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家庭部門のCO2排出量66%減目標、住宅の省エネルギー対策「ZEH」とは

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コロナの影響により在宅勤務が日常的なものとなったことで、私たちはより快適性や経済性に優れた住まいに対する関心は高まりつつあるのではないでしょうか。そのような中で、7月26日に政府が公表した「地球温暖化対策計画」の原案で、温室効果ガスの排出量を家庭部門で66%削減する検討をしていることが明らかになりました。また、27日には再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース(以下、タスクフォース)にて新築戸建て住宅の約6割に太陽光発電設備を設置することが表明されました。そこで今回は、家庭部門の省エネルギーの取り組みについて、その中でも特に「ZEH(ゼッチ)」に注目して考えていきます。

直近の政府動向、家庭部門のCO2排出量66%減目標を検討

日本では、温室効果ガス排出量の8割以上を占めるエネルギー起源二酸化炭素について、統計上、以下の5部門に分けることができるとされています。また、地球温暖化に関する対策・施策の効果もこの部門ごとに見ることができます。

①産業部門 ②業務その他部門 ③家庭部門 ④運輸部門 ⑤エネルギー転換部門

26日に環境省が公表した地球温暖化対策計画の原案では、以下のように記されています。2030年度に温暖化ガスの排出量を2013年度比で46%削減するという目標の達成に向けて、「温室効果ガス総排出量の8割を占めるエネルギー起源CO2は、30年度の排出量を6億8000万t」とすることを目標とし、その内訳として下記を示しました。

  1. 建設業を含む産業部門が2億9000万t(13年度比37%減)
  2. オフィスなど業務その他部門が1億2000万t(50%減)
  3. 家庭部門が7000万t(66%減) など

家庭部門は現行計画では39%減とされていましたが、「2013年度比で約66%削減する必要がある」とし、「住宅の省エネルギー性能の向上等を図るとともに、国民が地球温暖化問題を自らの問題として捉え、ライフスタイルを不断に見直し、再生可能エネルギーの導入、省エネルギー対策、エネルギー管理の徹底に努めることを促す」と明記しました。また、「家庭で使用される機器の効率向上・普及やその運用の最適化を図ることにより家庭部門のエネルギー消費量の削減が図られる」としました。

元々は、1970年代の石油危機以降、「日本のGDPは2.5倍に増加したにもかかわらず、産業部門はエネルギー消費量が2割近く減少」していました。一方、「民生部門は業務部門では2.9倍、家庭部門では2.0倍と大きく増加」しました。(※1973年対比、2013年時点の数値となります。 資料:平成27年12⽉資源エネルギー庁、ZEH普及に向けて〜これからの施策展開〜ZEHロードマップ検討委員会におけるZEHの定義・今後の施策など)

そのため、「我が国のエネルギー需給の安定のためには、民生部門の対策が必要不可欠」とし、第4次エネルギー基本計画(2014年4⽉閣議決定)において、ZEHの実現・普及⽬標が設定されました。

現状の具体的なZEHの目標については以下の通りです。2016年5月閣議決定された「地球温暖化対策計画」及び、2018年7月に閣議決定された「第5次エネルギー基本計画」において、「2020年までにハウスメーカー等が新築する注文戸建住宅の半数以上で、2030年までに新築住宅の平均でZEHの実現を目指す。」

その後、「家庭部門における2019年度の二酸化炭素排出量は、1億5,900万t-CO2となり、 2013年度比で23.3%減少」しています。減少要因は、「電力の二酸化炭素排出原単位が改善したこと」や、「省エネルギー等によりエネルギー消費原単位が改善し、エネルギー消費量が減少したこと」などによります。下記の図は、二酸化炭素排出量(電気・熱配分後)の部門別の推移です。(括弧内の数字は各部門の2019年度排出量の2013年度排出量からの増減率)

我が国における二酸化炭素排出量(電気・熱配分後)の部門別の推移 出典:地球温暖化対策計画(案)

