蓄電池×新テクノロジー 第2回
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2024年10月09日
一般社団法人エネルギー情報センター

蓄電池×新テクノロジーについて第4回に渡ってお伝えしています。前回はAI、IoTとエネルギー産業についてお伝えしました。今回はドローンに使われている蓄電池についてお伝えします。
執筆者:一般社団法人エネルギー情報センター
理事 江田健二
富山県砺波市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア株式会社)に入社。エネルギー/化学産業本部に所属し、電力会社・大手化学メーカ等のプロジェクトに参画。その後、RAUL株式会社を起業。主に環境・エネルギー分野のビジネス推進や企業の社会貢献活動支援を実施。一般社団法人エネルギー情報センター理事、一般社団法人CSRコミュニケーション協会理事、環境省 地域再省蓄エネサービスイノベーション委員会委員等を歴任。
記事出典:書籍『2時間でわかる 蓄電池ビジネスの未来: ウィズコロナ時代に拡大する20兆円市場に注目せよ!』(2020年)
ドローンに使われている蓄電池
ドローンのもたらす経済効果は2025年までに、アメリカ国内だけで8兆円を超えると試算されていますが、現在、ドローンの技術開発における大きな課題の一つがバッテリー問題です。バッテリーの性能・容量が飛行時間に大きく関わってくるからです。ドローンは、メーカーによって様々な充電池が使われていますが、現在販売されているドローンの平均的な飛行時間はわずか20分です。
今、代替バッテリーが研究されていますが、一方で注目が集まっているのがここまで何度も出てきたワイヤレス充電です。飛行中にワイヤレス充電できる技術が実用化すれば、ドローンの飛行時間とともに飛行領域が一気に拡大します。また、もっと大型のドローンで人やさらに重い物を乗せて移動できるようになるでしょう。
ちなみに、ドローンのバッテリーに使われている蓄電池はリチウムイオン電池がほとんどですが、一部でリチウムイオン電池の一種であるリチウムポリマー電池も使われています。有害物質が少なく放電も早いというメリットがありますが、高価であることや、外部からの衝撃に弱いなど安全性においてリスクがあるようです。
ドローンは、大きさや用途によって様々なタイプがありますが、ドローンの飛行性能性を左右する重要な課題の一つに、「電池の小型化・軽量化」があります。ドローンの普及拡大は、蓄電池技術の進歩にかかっているといえます。
ドローンビジネス市場の最新動向
日本国内のドローンビジネスの市場規模は、2024年度には5073億円(2018年度の約5.4倍)に達すると見込まれています。ドローンの産業利用が進むことによって、周辺サービス市場も拡大していくでしょう。例えば、バッテリー等の消耗品、定期的なメンテナンス事業、ドローン用の保険などです。
ちなみに2020年1月にラスベガスで開催されたCES(世界最大級のスタートアップイベント)でもドローン関連の出店ブースが注目を集めました。CESを主催するCTA(全米民生技術協会)は、初日の基調講演で、今後注目すべきジャンルの一つに「ドローン」を挙げ、世界銀行とのプロジェクトとしてドローンを活用した発展途上国の支援策を紹介。社会貢献の手段としてドローンが活用されることをアピールしました。
低価格で太陽電池を使って飛ばせる手軽なVTOL(垂直離着陸機)の開発などのアイデアも出てきており、今後のドローン市場の拡大が期待されています。
注目されるドローンの進化形「エア・モビリティ」
空を飛ぶデジタル機器は、今やドローンにとどまりません。最近、急速に研究開発が進み注目されているのが「エア・モビリティ(空飛ぶクルマ)」です。そのタイプや用途によりパッセンジャー・ドローン、フライングカー、エアタクシーとも呼ばれ、近年、世界各国で開発プロジェクトがスタートしています。
空を飛ぶデジタル機器は、今やドローンにとどまりません。最近、急速に研究開発が進み注目されているのが「エア・モビリティ(空飛ぶクルマ)」です。そのタイプや用途によりパッセンジャー・ドローン、フライングカー、エアタクシーとも呼ばれ、近年、世界各国で開発プロジェクトがスタートしています。
エア・モビリティは、当然ながら従来のドローンよりも軽量かつ大容量の蓄電池が必要となります。したがってエア・モビリティの研究開発にともない、蓄電池技術の急速な進歩が期待されます。
エア・モビリティには、都市部における移動時間の短縮、離島や山間部での移動の利便性の向上、緊急搬送や物資輸送の迅速化などの効果が期待されています。日本では政府の「未来投資戦略2018」で、「空飛ぶクルマ」実現に向けた官民協議会がスタートし、ロードマップを策定。実用化に向けて取り組みが進んでいます。
前述のCES2020では、前年に引き続き、大手航空機メーカーBell Helicopter社が、垂直離着陸(VTOL)型航空機タクシーのプロトタイプ機「BELL Nexus」を展示し注目を集めました。6つのプロペラを搭載したBELL Nexusは、最大5人まで搭乗できるそうです。
またウーバーは、「空飛ぶタクシー」(ウーバー・エア)の商業運用スタートを2023年目標に設定しており、テキサス大学やアメリカ陸軍と提携しながら研究開発を進めています。計画が予定通り進めば、2023年にはダラス・フォートワース、ロサンゼルス、ドバイなどで営業運用を開始する予定だそうです。ちなみに同機の巡航速度は時速約240kmから320kmで、1回の充電での航続距離は最大約96kmとのことです。
国内のベンチャー企業もエア・モビリティの分野に参入しており、2020年初頭には、1人乗りエア・モビリティを開発する日本のテトラ・アビエーションが、現在開発中の垂直離着陸航空機(teTra Mk-3E/通称「テトラ3」)に対するアメリカでの試験飛行許可を取得。これによりアメリカ国内でのデモやテスト飛行が可能になり、商用化への道筋が見えてきました。日本企業としては初の許可取得となるテトラ3は、実機体での本格飛行運用試験フェーズに移行するとのこと。
同社は「この航空機の開発を通じて、人が安全に、そして自由に空中を移動する社会を実現する。単に利便性を向上させるだけでなく、人と技術と産業が活発に交流する新しいまちづくりに貢献する」と述べています。
エア・モビリティが実用化され普及が進めば、EVに次いで空飛ぶクルマ用の蓄電池ニーズが一気に高まります。また、エア・モビリティ用の充電スポットや新しい輸送・移動サービスなど周辺サービスも増えていくはずです。エア・モビリティ市場の拡大にともない、蓄電池業界に大きなビジネスチャンスが訪れることは必至でしょう。
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