世界初、紙の原材料でCO2減のコンセプトカー、金沢工業大学発表、2019年度に完成見込
政策/動向 | 再エネ | IT | モビリティ | 技術/サービス | 金融 |
2019年01月29日
一般社団法人エネルギー情報センター

環境省が進めるNCVプロジェクトの一環として、金沢工業大学は、外板や骨格部材を植物由来のCNFで製作した世界初のコンセプトカーの開発に取り組んでおり、2019年度中の完成を予定していると発表しました。
世界初、紙の原材料であるセルロースが骨格部材で実装されているコンセプトカー
セルロースナノファイバー(CNF)は木材などの植物等を原料とし、軽量でありながら高い強度や弾性率を持つ次世代素材です。親水性のCNFを疎水性のプラスチックに混ぜるにはコストがかさむなど、普及に向けた課題も残っていますが、セルロースそのものの特徴(再生可能資源、生態分解性、生体適合性、有機溶剤耐性)だけではなく、ナノ化による特徴(熱膨張、高強度・高弾性、大きな比表面積)を併せ持っているといわれています。
セルロースナノファイバーは、木材など植物資源を原料としており、ほぼ無尽蔵の持続可能型資源であるといえます。環境省はこれらの特徴に着目し、2016年12月に「ナノ・セルロース・ビークル・プロジェクト(NCV)」を始動したと発表しました。
NCVは、CNFを複合化した樹脂材料について、最終製品が出来上がるまで(材料~自動車)の一連の流れを評価するものであり、二酸化炭素削減を目的とします。産学官の22機関が参画し、2019年度までの4カ年計画で、CNFを活用した材料の製品開発や、二酸化炭素削減効果の評価・検証等に取組んでいます。
このNCVの一環として、金沢工業大学は、外板や骨格部材を植物由来のCNFで製作した世界初のコンセプトカーの開発に取り組んでおり、2019年度中の完成を予定していると発表しました。
自動車へのCNFの社会実装は世界初の取り組みで、日本が世界に誇るフラッグシップ技術となります。自動車の大型部品を植物由来のセルロースナノファイバーに置き換えることで、軽量化による走行時の二酸化炭素排出が大幅に削減できるとともに、国内に豊富にある森林活用の活性化にもつながります。また国連全加盟国が進めるSDGsの達成(気候変動対策)に貢献できるものとして期待されています。
今回のプロジェクトを進める金沢工業大学大学院の影山裕史教授は、エンジンフード等のCNF化を可能にする成形法と用途拡大を目指す出口戦略を担当しています。
影山教授は、2018年に世界で初めてCNFで試作したトヨタ自動車「TOYOTA 86」のエンジンフードにおいて、鋼製に比べて5割近い軽量化を確認しています。
また、製造過程で現在採用が進んでいるCFRP(炭素繊維強化プラスチック)の成形方法の一つであるRTM(樹脂注入成形)を採用し、低圧成形を可能にすることにより、部品点数の少ない大型一体成形が可能である事を確認しています。
この続きを読むには会員登録(無料)が必要です。
無料会員になると閲覧することができる情報はこちらです
執筆者情報

一般社団法人エネルギー情報センター
EICは、①エネルギーに関する正しい情報を客観的にわかりやすく広くつたえること②ICTとエネルギーを融合させた新たなビジネスを創造すること、に関わる活動を通じて、安定したエネルギーの供給の一助になることを目的として設立された新電力ネットの運営団体。
企業・団体名 | 一般社団法人エネルギー情報センター |
---|---|
所在地 | 東京都新宿区新宿2丁目9−22 多摩川新宿ビル3F |
電話番号 | 03-6411-0859 |
会社HP | http://eic-jp.org/ |
サービス・メディア等 | https://www.facebook.com/eicjp
https://twitter.com/EICNET |
関連する記事はこちら
一般社団法人エネルギー情報センター
2022年01月13日
ソニー、EVの新会社を設立。モビリティ―とエネルギー、通信業界の融合へ
年始にソニーがEVの新会社を設立することを発表しました。かつて家電メーカーであったソニーは、これまでの事業の特徴や技術を活かしたEVを開発しています。今回は、モビリティ産業を進展させ、エネルギーや通信業界と融合する新しい動きとして、「ソニーモビリティ」に注目していきたいと思います。
一般社団法人エネルギー情報センター
2021年11月05日
活性化する商用車の電動化!物流を変える商用EV市場の最新動向。
欧州連合(EU)が2035年にガソリン車の販売を事実上禁止する方針を打ち出すなど、世界各国によるEVシフトの動きは加速の一途をたどっています。欧米メーカーだけでなく、中国勢もコスト力で存在感を見せています。ASEANやインドなどの新興国市場でもEVで先手を取ろうと各国のメーカーが積極的な動きを示しています。今回は、国内市場で動きが活発化している商用車の電動(EV・FCV)化について最新動向をみていきます。
一般社団法人エネルギー情報センター
2021年03月15日
循環型社会、脱炭素社会を目指す時代の流れとともに、近年、ガソリン車に比べて、参入障壁が低いことから、世界の名だたるIT・ハイテク企業がEVシフトを本格化させようとしています。こうした企業はEVと親和性の高い自動運転の分野で自社の技術を活かすことができます。“新しいモビリティ”としてスマホからEVへのシフトチェンジが起きており、EV市場の覇権争いが激化しています。今回は、世界の動向から日本の異業種参入の事例、そして日本のEV化の課題について考えていきたいと思います。
一般社団法人エネルギー情報センター
2021年01月31日
2020年9⽉22⽇、米テスラ社が開いた株主総会に伴うイベントで、CEOであるイーロン・マスク氏は、「家庭⽤エアコン事業を来年始めるかもしれない。「より静かで効率が⾼く、省エネ性に優れたエアコンを作れると思う」と発言したことが注目されました。HEMSの未来を創るテスラ社がエアコン事業へ参入した背景について考えます。
一般社団法人エネルギー情報センター
2021年01月13日
アップル社、2024年に電気自動車(EV)の生産開始を目指す
2020年12月、ロイター通信は米アップルが2024年の電気自動車(EV)の生産開始を目指し、車載電池技術の開発を進めていると報じました。実現すれば、既存の自動車大手にとっては脅威的な存在となるかもしれません。