しかし、今回のタスクフォースでは、「少なくとも『ZEH・ZEBの省エネ基準への適合義務化』と書き換えられるべき」と指摘がありました。この点について国土交通省では、「2023年度までに誘導基準をZEHレベルにまで引き上げ、遅くとも2030年度までに義務基準を誘導基準に引き上げるとしており、ZEHの義務化を視野に入れている」ことを説明しました。

加えて、タスクフォースでは「住宅への太陽光発電の設置義務化の必要性」についても言及されました。これに対して資源エネルギー庁は、「政策強化により、2030 年に供給される新築戸建住宅の約6割に太陽光発電を導入することを検討している」と述べています。経済産業省によると、現状、大手住宅メーカーによる注文戸建ての半分近くで太陽光パネルが設置されています。

一方、中小メーカーや建て売りではほとんど設置されていない現状があります。これを2030年までに新築の6割程度の水準になるように、大手住宅メーカーで9割、中小メーカーや建て売りの5割程度での設置を目指すということです。河野太郎内閣府特命担当大臣は、この目標に対して住宅への太陽光発電義務化にまで踏み込んだ議論が必要であることを示唆しましたが、現状は義務化にまでは至っていません。

それでは、ZEHとはどのようなものなのか、そしてその普及や認知に具体的にみていきたいと思います。

ZEH(ゼッチ)とは

ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)とは、「外皮の断熱性能等を大幅に向上させるとともに、高効率な設備システムの導入により、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギーを実現した上で、再生可能エネルギーを導入することにより、年間の一次エネルギー消費量の収支がゼロとすることを目指した住宅」です。

ZEH説明図 出典:資源エネルギー庁

⾼断熱基準や設備の効率化で一次エネルギー消費量の20%以上という省エネ基準を満たした上で、太陽光発電等によりエネルギーを創ることで、正味でゼロ・エネルギーを⽬指します。ただし、屋根が⼩さい・⽇射が当たりくい住宅では、エネルギーを創ることに限界があるため、評価に考慮することが必要とし、下記の基準が設けられています。

  1. 正味で75%省エネを達成したものをNearly ZEH とする。
  2. 正味で100%省エネを達成したものをZEHとする。

建築スケジュールと補助金のスケジュールが合う場合に限りますが、ZEHとして認められると補助金を受けることができます。そのためには細かな要件が定められていますが、ポイントは「断熱」「省エネ」「創エネ」という3つの要素です。

「断熱」では、断熱材や窓の性能を高めます。断熱性能が上がれば、冷暖房に使うエネルギーを減らすことができます。「省エネ」にはHEMS(ヘムス)という、住宅内の消費エネルギーと太陽光発電等で創るエネルギーを確認できるシステムを活用します。また省エネエアコンや、高効率な給湯システム、LED照明などの導入をします。「創エネ」は、太陽光発電などの再生可能エネルギーで、創出するエネルギーのことです。

ZEHのメリットには次の3点が考えられます。

(1)経済性

高い断熱性能や高効率設備の利用により、月々の光熱費を安く抑えることができます。さらに、太陽光発電等の創エネについて売電を行い、収入を得ることができる可能性もあります。

(2)快適・健康性

高断熱の家は、室温を一定に保ちやすいので、夏は涼しく、冬は暖かい、快適な生活が送れます。冬は効率的に家全体を暖められるので、急激な温度変化によるヒートショックによる心筋梗塞等の事故を防ぐ効果もあります。

(3)レジリエンス

台風や地震等、災害の発生に伴う停電時においても、太陽光発電や蓄電池を活用すれば電気が使うことができ、非常時でも安心な生活を送ることができます。

一方デメリットとしては、「断熱」・「省エネ」化し、「創エネ」を備えるので、建築コストは非ZEHの住宅より高くなります。しかし、今年も連日猛暑日が続いて実感しますが、長期間にわたって光熱費を抑えられて、酷暑や厳寒でも快適に過ごせることを考えると検討する人が増えてくるのではないでしょうか。また、太陽光発電の普及も進み、価格や設置する費用も年々下がっている傾向にあります。

