蓄電池×モビリティ 第2回
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2023年12月12日
一般社団法人エネルギー情報センター
次世代自動車を中心とした「モビリティ」=自動車産業界をキーワードに、蓄電池の今と未来についてを全6回にわたってご紹介します。
執筆者:一般社団法人エネルギー情報センター
理事 江田健二
富山県砺波市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア株式会社)に入社。エネルギー/化学産業本部に所属し、電力会社・大手化学メーカ等のプロジェクトに参画。その後、RAUL株式会社を起業。主に環境・エネルギー分野のビジネス推進や企業の社会貢献活動支援を実施。一般社団法人エネルギー情報センター理事、一般社団法人CSRコミュニケーション協会理事、環境省 地域再省蓄エネサービスイノベーション委員会委員等を歴任。
記事出典:書籍『2時間でわかる 蓄電池ビジネスの未来: ウィズコロナ時代に拡大する20兆円市場に注目せよ!』(2020年)
EV関連のビジネスチャンスはどこにあるのか
EVの普及によって、今後さらに充電スポットが増えていくでしょう。近い将来、街中のコインパーキングにおけるEV専用充電設備も普及するはずです。これは、駐車場を経営している会社にとっては大きなビジネスチャンスです。ガソリンスタンド、タクシー会社、レンタカー会社、カーシェアリングやライドシェアを展開する企業など、車に関係する業界にも大きな変革の波が押し寄せるでしょう。
テスラは次々と新モデルを発表し、最近では300万円前後のモデルも販売開始しています。それくらいの価格になってくると、EVへの買い替えを検討する人も増えてくると思われます。
EVは単なる移動手段としてだけではなく、今後は大容量の蓄電池としての活用が進んでいきます。特に一般家庭においては、スマートハウス(ITによって家庭内のエネルギー消費が最適に制御された住宅)の普及と同時に、EVがライフスタイルの変化に重要な役割を果たすでしょう。
ここで注目されるのが、EVに蓄えた電力を家庭で利用するシステム「V2H(Vehicle to Home)」です。このV2Hも蓄電池ビジネスにおける重要なキーワードとなります。詳しくは次章で解説しますが、これからは自宅にEVがあれば、価格の安い深夜時間帯の電気のみを購入して、EVを自分の家の電気をまかなう蓄電池代わりにすることができます。今後、EVの性能も徐々に向上していきますので、今よりもさらに大容量の電気をEVに貯められるようになるでしょう。
さらにEVビジネスの広がりにおいて期待されるのは、自動運転車の普及です。自動運転には「交通事故の減少」「渋滞ストレスからの解消」「運転できない人の移動手段となる」など多くのメリットがあります。自動運転車のレベルは6段階に分かれていますが、これは米運輸省道路交通安全局(NHTSA)が発表したもので、次のようなものです。
- レベル0:運転自動化なし
- レベル1:運転支援
- レベル2:部分運転自動化
- レベル3:条件付き運転自動化
- レベル4:高度運転自動化
- レベル5:完全運転自動化
2019年12月1日の「道路交通法」および「道路運送車両法」の改正により、自動運転レベル3機器の保安基準と、システムの運転時の事故の所在が明確にされました。これにより2020年は、複数の自動車メーカーから自動運転レベル3搭載車の市販化が進むだろうといわれています。
AI技術の進歩にともない、EV型の自動運転車はこれから急速に実用化が進むと考えられ、特にバスやタクシーなど公共交通機関での導入が期待されています。この分野でも蓄電池にとって大きな市場が開けているといっていいでしょう。
ワイヤレス充電化が進むEV
今、EVに家や充電スポットで充電するときには専用のプラグ(ケーブル)を接続する必要がありますが、このプラグの着脱には結構手間がかかります。しかし、ケーブルを使わないで駐車場などに止めておくだけで無線充電できれば非常に便利です。
今、そうしたニーズに応えるべく、トヨタや三菱をはじめ、世界の自動車メーカー各社は競ってEVのワイヤレス充電化の実証実験を行っています。そのシステムは割とシンプルで、車の下側に電気を受電する装置(パット)を搭載し、駐車場に設置した送電パットの上に車を止めれば、そのまま充電ができるというものです。
このシステムの実用化が進めば、スーパーやショッピングモールに車で買い物に行って送電パット付きの駐車場に車を止めておけば、買い物中に充電ができてしまいます。また、路線バスもバス乗り場や停留所で停車中に充電できますし、タクシーも駅のロータリーなどで客待ち時間に効率よく充電できるようになります。
さらに、停車している間だけでなく、走行中にもワイヤレス充電できる技術が研究開発されています。NEXCO中日本は道路にワイヤレス充電装置を設置しての走行中の電気自動車に無線で電力を伝送する「走行中給電システム」の屋外走行実験に成功したそうです。
こうした技術はまだまだ始まったばかりですが、走行中のワイヤレス充電が可能になれば、搭載するバッテリーの容量も小さくなり、車体の軽量化やパッケージングの高効率化、デザインの変化など、EVの姿を一気に変えてしまうはずです。ワイヤレス充電については、モバイル端末(スマートデバイス)とも密接な関係があるので、後ほどまたお話しします。
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