蓄電池×新テクノロジー 第3回

2024年11月16日

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

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蓄電池×新テクノロジーについて第4回に渡ってお伝えしています。前回はドローンに使われている蓄電池についてお伝えしました。今回はIoTと電力・エネルギービジネスの密接な関係についてお伝えします。

執筆者:一般社団法人エネルギー情報センター
理事 江田健二

富山県砺波市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア株式会社)に入社。エネルギー/化学産業本部に所属し、電力会社・大手化学メーカ等のプロジェクトに参画。その後、RAUL株式会社を起業。主に環境・エネルギー分野のビジネス推進や企業の社会貢献活動支援を実施。一般社団法人エネルギー情報センター理事、一般社団法人CSRコミュニケーション協会理事、環境省 地域再省蓄エネサービスイノベーション委員会委員等を歴任。

記事出典:書籍『2時間でわかる 蓄電池ビジネスの未来: ウィズコロナ時代に拡大する20兆円市場に注目せよ!』(2020年)

IoTと電力・エネルギービジネスの密接な関係

IoTはすべてのモノがインターネットとつながることによって、そこから様々な新しいサービスやシステムが生まれ、社会がより快適で便利になるのではと期待されている技術です。IoTとこれからの電力・エネルギー産業には非常に密接な関係があり、これからの電力・エネルギービジネスは、IoT抜きには語れないといっても過言ではありません。

以前、元グーグル米国本社副社長でエネルギー流通事業会社エナリスの村上憲郎会長(当時)とお話ししたとき、村上さんは「電力業界、電力ビジネスは〝最初のIoTの練習場〟です。特にVPP(仮想発電所)はIoTの突破口。インターネットでものを制御するということの先駆けは、この電力システム改革の中で始まるといっても過言ではない。これからの世界経済の覇権を握る上で鍵になるのは間違いなくIoTで、2020年代に必ず乗り込んでくるアップル、アマゾン、グーグル、テスラなどとの戦いは第四次産業革命の戦いになる。この時に日本の中心を担うのが電力業界です」と語っていました。まさにIoTなくして今後の電力業界は語れない、というわけです。

まず、IoTと蓄電池をつなげることによって、蓄電池の制御が可能になります。さらに蓄電池と地域に散在する複数の発電・蓄電設備を束ねてIoTで制御し、一つの発電所のような機能を持たせることで電力網の需給バランスの最適化ができます。

ちなみに国内IoT市場に目を向けてみると、2018年のIoT機器出荷台数実績は、年間約100億台、累計設置台数は300億台に達しています。2025年の予測では、年間200億台強が出荷され、累計設置台数は800億台になるとされています。IoT市場の拡大にともない、蓄電池市場も拡大していくだろうと期待されています。

蓄電池の制御・運用に役立つAI技術

今、大規模な太陽光発電や風力発電などにおいて、蓄電池システムの導入が普及しています。そこで期待されるのがAI技術です。AIを取り入れることで、今まで以上に効率的かつ精度の高い蓄電池システムの制御・運用が可能になります。

一方、電力マネジメントにおけるAIの活用例としては、関西電力の取り組みが挙げられます。関西電力は、ゲーム会社として急成長した DeNAと協力して火力発電所の燃料運用最適化にAIを活用する実証を行っています。この実証で目指しているのは、燃料運用のスケジューリング作業の自動化です。

具体的には、膨大な組み合わせの中から最適なものを探索するAIソリューションを開発し、短時間で燃料運用のスケジュールを自動作成する、というものです。同社はこの実証によって、経験の浅い技術者でも容易に扱うことができる燃料運用最適化システムの開発に目処が立ったと発表しています。

拡大するAI市場の最新動向

AI技術は、画像認識、音声認識、音声合成、言語解析、検索・探索、翻訳など様々な分野で活用され、市場が拡大しています。

国内のAI市場に関する調査レポート「ITR Market View:AI市場2019」によると、2018年度のAI主要6市場の売上金額は199億5000万円で、前年度と比べて53.5%増加しました。どの市場も技術的な進歩に加え、製品やサービスと組み合わせたソリューションが拡大したことで、用途の多様化が進んだことが要因と考えられる、と述べられています。

中でも画像認識市場は、2018年度に最も高い伸びを示しました。画像認識は、製品の外観検査や作業員の安全管理業務をはじめ、最近では道路や橋などの社会インフラ、建造物の保全業務でも活用されています。今後は、顔認証や車両の自動運転においても導入が見込まれています。画像認識に次ぐ伸び率を示すのは、言語解析です。現在はコールセンターでの活用が中心ですが、今後、幅広い分野へ導入が進むと予想されています。

また最近、ITリサーチ会社のMM総研が国内企業2万936社を対象に行なった調査によると、AIの導入を検討している企業は20.1%。業種別の導入率は、金融が12.2%、情報通信が10.0%と、この2業種が先行して導入しており、次いで、エネルギーインフラが6%、製造業5.8%、サービス業5%となっています。

現在、様々な分野でAIの活用が進んでいますが、AI市場は今後も成長を続け、年平均成長率は2018~2023年度で26.5%に達し、2023年度には市場規模は640億円に達すると予測されています。

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