東北大学、透明で曲がる太陽電池を開発 、ディスプレイや窓で発電が可能に
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2017年09月22日
一般社団法人エネルギー情報センター
9月21日、東北大学は透明かつフレキシブルな太陽電池の開発に成功したと発表しました。車のフロントガラスやビルの窓、携帯電話ディスプレイの表面、さらには人体の皮膚等あらゆる場所へ太陽電池を設置することが可能となります。
透明で曲がる太陽電池、車のフロントガラスやビルの窓、携帯電話ディスプレイの表面、人体の皮膚等に設置可能
近年、原子オーダーの厚みから構成される二次元シート材料が、次世代のエレクトロニクス用新材料として注目を集めています。二次元シート材料は、グラフェンが2010年のノーベル物理学賞の受賞テーマになったことから有名ですが、金属的な振る舞いを示すため、太陽光発電など半導体への応用は困難とされています。
一方、二次元シートの一種である遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD)は、グラフェンと異なり半導体特性を示すため、太陽電池への応用が期待できます。近年、原子厚の層が作製できることが明らかになり、世界中で研究が進むようになりました。原子オーダーの厚みであるため 90%以上の光を透過する「透明かつフレキシブルな太陽電池」も可能となるポテンシャルがあります。
この様に、TMDは次世代材料として大きな可能性を秘めています。しかし、太陽電池に関する研究では、そのほとんどが基板上に配置したマイクロメートルオーダーの極めて小さなTMD片を使った、「発電の原理実証」に重きを置いた研究が主となっています。
このようにマイクロメートルオーダーの大きさの研究はありますが、実用レベルの大面積デバイスを作成することは極めて困難とされてきました。そのため、大面積化が可能な簡便なTMD太陽電池作製プロセスの開発が非常に大きな問題となっていました。
こうした中、東北大学は透明かつフレキシブルな太陽電池の開発に成功したと発表しました(図1)。これにより、車のフロントガラスやビルの窓、携帯電話ディスプレイの表面、さらには人体の皮膚等あらゆる場所へ太陽電池を設置することが可能となります。
図1 TMDを用いた透明フレキシブル太陽電池 出典:東北大学
0.7%の発電効率、TMD太陽電池の中では世界最高
東北大学の研究グループが注目したのが、ショットキー型太陽電池です。これは、電極とTMDとの間に自発的に形成されるショットキーと呼ばれる電位構造を利用して発電を行うものです。用いる電極の種類と形状を最適化するだけで発電が実現できるシンプルな構造となります。
この様なショットキー型太陽電池を透明なTMDに対して用いた例は存在していなかったため、研究グループにおいてまずは、ショットキー形成に最適な電極種の選定が行われました。通常同種の金属を TMD両端に配置するデバイスが一般的ですが、今回の研究ではTMDの両端に設置する電極の種類を変えた異種金属電極構造が用いられています(図2)。この両端電極対の組合せを様々変化させたところ、両端電極の仕事関数差が大きくなるにつれ、発電効率が向上することが見出だされました。
図2 同種電極と異種電極の概略図と特徴 出典:東北大学
次に、電極の間隔とTMDの配置方法を最適化、電極間隔を短くし、加えてTMDを基板に接触しない架橋型とすることで、発電効率が大幅に向上することが判明しました。その結果、最高で0.7%の発電効率を実現しました。これは同程度の厚みをもつTMD太陽電池の中では世界最高の発電効率です。
大面積化の工夫、シリコン基板にあらかじめパターンニングした電極にTMDを塗布
上記のように、TMDを使って電極種類とデバイス構造を最適化したショットキー型太陽電池で、高い発電効率が得られることが判明しました。次に、研究グループによって、大面積化が着手されました。
シリコン基板にあらかじめパターンニングした電極に、TMDを塗布して太陽電池を作製することで、センチメートルオーダーの基板上でも発電が実現しました。またシリコン基板上に限らず、透明フレキシブルなポリマー基板上でも、同様に発電可能であることが実証されました。
この様に、これまでTMDを利用した太陽電池はマイクロメートルオーダーに限られていましたが、センチメートルオーダーを実現、かつ透明フレキシブルな大面積基板上にも簡便に形成可能であることが実証されました。
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一般社団法人エネルギー情報センター
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