蓄電池×モビリティ 第5回

2024年02月07日

一般社団法人エネルギー情報センター

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次世代自動車を中心とした「モビリティ」=自動車産業界をキーワードに、蓄電池の今と未来についてを全6回にわたってご紹介します。

執筆者:一般社団法人エネルギー情報センター
理事 江田健二

富山県砺波市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア株式会社)に入社。エネルギー/化学産業本部に所属し、電力会社・大手化学メーカ等のプロジェクトに参画。その後、RAUL株式会社を起業。主に環境・エネルギー分野のビジネス推進や企業の社会貢献活動支援を実施。一般社団法人エネルギー情報センター理事、一般社団法人CSRコミュニケーション協会理事、環境省 地域再省蓄エネサービスイノベーション委員会委員等を歴任。

記事出典:書籍『2時間でわかる 蓄電池ビジネスの未来: ウィズコロナ時代に拡大する20兆円市場に注目せよ!』(2020年)

EV業界の世界的トレンド

EVが本格的に一般ユーザー向けに販売開始されたのは2009年ですが、それから10年以上たった2019年3月時点のEVやPHVの保有台数は、国内で約24万台といわれています。

近年の海外のEV動向をざっと整理しておくと、2015年以降、フォルクスワーゲン(以下VW)、ベンツ、BMW、ボルボなど欧州メーカーが一斉にEV化に舵を切り始めました。2017年からは、各国政府による脱ガソリン車の動きに拍車がかかります。まずフランスが「2040年までに国内におけるガソリン車とディーゼル車の販売を禁止する」と発表。その直後、イギリス政府も同様の発表を行いました。ノルウェーは2025年までにガソリン車とディーゼル車の国内販売禁止を実現すると宣言しています。

最近グーグルやアップルなどのIT企業も積極的にEVの開発を進めています。海外EVメーカーとしては、前述のテスラモーターズが有名ですが、トヨタ、日産、ホンダ、三菱など日本の自動車メーカーも追従しています。

近年のEV業界の動向を見ると、国内企業では三菱自動車が2009年に小型EV「アイ・ミーブ」を発売。日産自動車が2010年に発売した「リーフ」は世界50以上の市場に投入され、2019年3月にはEVで初めて累計販売台数が40万台を超えました。一方、中国の比亜迪(BYD)など新興企業の参入も相次ぎ、新型EVの開発・量産化に乗り出しています。

EVの性能は、航続距離が重要となります。最近では航続距離が500kmを超す車両も登場するなど普及・拡大は進んでいますが、割高な価格は解消されておらず、中国などは手厚い助成金でEVの普及を後押ししています。

テスラから中国メーカーまで EV・PHV市場の最新動向

ここで改めて、EV・PHV市場の最新動向をデータに基づいて詳しく見ていきましょう。

2018年のEVとPHVの販売台数において、世界でもっとも多かったのはテスラのモデル3でした。2位は、中国の北京汽車のECシリーズ。3位は日産リーフでした。4位、5位もテスラのモデルSとモデルX。テスラは1位のモデル3と合わせると24万5000台超えの販売数で、この数字から見ると、世界で最もEVを売った会社といえるでしょう。

テスラは高級車の価格帯でEVを導入して富裕層の支持を得つつ、次に普及型のEVを量産・普及させる戦略をとってきました。海外勢では、ジャガーのI-PACEや、ポルシェ・タイカンなど、富裕層をターゲットにしたEVにも注目が集まっています。

一方、日本勢では、トヨタのプリウスPHVが9位、三菱自動車のアウトランダーPHEVが10位。11位にルノーのZoe、12位にBMW530e(PHEV)、という結果になっています。

このデータを見ると、まさにテスラの一人勝ちといった感じですが、テスラはEVだけではなく、自動運転技術やリチウムイオン電池を使った蓄電システムにも力を入れています。新たに開発したのは「Megapack(メガパック)」という、今後も開発が進むとみられる巨大な蓄電施設プロジェクトのためのバッテリーです。このバッテリーシステムは、平常時に発電された余剰電力を蓄え、ピーク時に電力を供給するという機能を持っています。

一方、日本のメーカーも蓄電池分野において幅広い事業展開を進めています。例えば日産は、電気事業を手掛けるニチコンとV2H機器の開発・販売に乗り出しました。三菱自動車も、電気自動車から電気を取り出し100Ⅴの家電製品を利用できるパワーボックスを開発し、1500Wまでの電力供給をできるようにしました。各社とも、自社のEVやPHVの開発・生産だけでなく、蓄電池を活かした様々な製品・サービスの開発・製品化に取り組んでいます。

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