ペロブスカイト太陽電池の課題解決と今後の展望
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一般社団法人エネルギー情報センター

前編では、ペロブスカイト太陽電池の基本的な特徴やそのメリットについて紹介しました。今回は、性能の安定性や材料に含まれる鉛の問題、エネルギー変換効率などの課題に対する最新の解決策や企業の取り組みを交えて解説します。
課題1: 性能が安定しない
ペロブスカイト太陽電池は、外部環境に敏感で、湿気や酸素、紫外線などの影響を受けやすいため、長期間にわたる安定した性能が課題です。湿気にさらされるとペロブスカイト層が分解し、発電効率が低下するため、屋外での長期利用には不安が残ります。
この課題を解決するため、積極的に取り組んでいるのが企業や研究機関です。たとえば、積水化学工業や東芝は、特殊な保護膜技術を開発し、湿気や酸素からペロブスカイト層を保護することで、太陽電池の耐久性を大幅に向上させることを目指しています。また、パナソニックホールディングスは、封止技術の改良に取り組んでおり、屋外での長期使用を可能にする耐久性の高いペロブスカイト太陽電池の商業化を目指しています。

政府施設におけるペロブスカイト太陽電池の率先導入に向けて 出典:環境省
さらに、国立研究開発法人 産業技術総合研究所(産総研)は、世界初となるペロブスカイト太陽電池自動作製システムを開発しました。このシステムは、基板電極の洗浄からペロブスカイト層やその他の層の積層、セルの分離までを全自動で行うものです。自動化により、研究者による作業誤差を排除し、太陽電池の性能ばらつきを抑制するとともに、最適な作製条件の探索を効率的に進められるようになりました。これにより、ペロブスカイト太陽電池の開発時間が短縮され、早期の実用化と高性能化が期待されています。

世界初となるペロブスカイト太陽電池自動作製システムを開発 出典:産総研
課題2: 材料に含まれる鉛の問題と環境への影響
ペロブスカイト太陽電池には、鉛や臭素などの有害物質が含まれており、これが環境リスクを引き起こす可能性があります。鉛は発電効率を高めるために重要な役割を果たしていますが、廃棄や製造時に適切に処理されないと、環境汚染や人体への悪影響が懸念されます。これらの有害物質は、正しい方法で処理される必要があり、実効性のある適切な処理方法を確立することが重要な課題です。
もし、産業廃棄物業者が太陽光パネルを不適切に処理すると、有害物質が漏出し、土壌や水質を汚染する可能性があります。実際に、環境省が全国122社の撤去解体事業者に対して行ったアンケート調査では、「処理先を増やしてほしい」「処理費用が高く発注者の負担が大きい」といった要望が挙げられています。このように、処理施設や適切な処理業者の整備、そして費用面での問題が解決されなければ、適切な廃棄処理が難しい現状があります。
また、ペロブスカイト太陽電池は複数の層で構成されており、すべての層を分離して有害物質を回収しなければならないため、廃棄やリサイクルのプロセスが複雑で手間がかかります。このことが、リサイクルの課題となっており、今後の技術的な進展が求められています。
このように、鉛や臭素などの有害物質が含まれているペロブスカイト太陽電池は、環境面でのリスクを軽減するため、適切な処理技術やリサイクルの仕組みを整備することが重要な課題となっています。
課題3: エネルギー変換効率の開発途上
ペロブスカイト太陽電池のエネルギー変換効率は急速に向上していますが、商業化に向けた課題は残っています。現在、実験室レベルではシリコン型太陽電池を上回る効率が達成されていますが、実際の使用環境でこの高効率を長期間維持するには、製造プロセスのばらつきや長期的な安定性の課題が解決される必要があります。
今後の展望と実用化への道
ペロブスカイト太陽電池の普及に向けた技術革新は、今後さらに加速することが期待されています。日本政府は2050年カーボンニュートラルの達成に向け、再生可能エネルギーの普及を推進しており、ペロブスカイト太陽電池もその重要な技術として注目されています。福島県での実証実験や、企業の技術開発の進展は、太陽電池の商業化に向けた重要なステップとなるでしょう。
さらに、世界各国でもペロブスカイト太陽電池の導入に向けた取り組みが進行中です。ヨーロッパやアジアでは、工場やビルの壁面、自動車などへの設置が進んでおり、発電の場所を大幅に広げる可能性があります。
まとめ
ペロブスカイト太陽電池は、次世代のエネルギー源として大きな可能性を秘めています。企業や研究機関による技術開発が進むことで、耐久性の向上や有害物質の問題が解決されれば、持続可能なエネルギー社会への移行が加速するでしょう。しかし、現時点では耐久性の課題や鉛を含む材料の環境リスク、そしてエネルギー変換効率のばらつきといったデメリットも残されています。これらの課題が克服されることで、ペロブスカイト太陽電池は再生可能エネルギーの主力技術として普及することが期待されます。
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