エネルギーデジタル化の最前線 第4回
| 政策/動向 | 再エネ | IT | モビリティ | 技術/サービス | 金融 |
一般社団法人エネルギー情報センター

GAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)も参入する現実世界のデータを収集しビジネスに活用しようとしている。それに対して各国はどう対応していくのか?その中でエネルギー利用データはどのような位置づけになるのだろうか?
執筆者:一般社団法人エネルギー情報センター
理事 江田健二
富山県砺波市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア株式会社)に入社。エネルギー/化学産業本部に所属し、電力会社・大手化学メーカ等のプロジェクトに参画。その後、RAUL株式会社を起業。主に環境・エネルギー分野のビジネス推進や企業の社会貢献活動支援を実施。一般社団法人エネルギー情報センター理事、一般社団法人CSRコミュニケーション協会理事、環境省 地域再省蓄エネサービスイノベーション委員会委員等を歴任。
記事出典:書籍『IoT・AI・データを活用した先進事例8社のビジネスモデルを公開 エネルギーデジタル化の最前線2020』(2019年)
GAFAに対して各国はどう対応していくのか?
前回のコラムでご紹介したGAFA。彼らが「現実世界」の情報を集めまくっていることに対して、各国政府は警戒している。これから生まれる新しいビジネスマーケットを独占されるわけにはいかないと、各国は自国の強みを活かした方針を立てている。
EUでは、これまでのデータ保護指令から2018年に一般データ保護規則GDPR(General Data Protection Regulationの略)を発行。個人データの保護強化と、個人が自らのデータを管理・利活用できることを促進する方向に法律を改正した。日本でも同様に、総務省が情報銀行という取り組みを始めた。個人が自分の情報を預けて、それを自分のために活用できる仕組みだ。
再びスタートラインを迎える情報ビジネス
「現実世界」の情報収集方法、活用方法、収益化については、未だ成功モデルは確立されていない。各社が模索中であり、一斉にスタートラインに立っている状態と言える。
実は、日本企業にもチャンスがある。普段の生活の中から情報を集めるセンサーテクノロジーやIoT機器は、日本企業の競争力がある分野だからだ。例えば、世界のセンサー種類別の日本企業シェアは非常に大きい。温度、光度、位置などの分野では世界の40~70%近いシェアを占めるものもある。こうしたIoTデバイスの分野で日本の高いシェアを活かして市場を拡げていく可能性が見えている。
私は、日本のエネルギー業界も非常に大きな役割を担っていると考える。なぜならば、「現実世界」の中で、エネルギー業界がリーチできる情報は、利用価値の高いもののひとつだからだ。例えば、ある人が電気やガスをどれだけ利用したかという情報もそのひとつだ。人が朝起きてからの行動を取り上げれば、「トイレを使う」「シャワーを浴びる」「お湯を沸かしてコーヒーを入れる」といった一連の動作の中に、エネルギー(電気やガス)のスイッチをオン・オフが含まれている。
このエネルギーのオン・オフの情報こそ、人の暮らし、行動そのものを表した情報だ。テクノロジーの進化によって、エネルギー利用情報が自動的にかつ大量にデジタル化される未来で、エネルギー業界はこれまでにないビジネスチャンスを迎えるだろう。そこで、エネルギー利用情報を使った新たなビジネスの可能性について、具体的に紹介する。
エネルギー×AIソリューション開発
ここ数年で、エネルギー業界での情報を活用する動きはすでに活発化している。特に、エネルギーを生み出す、または送り出す現場における「現実世界」の情報は、年々精度があがり、その活用範囲を広げている。
発電所や送電網などの施設は、センサーやIoT機器、カメラを設置し情報を収集している。集めた情報をクラウドコンピューターに集約し、AIなどで分析する。そうすることで、運用の効率化、予防や故障検知などに役立てている。
例えば、関西電力はゲーム会社として急成長したDeNA(ディーエヌエー)と協力して、火力発電所の燃料運用最適化にAIを活用する実証を開始した。この実証で、燃料運用のスケジューリング作業の自動化を目指している。具体的には、膨大な組合せの中から最適なものを探索するAIソリューションを開発し、短時間で燃料運用のスケジュールを自動作成する。同社は、経験の浅い技術者でも容易に扱うことができる燃料運用最適化システムの開発に目途が立ったと発表している。
太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーの分野でも発電場所の選定や発電後の効率的な運用に天候データや近隣の発電所の発電実績などを活用している。その他には、災害で故障した電柱や計器の状況把握にセンサーやカメラを活用し、早期復旧を目指す取り組みも進んでいる。
情報の活用による発電・送電施設の運営コストの削減は、家庭や企業に販売するエネルギーコストの低減につながる。情報の有効な活用方法であり、これからも一層の活用が望まれる。
