電気を購入するプランなども、作ろうと思えば作れるということです。こうした細かい料金プランは、電力供給側にとっても新しいビジネスの広がりにつながりますし、消費者側にとってもありがたく、双方にとって嬉しいことです。

電気利用データが詳しく分かれば、当然、どの時間帯にどれだけ電気を使っているかが分かるので節電にも役立てられますし、時間帯ごとに価格が違うような料金プランを選択している人であれば、「料金が高いときはちょっと電気を使うのをやめよう」、といった選択もできるわけです。今の携帯電話の通話料金も、特定の人にかけるときは安くするといったプランがあります。それと同じような感覚で自分にとって一番いいプランを選択できるようになるということです。

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