蓄電池×モビリティ 第1回

2023年12月05日

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

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次世代自動車を中心とした「モビリティ」=自動車産業界をキーワードに、蓄電池の今と未来についてを全6回にわたってご紹介します。

執筆者:一般社団法人エネルギー情報センター
理事 江田健二

富山県砺波市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア株式会社)に入社。エネルギー/化学産業本部に所属し、電力会社・大手化学メーカ等のプロジェクトに参画。その後、RAUL株式会社を起業。主に環境・エネルギー分野のビジネス推進や企業の社会貢献活動支援を実施。一般社団法人エネルギー情報センター理事、一般社団法人CSRコミュニケーション協会理事、環境省 地域再省蓄エネサービスイノベーション委員会委員等を歴任。

記事出典:書籍『2時間でわかる 蓄電池ビジネスの未来: ウィズコロナ時代に拡大する20兆円市場に注目せよ!』(2020年)

自動車産業からスマートモビリティ産業へ

今、自動車業界は、従来の自動車産業界だけにとどまらず、テクノロジー産業界やその他多くの産業分野と連携しながら急速に変化しています。特に、EVや自動運転車など次世代自動車の研究開発は日進月歩で進み、実用化・普及も拡大しています。ここでは、そんな次世代自動車を中心とした「モビリティ」=自動車産業界をキーワードに、蓄電池の今と未来について語っていきたいと思います。

蓄電池技術、蓄電池産業において最もインパクトがあるであろうといわれている、これからの自動車業界のキーワードは、人の移動を効率化する新時代のテクノロジー「スマートモビリティ」です。

スマートモビリティの分野は、ICT機能を搭載した「コネクテッドカー」、自立型制御システムを搭載した「自動運転車」、電気エネルギーを活用する「EV」などが牽引しています。また、ウーバーなどのライドシェアサービスもこの分野において重要な要素であり、これらを総称して「CASE」と呼ばれています。CASEは、Connected(コネクテッド)、Autonomous(自動運転)、Shared & Services(シェアリング)、Electric(電気自動車)の頭文字をとった造語です。

スマートモビリティにおいて、もう一つ重要なキーワードがあります。それは「MaaS」です。MaaSとは、Mobility as a Serviceの略で、日本語にすると「サービスとしての移動」となります。バスやタクシー、ライドシェアなどあらゆる公共交通機関をITを用いてシームレスに結びつけ、人々が効率よく便利に使えるようにするシステムのことです。

蓄電池ビジネス発展の鍵はEVにあり

これからの自動車産業界は、CASEやMaaSを軸に大きく進歩していくと思われますが、中でも、蓄電池産業に最も直接的に関連してくるのはElectric(電気自動車)の分野です。具体的にはEVやPHVなど、電力を使うモーター駆動装置を備えた自動車で、特に注目すべきはEVです。蓄電池ビジネス発展の鍵はEVが握っているといっても過言ではありません。言い方を変えれば、蓄電池のみならず電力エネルギーを取り巻く未来社会を語る上で欠かせないのがEVだということです。

ここ最近、EVの利用・普及が加速しています。2025~2030年頃にはEVが今以上に急速に普及すると予測され、「近い将来、ガソリン車は1台も売られなくなるだろう」ともいわれています。実際、欧米諸国や中国政府は、早くからガソリン車からEVへの転換(=脱ガソリン車)を表明しています。こうした次世代自動車市場への注目度は高く、高性能掃除機で有名なイギリスの家電メーカーのダイソンなど他業種企業もEVへの参入を表明しています。

ここ数年でEV用バッテリーの価格は下がりつつありますが。ガソリン車よりもまだまだ高価なEVの価格低下には、搭載される蓄電池のコストダウンが欠かせません。多くのEVに使われているリチウムイオン電池の製造コストは、この10年間で急速に下がっていますから、今後EVの価格はさらに低下していくでしょう。

EV、HV、PHV(PHEV)は何が違うのか

ここではEVを中心に話を進めていきますが、最初にEVの基本的な仕組みとHV、PHVとの違いについて簡単に説明しておきましょう。

EVとは

バッテリーの電力だけでモーター駆動するのがEV(Electric Vehicle)です。

自宅や充電スタンドなどで車載バッテリーに充電を行い、モーターを動力として走行します。エンジンを使用しないので走行中にCO2(二酸化炭素)を排出せず、環境性能においては、いわゆるエコカーの中でもトップクラスといえるでしょう。また、夜間電力(夜間に発電された電力)などを上手に活用して充電することで、ガソリン車よりもランニングコストを低減できるケースもあります。ただし、まだ充電スタンドの整備が十分でない地域もあるので、走行中のバッテリー切れのリスク回避が大きな課題です。代表的な車種は、リーフ(日産)、アイ・ミーブ(三菱)などです。

HVとは

エンジンとモーターという2つの動力(ハイブリッド)で走るのがHV(Hybrid Vehicle)です。走行中に充電し、エンジンとモーターを効率的に使い分けることによって低燃費を実現します。

HVはその仕組みにおいて3種類に分けられます。エンジン駆動が主体で、発進や低速時など、エンジンが苦手とする領域でモーターを使う「パラレル方式」。エンジンとモーターを使い分け、発進・低速時、通常走行時など走行シーンに合わせてエネルギー効率の最大化を図る「シリーズ・パラレル(スプリット)方式」。エンジンは発電のためだけに使用し、駆動(走行)にはモーターを使用する「シリーズ方式」の3つです。

代表的な車種は、プリウス(トヨタ)、アクア(トヨタ)、セレナ(日産)、エクストレイル(日産)、フリード(ホンダ)、フィット(ホンダ)、アクセラ(マツダ)などです。

PHVとは

HVの中で、自宅や充電スタンドなど外部電源から充電できるタイプのものがPHV(Plug-in Hybrid Vehicle)です。通常HVのバッテリーは、走行時や減速時のエネルギーを使って自動的に充電する仕組みになっており、外部電源からは充電できません。

PHVは、メーカーによってはPHEVという呼び方をしている場合もあります。ほとんどのPHVは蓄電池がHVより大容量で航続距離がHVよりも長く、最高速度も高い点も特徴です。

代表的な車種は、プリウスPHV(トヨタ)、アウトランダーPHEV(三菱)などです。

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