もうひとつのビジネスチャンス
私がエネルギー業界において、もうひとつの大きなビジネスチャンスとして注目するのは、家庭や企業での電気やガスなどの利用情報を活用した分野だ。エネルギー利用情報は、これから「現実世界」で集められる情報の中で、人の生活そのものを映しだすという重要な役割を担う。これまでインターネットの普及と共に集められてきた情報は、ホームページの閲覧履歴やショッピングサイトでの購入履歴、年収や貯蓄額など、人の特定の行動履歴や、属性情報が中心であった。
この続きを読むには会員登録(無料)が必要です。
無料会員になると閲覧することができる情報はこちらです
執筆者情報
一般社団法人エネルギー情報センター
EICは、①エネルギーに関する正しい情報を客観的にわかりやすく広くつたえること②ICTとエネルギーを融合させた新たなビジネスを創造すること、に関わる活動を通じて、安定したエネルギーの供給の一助になることを目的として設立された新電力ネットの運営団体。
| 企業・団体名 | 一般社団法人エネルギー情報センター |
|---|---|
| 所在地 |
〒160-0022 東京都新宿区新宿2丁目9−22 多摩川新宿ビル3F |
| 電話番号 | 03-6411-0859 |
| 会社HP | http://eic-jp.org/ |
| サービス・メディア等 |
https://www.facebook.com/eicjp
https://twitter.com/EICNET |
関連する記事はこちら
一般社団法人エネルギー情報センター
2026年03月18日
第3回は、第2回で整理した前提を受けて、データセンターが実際に直面する「調達・運用設計」を取り上げます。需要の適地が見え始めても、kWhと、環境価値と調整力を、運用まで含めて矛盾なく束ね、投資判断と工期を止めない形に落とし込めるかです。
一般社団法人エネルギー情報センター
2026年03月06日
系統用蓄電池は、いつから「前提」になったのか 【第2回】立場ごとの時間軸と評価軸
前回は、系統用蓄電池が議論の「前提」として扱われるようになった背景を、三つの流れの合流として整理しました。制度が整い、コストが下がり、再エネの導入量が増えた。その重なりが、蓄電池を自然に検討の出発点に置く状況を形作っています。 ただ、同じ前提を共有しているはずの場で、同じ対象を扱いながら議論の焦点が重ならない場面が見受けられます。情報量が増え、関係者が増え、検討が深まるほど、情報の整理に要する前提条件が増えるという感覚を持つ担当者も少なくありません。 今回は、その背景にある構造を取り上げます。
一般社団法人エネルギー情報センター
2026年02月26日
系統用蓄電池は、いつから「前提」になったのか【第1回】前提化が生まれた三つの流れ
ここ数年、系統用蓄電池という言葉が特別なテーマとしてではなく、電力分野の議論の中で自然に登場する場面が目立つようになりました。再エネ拡大や需給調整、市場制度、投資環境など、異なるテーマを扱う会議や資料の中で、蓄電池が前提として語られること自体、もはや珍しくありません。 議論の入り口は補助金、価格差、市場、系統運用などさまざまですが、気づけば、かつて導入の是非や実証が主題だった蓄電池は、最初から存在する前提条件のように扱われ始めています。 本稿では、この前提化を形作っている要素の重なりを並べながら、背景を見つめ直すところから始めます。
一般社団法人エネルギー情報センター
2026年02月19日
第2回は、第1回で揃えた前提で、GX戦略地域が目指す官民の工程表を揃える仕組みを整理しつつ、各ステークホルダーの実務の論点まで言及して行きます。
一般社団法人エネルギー情報センター
2026年01月12日
【第1回】AIデータセンター時代のシステム設計:ワット・ビット連携、GX戦略地域、PPA・電源ポートフォリオの実務論点
データセンターは、地域の電力インフラ設計を左右する存在へと変わりつつあります。背景には、需要施設の増加や、高負荷率・増設前提という運用特性に加え、脱炭素の要件も加わり、結果として、電力の「量」だけでなく「確実性」と「環境価値」が事業の成否を分ける事が挙げられます。
こうした状況の中で、日本でも制度設計が大きく動いています。具体的には、系統用蓄電池における系統容量の「空押さえ」問題に対して規律強化が議論される一方、国としてはワット(電力)とビット(通信)を一体で整備する「ワット・ビット連携」を掲げ、自治体誘致やインフラ整備を含めた「GX戦略地域」等の枠組みで、望ましい立地へ需要を誘導しようとしています。さらに、需要家側では、脱炭素要請の高まりを受けて、PPAなどを通じた環境価値の調達や、電源ポートフォリオ(再エネ+調整力+バックアップ等)をどう設計するかが、契約論を超えて運用設計のテーマになっています。
本シリーズでは「AIデータセンター時代のシステム設計」を、①ワット・ビット連携、②GX戦略地域、③PPA・電源ポートフォリオの実務論点――という3つの観点から、全3回で整理します。日本の最新の制度設計と接続して、実装するなら何が論点になるかに焦点を当てるのが狙いです。







