世界初、帆とソーラー発電システムの統合、再エネ発電を船舶に取り入れる
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2017年08月03日
一般社団法人エネルギー情報センター
7月26日、福岡に本社を置くエコマリンパワーが、久福汽船と協力して、船舶用再生可能エネルギーソリューション「Aquarius MRE」の海上試運転の準備を開始したと発表しました。この取り組みにより、硬帆と太陽光発電の統合システムが、世界で初めて搭載されることになります。
海洋運輸における大気汚染の状況
国際海運から排出される温室効果ガスは、そのほとんどがCO2であり、国際海事機関(IMO)の調査によると、2012年の排出量は約8億トンとなります。これは、世界全体から排出されるCO2総排出量の約2.2%であり、ドイツ1国分の排出量に相当します。また、世界経済の成長を背景に、国際海運からのCO2排出量については今後も増大していくと予測されます。
国際海運のCO2排出抑制の国際的枠組みについて、京都議定書では国際海運の適用はありません。しかし、同議定書第2条第2項において、IMOにおいて、GHG排出量の抑制対策を検討することとされています。
IMOの具体的な取組として、燃費規制を導入する海洋汚染防止条約(MARPOL条約)の一部改正が日本主導の下採択され、2013年から規制が開始されました。また、2016年10月に開催された第70回海洋環境保護委員会では、日本主導の下、各船舶の燃料消費実績を「見える化」することで、船舶からの温室効果ガス削減を促すMARPOL条約改正案が採択されました。
また、船舶からの大気汚染防止全般については、1997年において採択されたMARPOL条約により、窒素酸化物や燃料油の硫黄含有率などが規制されることとなりました。そして2008年、第58回海洋環境保護委員会において、これまでの規制内容を大幅に強化する同条約附属書VI改正が正式採択されました。
世界初、帆とソーラー発電システムの統合
このように、船舶のクリーン化が求められる中、各国において様々な取り組みが実施されています。例えばフランスにおいては、2017年4月に再生可能エネルギーと水素だけで世界一周する双胴船「Energy Observer」号の進水式が行われました。
そして2017年7月、福岡に本社を置くエコマリンパワーが、久福汽船と協力して、船舶用再生可能エネルギーソリューション「Aquarius MRE」の海上試運転の準備を開始したと発表しました。
エコマリンパワーは、旅客フェリーや調査船、オイルタンカー、貨物船などの船舶用に、再生可能エネルギーを基にした燃料節約と排ガス低減ソリューションを開発する企業です。船舶用ハイブリッドパワー、コンピューター制御システム、船舶用ソーラーパワー、エネルギー貯蔵ソリューションなどの製品や ソリューションを提供しています。
エコマリンパワーが開発した「Aquarius MRE」により、エコマリンパワー社の特許技術を使用した硬帆と太陽光発電の統合システムが、世界で初めて搭載されることになります。「Aquarius MRE」は、硬帆とソーラーパネル、エネルギー貯蔵モジュール、船舶用コンピューターの先進的な統合システムです。これにより、太陽光や風力といった再生可能エネルギーを船舶に取り入れることを可能にします(図1)。
「Aquarius MRE」の軸は「硬帆」です。この「硬帆」は「Energy Sail」と命名されています。海上試運転で使用されるEnergySailは、寺本鉄工所の工場で製造されます。寺本鉄工所は1980年代にも硬帆の製造に携わっており、高品質の船舶艤装品の製造に関して豊富な実績があります。
図1 「Aquarius MRE」の技術 出典:エコマリンパワー
「Aquarius MRE」においては、推進力を再生可能エネルギーとすることで、燃料消費量の削減、大気汚染の低減、CO2排出量の削減につながります。船の運航中だけではなく、寄港中や停泊中でも再生可能エネルギーによる発電が可能です。
現在、エコマリンはBelgrano船、Nord Gemini船、Bulk Chile船を含む数隻の大型ばら積み貨物船に関するフィージビリティ・スタディを実施しています(図2)。推進力の推定値は、各船舶の運航経路に従って算出され、各船舶に設置可能な太陽光発電の総量が決定されます。
フィージビリティ・スタディ完了後、1隻の船が海上試運転フェーズ用として選ばれます。この海上試運転フェーズでは、約12か月から18か月間、「Aquarius MRE」の全要素が組み込まれる形で評価が行われます。
図2 「Aquarius MRE System」候補船の1つ 出典:エコマリンパワー
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一般社団法人エネルギー情報センター
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