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カーボンプライシングと電力、炭素税が導入されると電気料金は約28%上昇する試算

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カーボンプライシングと電力、炭素税が導入されると電気料金は約28%上昇する試算の写真

環境省では2017年6月より「カーボンプライシングのあり方に関する検討会」が開催されており、様々な方向性について検討が進められています。電力業界に対するカーボンプライシングも検討が進められており、本コラムではその内容について見ていきたいと思います。

カーボンプライシング(炭素の価格付け)と電力

パリ協定の発効を受け、世界は今後、脱炭素社会に向かって移行していくものと見込まれており、日本も2050年80%削減や、その先の脱炭素化に向けて舵を切っていく必要があります。

脱炭素化を実現して経済・社会全体の大きな転換を成し遂げるには、社会の広範囲にわたる炭素の排出に対して価格を付ける「カーボンプライシング(炭素の価格付け)」が果たす役割は大きいと考えられます。

このため、環境省では2017年6月より「カーボンプライシングのあり方に関する検討会」が開催されており、様々な方向性について検討が進められています。電力業界に対するカーボンプライシングも検討が進められており、本コラムではその内容について見ていきたいと思います。

カーボンプライシングの概要

カーボンプライシングには明示的なものと、暗示的なものがあります。明示的カーボンプライシングは、温室効果ガスに対して、その排出量に比例した価格を付ける施策です。明示的カーボンプライシングによって、温室効果ガス排出量に応じた費用負担が発生することで、温室効果ガス排出に伴う社会的費用を「見える化」することが可能となります。

明示的カーボンプライシングは大きく、CO2排出の単位当たり価格を固定する価格アプローチ(例・炭素税)と、数量(CO2排出の上限)を固定する数量アプローチ(例・排出量取引制度)の2つに大別されます(図1)。炭素税の場合は、価格は固定されますが、排出削減量には不確実性があるという特徴があります。一方で排出量取引の場合、排出総量は固定されますが、排出枠価格は変動します。

再エネ普及の政策に置き換えると、炭素税の特徴としては固定価格買取制度に近いものがあり、排出量取引はRPS制度と類似する部分があります。経済理論上は、いずれの手法も同じ効果が得られるとされています。

炭素税と排出量取引制度の特徴

図1 炭素税と排出量取引制度の特徴 出典:環境省

明示的カーボンプライシングに関する学術論文の言及では、Ekins and Barker(2001)によると、炭素税には、CO2排出に伴う私的費用を、温暖化の社会的費用に合致させる効果があるとされています。また、Aldy and Stavins(2012)では、企業や個人の行動を、最もコスト効率的な排出削減、あるいは低炭素技術への投資に導くことができるとされています。

明示的カーボンプライシングは、2016年時点で、約40の国と20以上の地域が導入しています。これらの国や地域は、世界の排出量の約13%をカバーしています。2017年には、中国がパイロット版から全国排出量取引制度に移行し、カバー率は20~25%に拡大する見込みです(図2)。

世界で導入されているカーボンプライシング(2016年時点)

図2 世界で導入されているカーボンプライシング(2016年時点) 出典:環境省

カーボンプライシングの価格水準、2030年までに50~100ドル/tCO2

パリ協定の目標達成に必要となる、インフラや技術への投資を促す明示的な炭素価格のオプション及び水準の検討は、High-Level Commission on Carbon Pricesで進められています。High-Level Commission on Carbon Pricesは、カーボンプライシングの導入を推奨する国や国際機関、企業等の連携枠組みである「カーボンプライシングリーダーシップ連合(CPLC)」により2016年に設置されました。

その提言を整理した最初の報告書である「Report of the High-Level Commission on Carbon Prices」(2017年5月29日発表)によると、パリ協定の気温目標に一致する明示的な炭素価格の水準は、2020年までに少なくとも40~80ドル/tCO2、2030年までに50~100ドル/tCO2とする必要があるとされています。

