エネルギーデジタル化の最前線 第5回

2022年03月12日

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

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GAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)も参入する現実世界のデータを収集しビジネスに活用しようとしている。それに対して各国はどう対応していくのか?その中でエネルギー利用データはどのような位置づけになるのだろうか?

執筆者:一般社団法人エネルギー情報センター
理事 江田健二

富山県砺波市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア株式会社)に入社。エネルギー/化学産業本部に所属し、電力会社・大手化学メーカ等のプロジェクトに参画。その後、RAUL株式会社を起業。主に環境・エネルギー分野のビジネス推進や企業の社会貢献活動支援を実施。一般社団法人エネルギー情報センター理事、一般社団法人CSRコミュニケーション協会理事、環境省 地域再省蓄エネサービスイノベーション委員会委員等を歴任。

記事出典:書籍『IoT・AI・データを活用した先進事例8社のビジネスモデルを公開 エネルギーデジタル化の最前線2020』(2019年)

かつての1500倍となったエネルギー利用情報

これまでのエネルギー業界において、電気やガスの利用情報は「使用量を計算して、請求書を発行するための情報」と考えられていた。

非常に大まかな単位で管理されていたからである。みなさんも月に一度、検針員(家庭などに訪問し、電気の利用量を目視で確認する人)が、電気やガスの利用量を確認して記録しているのを、見かけたことがあるだろう。確かに、毎月の世帯ごとの利用情報から得られるヒントは、限られている。

そんなエネルギー利用情報の価値をがらりと変えたのは、2015年頃に登場したスマートメーターだ。この新しい機械の出現によって、エネルギー利用情報は格段に細かく、しかも素早く把握することが可能となった。スマートメーターは、各家庭やビル等の30分毎の利用データを電力会社に自動的に送信する。1日の計測は48回(1時間に2回)、1カ月で約1500回。月に1度計測していた時代と比べれば、実に1500倍の詳細な電力利用データが蓄積されていく。30分毎の利用データを活用することで、家庭であれば、「Aさんの家は、普段は何時ごろ起きて、何時ごろ寝ているか?昨日は昼間に人がいたかどうか?」がわかる。

ディスアグリゲーション技術の進化

「1カ月単位から30分単位になったのは、ずいぶんデータが細かくなったとは言えますが、まだまだ粒度が粗いですよね。情報としての活用方法は限定的なのでは?」との指摘もある。確かに30分ごとのデータからわかることは、限られている。そこに登場したのが、「ディスアグリゲーション技術」だ。「ディスアグリゲーション技術」は、30分毎のデータをさらに細分化してくれる。

「ディスアグリゲーション技術」の方法としては、大きく2つある。

ひとつは、スマートメーターから集めた30分単位のデータを活用する方法、もうひとつは名刺サイズの小さな装置を家庭やオフィスに1台設置し、秒単位の電力利用状況を取得し活用する方法だ。

両方とも集めた電力利用データの「波形」を利用する。家電製品は洗濯機やドライヤーなどの種類によって電流の流れ方が異なる。

つまり、秒単位での電力利用の「波形」に特徴がある。ひとつの電力利用データの「波形」を家電製品別に分けていく。そうすることで、家庭やオフィスの中でどの家電製品がいつ利用されているかを分単位や秒単位で把握することができる。家庭の冷蔵庫、洗濯機、給湯器などが「いつどれだけ利用されているか」を解析してくれるのだ。

細かく見ていけば、我が家で「何時何分に洗濯機のスイッチを押したか」さえもわかってしまう。

外出中に自宅でどの家電製品が使われているかが確認できると便利だ。

スマートフォンを見ながら、「小学4年生の息子が学校から帰宅したな。電子レンジを使って、おやつのどら焼きを温めているようだ。おやっ、宿題せずにリビングでテレビを見ているな。ちょっとスマートフォンでメッセージを送ろうかな」と日々の生活に役立てることができる。

企業ならオフィスや工場の中で、どのフロアや部署が「いつどれだけ電力やガスを利用しているか」が把握できる。省エネはもちろん、業務の効率化や働き方改革などにも活用できる。ディスアグリゲーション技術の向上によって、エネルギー利用情報は、「秒単位」「家電単位」で把握できるようになり、活用方法が拡がりつつある。

外出中の行動データも集まる時代に

人の室内の行動だけではない。将来的には、外での人やモノの活動状況の把握にもエネルギー利用情報が活用される。

今後、太陽光発電を中心とした分散型発電が更に普及することで、あらゆるところでエネルギーがつくられる。驚くことに、すでに透明な太陽光パネルが開発されている。コスト面や安全面がクリアされれば、建物や自動車などのすべての窓が太陽光パネルで電気を発電する日が来るだろう。あらゆる場所で発電された電気は、蓄電池や電気自動車に蓄えられ、様々な場所に運ばれる。街のあちこちに点在するエネルギー源は、センサー、IoT機器、通信ネットワークによってリアルタイムに所在地が管理され、利用できるようになる。

近い将来、私たちはスマートフォンやスマートウォッチ、スマートグラス(眼鏡)など複数のIoTデバイスを身に着ける。IoTデバイスが増えれば増えるほど、自宅で充電したり、モバイルバッテリーを持ち歩くことに不便を感じるようになる。2020年代後半には、外出中に街中の充電スポットから無線で充電するようになり、その利用データが自動的に収集される。人だけではない。空を飛ぶドローンや自動で街中を移動する自動運転の車やロボットも外で充電する時代になる。

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