それでは、そのようなZEHがどの程度まで普及しているのか、そもそも認知がされているのかついてみていきます。

ZEHの認知・普及度について

ZEHロードマップフォローアップ委員会(以下、委員会)では、3月の報告書で、「高断熱住宅に対する理解やZEHに対する認知がまだまだ十分に進んできているとは言い難い状況であることを考慮すると、更なる経済的な負担はこれまで以上に厳しい状況になっている。」としています。

「2020 年までにハウスメーカー等が新築する注文戸建住宅の半数以上でZEHの実現を目指す」という目標の達成状況としては、大手ハウスメーカーは47.9%と概ね達成しているものの、一般工務店によるZEH化が十分に進んでいないことがわかります。下記図参照。

2020 年目標の達成状況 出典:令和3年3月 31 日 ZEHロードマップフォローアップ委員会 更なるZEHの普及促進に向けた今後の検討の方向性等について

ZEHビルダー/プランナー(自社が受注する住宅のうちZEHが占める割合を2020年までに50%以上とする目標を宣言・公表したハウスメーカー、工務店、建築設計事務所、リフォーム業者、建売住宅販売者等)へのアンケート調査によると、「顧客の予算」や「顧客の理解を引き出すことが出来ない」といった点が主な課題ということです。

委員会は、「その背景には、ZEHが顧客に認知されておらず、経済性のみならず、安全性や快適性、レジリエンス性といった面でのメリットが十分に浸透していないことが考えられ、このことが、建設事業者の営業部門におけるモチベーションを上がりにくくしており、更なるZEHの普及の妨げとなっているのではないかと考えられる。」「消費者や建物オーナー等のZEHに対する認知度の向上を図ることを通じて、建築事業者に営業力を強化したいと思わせるインセンティブを生み出す取組を実施していくことが重要である」としています。

では、どの程度の認知度なのか、2017年に日経BPコンサルティングの行ったインターネット調査の結果を引用したいと思います。(https://www.trinasolar.com/jp/resources/blog/fri-12082017-1800)

調査概要
  1. 調査主体:日経BPコンサルティング
  2. 調査方法:インターネット調査(日経BPコンサルティングの調査モニターに調査)
  3. 有効回収数: 2085件。うち男性は71.4%、女性は28.6%。年齢層は29歳以下が0.4%、30~39歳が6.2%、40~49歳が36.0%、50~59歳が36.9%、60歳以上は20.4%
  4. 調査時期:2017年9月上旬

ZEHについて、「どういうものか知っている」と「言葉を見聞きしたことがあるが、内容は知らない」の合計順で7.4%にとどまりました。一方、「全く知らない」は79.2%という回答率でした。4年前の調査ですが最も認知度が高かった「リノベーション」は約7割が「どういうものか知っている」と「言葉を見聞きしたことがあるが、内容は知らない」と回答していることと比較しても、認知度に課題があることがうかがえます。

これからの取り組みは、そしてZEH+やLCCM住宅とは

これまで、2030年までに新築住宅の平均でZEHの実現を目指すという目標の達成に向けて、取組強化が必要な状況であること、さらにZEHの義務化を視野に入れて検討をしていくフェーズにあるということをみてきました。

さらにタスクフォースでは、「脱炭素社会に向けた住宅・建築物における省エネ対策等のあり方・進め方(案)」の中で、「全体の省エネ性能の向上を牽引する取組として、ZEH+やLCCM住宅など、より高い省エネ性能を実現する取組を促進すること」という提案をしています。

ZEH+とは、現在のZEHよりさらに省エネを深堀りする(一次エネルギー消費量の25%以上という省エネ基準を満たす)とともに、設備のより効率的な運用などを備えたものです。補助事業の「次世代ZEH+」では、蓄電システムなどの導入も要件に入り、太陽光発電の自家消費率を引き上げ、FITからの自立を目指すことが目的とされています。

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