蓄電池×モビリティ 第4回
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2024年01月20日
一般社団法人エネルギー情報センター
次世代自動車を中心とした「モビリティ」=自動車産業界をキーワードに、蓄電池の今と未来についてを全6回にわたってご紹介します。
執筆者:一般社団法人エネルギー情報センター
理事 江田健二
富山県砺波市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア株式会社)に入社。エネルギー/化学産業本部に所属し、電力会社・大手化学メーカ等のプロジェクトに参画。その後、RAUL株式会社を起業。主に環境・エネルギー分野のビジネス推進や企業の社会貢献活動支援を実施。一般社団法人エネルギー情報センター理事、一般社団法人CSRコミュニケーション協会理事、環境省 地域再省蓄エネサービスイノベーション委員会委員等を歴任。
記事出典:書籍『2時間でわかる 蓄電池ビジネスの未来: ウィズコロナ時代に拡大する20兆円市場に注目せよ!』(2020年)
V2H機器の詳細と利用のメリット
自動車から住宅、住宅から自動車への充電・給電を行うV2H機器は、太陽光発電システムの設置の有無や、発電した電力の使い道によって選べるタイプが異なります。
一つは「非系統連系」型です。これは太陽光発電を「売電」にのみ利用しているケースに適しています。ただし、EVやPHVからの給電中は電力会社からの電気を利用することができません。注意点として、電気使用量がEVからの給電量を上回ると給電は停止し、電力会社からの電力供給に切り替わる際に瞬時停電が発生してしまうことが挙げられます。瞬時停電とは、電源からの電力供給が短い時間(数マイクロ秒から数百マイクロ秒)絶たれてしまう電源障害現象のことです。
もう一つは「系統連系」型です。このタイプを使えるのは太陽光発電設備をすでに設置済みで、発電した電気を自家消費している家庭です。太陽光発電によって得られた電力、EVから給電した電力、電力会社からの電力を同時に使用することができるので安心です。
ここで改めてV2Hの特長・メリットを整理しておきましょう。
家庭用コンセントより早く充電できる
V2H機器を使えば、EVやPHVの充電時間は一般家庭用コンセントの約半分で済みます。
電気代の節約に貢献できる
主に日中に車に乗る人は、電気料金が安くなる夜間に深夜料金で充電することができます。もし日中に車に乗らない場合は、夜間にEVやPHVに蓄えた電気を家庭用電源として使用することで、大幅な電気代の節約が期待できます。
停電時にバックアップ用電源として機能する
災害などで停電したとき、電力会社の給電や太陽光発電の電力が利用できなくても、EVやPHVに蓄えた電力を家庭で使えます。
一般的な蓄電池と比べてEVの電池容量が大きい
一般的な家庭用蓄電池(定置用蓄電池)は、4~12kWhの容量であるのに対し、EVは10~40kWhと大容量なので、より長い時間にわたって電化製品を使用することができます。
自治体によっては、補助金を受け取れる
EVやPHVなどのエコカーには、自治体ごとに補助金制度が設けられています。中には、車両本体だけでなくV2H機器にも補助金を支給するところもあるので、お住まいの自治体に確認するとよいでしょう。
国内自動車メーカーも、自社のEVやPHVをV2Hとして利用するようPRやキャンペーンを積極的に行っています。自動車メーカーや住宅メーカーにとってV2Hは新たなビジネスチャンスといえるでしょう。
マンションにおけるEV充電設備
EVやPHVの普及にともない、最近、マンション居住者向けの充電インフラの整備が課題になっています。マンション住まいの人にとっては、マンションでの充電器の有無が、EVを買うか否かという判断基準になるからです。
実際、マンション居住者でもEVやPHVの購入を検討する人が増加しており、マンションの駐車場に充電器設備設置を検討するケースが増えてきています。
先ほど、自動車用の充電器は普通充電器と急速充電器の2種類あるとお話ししましたが、マンションには200Vの普通充電器を設置するのが一般的です。これは機械式駐車場に設置することも可能です。ただし、駐車場の種類によっては充電設備の設置が制限される場合もあります。
またマンションの契約電力容量の変更や、共用電源の増設が必要になる場合もあるなど、工事内容や費用はそれぞれのマンションの既設設備の状況等により大きく変わってきます。さらに、充電器の利用者に対する課金方法や利用料金の徴収方法等、様々なルールを定める必要もあり、導入前に管理組合で十分な討議・検討が必要でしょう。
加えて、補助金申請の仕組みや申請の方法などについても調べておく必要があります。経済産業省・国土交通省が「充電設備設置にあたってのガイドブック」をインターネット上に公開していますので、そちらを参考にすることをお勧めします。
今後は、マンションにEV用の充電器を設置することがマンションの付加価値向上につながっていくと思われます。新築マンションにおいては、EV充電器の設置がデフォルト化していくかもしれません。いずれにせよ、一戸建て住宅へのV2Hシステム導入と歩調を合わせて、マンションとEVを連動させたシステムへのニーズは高まること必至で、そこに新たなビジネスチャンスが生まれてくるはずです。
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