暗示的カーボンプライシングとは

明示的カーボンプライシングのほかに、暗示的カーボンプライシングがあります。暗示的カーボンプライシングは、消費者や生産者に対し、間接的に排出削減の価格を課すものです(図3)。

OECDは、暗示的カーボンプライシングの代表的な施策として、エネルギー課税、エネルギー消費量や機器等に関する基準や規制等を挙げています。日本における電力施策では、FITや各種補助金などが該当し、例えばFITでは間接的に課される国民負担が問題となっています。

明示的と暗示的な炭素価格について

図3 明示的と暗示的な炭素価格について 出典:環境省

暗示的カーボンプライシングは、炭素比例の負担とならない場合があり、温室効果ガス削減の観点で非効率になるといった課題があります。それは、施策が温室効果ガス排出削減以外の目的で導入されている等の理由により、炭素削減が基準となっていないためです。

理論上は、例えば、エネルギー税の税率を更に石炭が再エネに代替されるよう引き上げるとCO2排出係数は改善します。ただし、明示的炭素価格を活用した場合よりは非効率となります。それは、明示的炭素価格は、理論的では、同一コストで削減量を最大化する各「要素」の組み合わせを誘導することができるからです。

暗示的な手法(エネルギー税、省エネ規制等)では、エネルギー効率など単一要素のみへのアプローチになりますが、明示的な手法では、「活動量」、「エネルギー効率」、「排出係数」といった各要素にアプローチすることが可能となります(図4)。

温室効果ガス排出の各要素

図4 温室効果ガス排出の各要素 出典:環境省

電力業界は「省エネ法」・「高度化法」でCO2削減に対応

電気業界では、平成28年2月に「電気事業低炭素社会協議会」を設立し、電力業界全体での温室効果ガス排出削減に取り組んでいます。協議会における2030年度目標として、使用端の排出係数を0.37kg-CO2/kWh程度とする目標が掲げられています。

排出係数0.37kg-CO2/kWh程度は、政府の長期エネルギー需給見通しで示されたエネルギーミックスから算出される国全体の排出係数であり、2013年度比では▲35%相当と試算されています。

そのような自主目標を持つ電力業界ですが、電気事業連合会が第5回目の「カーボンプライシングのあり方に関する検討会」にて提出した資料によると、新たなカーボンプライシングを課すことは、エネルギーミックスの実現を担保する施策にはならないとされています。

カーボンプライシングの代替となり得る制度として、平成28年2月に経産省・環境省の合意(2月合意)によって「省エネ法」・「高度化法」を用いたルール整備がなされています(図5)。「省エネ法」・「高度化法」の目標水準はいずれもエネルギーミックスに基づいて設定されたものであり、「温室効果ガス26%排出削減(2013年度比)」という目標達成へのプロセスとして実効的な制度といえます。

2月合意に係る市場設計の検討は進行している段階であり、電気事業者としても、各目標水準の達成に向けた検討・取り組みの着手が始まっているところです。そのため、検討会資料によると、まず最初に「2月合意」による取組みを尊重したうえで、エネルギーミックスの見直しを含めた追加的政策措置の必要性を議論すべきとされています。

「省エネ法」・「高度化法」について

図5 「省エネ法」・「高度化法」について 出典:環境省

炭素税を導入した場合は電気料金が約28%上昇するとの試算

大型炭素税を導入するとした場合、一定の前提条件の下、既存の石油石炭税と温暖化対策税を100$/t-CO2に置き換えたケースを想定すると、燃料費としては石炭が136%、LNGは32%、石油が29%上昇します。電気料金における燃料費の割合を4割とすると、電気料金は約28%上昇すると試算されています。

家計への負担という点では、2012年のFIT制度導入以降、賦課金単価の上昇と共に買取費用が増加しています。全体としては、2017年度の買取費用は約2.7兆円、2030年度では約3.7~4.0兆円と見込まれています。標準家庭(300kWh/月)における負担額を試算すると、導入当初(2012年度)は66円/月であるのに対し、2017年度では792円/月と12倍に増大していることになります。

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