デマンドレスポンスの費用対効果を最大化、制御技術を新開発、北大など3大学が発表
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2019年06月11日
一般社団法人エネルギー情報センター
北海道大学、名古屋大学および東京理科大学は、発電コストの1日の変動に着目したデマンドレスポンスの解析・制御技術を開発したと発表しました。各大学の発表によると、この制御技術は、デマンドレスポンスの費用対効果を最大化するためのものであり、1日の発電コストと需要の予測に基づき、最適な電力使用量を求めることができるとしています。
これまで不透明であったデマンドレスポンスの経済性
近年、電力自由化や電力使用量を可視化するスマートメーターの普及を背景に、エネルギー管理システムの研究が進んでいます。エネルギー管理システムが発展することにより、電力系統の安定性が増すことで、再エネの一層の普及が期待されています。
こうしたエネルギー管理システムの1つの方法として、デマンドレスポンスが挙げられます。デマンドレスポンスとは、「需給ひっ迫時に、電気料金価格の設定またはインセンティブ(報酬)の支払いに応じて、需要家が電力の使用を抑制し電力消費パターンを変化させること」と定義されています。
ただ、これまでのデマンドレスポンスの主目的は需給バランスの維持であり、系統全体としての経済性向上が実現できるのか、不確かな部分がありました。国際的にも以前から検討され続けているものの、社会全体の費用対効果が明らかでなく、現時点では大規模な導入が進んでいません。
しかしながら、より一層のデマンドレスポンスの普及を目指すには、新たな制御技術を開発し、経済的価値を最大化することが求められます。こうした中、北海道大学、名古屋大学および東京理科大学は、発電コストの1日の変動に着目したデマンドレスポンスの解析・制御技術を開発したと発表しました。
各大学の発表によると、この制御技術は、デマンドレスポンスの費用対効果を最大化するためのものであり、1日の発電コストと需要の予測に基づき、最適な電力使用量を求めることができるようになるとしています。
発電コストの最高値と最安値の差が調整コストの2倍以上で経済的価値が発生
デマンドレスポンスが経済的価値を生むには、発電コストの単価が1日の中で大きく変動することが必要となります。つまり、調整コストと比較して、発電コストの最高値と最安値の差が大きいほど、デマンドレスポンスが経済的価値を生みます。
このため、1日の中でも、電力の需要や供給の状況に応じて、デマンドレスポンスの費用対効果は変動します。なお、再エネが普及するとさらに時間帯ごとの価格変動が大きくなると予想されます。
デマンドレスポンスの経済性を計測するには、時刻ごとの価値を評価する必要があります。この点、今回の研究では、より具体的に「発電コストの最高値と最安値の差が調整コストの2倍以上であれば、デマンドレスポンスは経済的価値を生む」という条件が導き出されています。
なお、提案手法の有効性はシミュレーションによって示されています。日本卸電力取引所のデータ(2017年9月)を、発電コストと電力使用量の予測値として利用することで、ピークシフトにより経済的価値が得られることが試算されています(図2)。
ピークシフトでは、電力使用量をある時間で下げた分、別の時間で上げる必要があります。そのため、今回の研究は、調整コストが2回かかることを条件として検証されています。シンプルな条件なので、デマンドレスポンスの際の需要家への報酬を算出する指針に使うこともできます。
今回の研究では、経済的価値を最大化するために、将来の振る舞いを予測して現時刻の最適な制御方策を決定する「モデル予測制御」と呼ばれる手法が用いられています。この手法では、発電コストと電力使用量の予測、および過去の電力使用量の実績に基づき、現在の最適な電力使用量を求めます。
結果として、発電コストと調整コストの両方を考慮したデマンドレスポンスの制御技術が開発されました。発表によると、需要家に大きな負担を課さない範囲で、経済的価値を最大化する電力使用量を求めることができるとしています。
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一般社団法人エネルギー情報センター
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