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エネルギーデジタル化の最前線 第18回

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幅広いIoT機器に対応するプラットフォームを提供。AIによる電力と生活環境データ解析をもとに、お客様にあわせた独自のサービスを開発。ソフトバンクグループのベンチャー企業を紹介する。

執筆者:一般社団法人エネルギー情報センター
理事 江田健二

富山県砺波市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア株式会社)に入社。エネルギー/化学産業本部に所属し、電力会社・大手化学メーカ等のプロジェクトに参画。その後、RAUL株式会社を起業。主に環境・エネルギー分野のビジネス推進や企業の社会貢献活動支援を実施。一般社団法人エネルギー情報センター理事、一般社団法人CSRコミュニケーション協会理事、環境省 地域再省蓄エネサービスイノベーション委員会委員等を歴任。

記事出典:書籍『IoT・AI・データを活用した先進事例8社のビジネスモデルを公開 エネルギーデジタル化の最前線2020』(2019年)

エンコアードは2016年に設立した気鋭の事業者だ。資本の50.1%をソフトバンクが保有し、SBパワーなどソフトバンクグループとのシナジーも見込む。エンコアードの強みは上流から下流までを一気通貫で持つことだ。これにより、製品・サービスの展開スピードとフレキシビリティを両立している。エンコアードのIoTサービスの特徴の一つは、電気に関する情報を収集・利用しつつも、宅内温度や扉の動作など居住者の動線に関するサービスを展開している点だ。IoTセンサーの多様な組み合わせにより、これまでにない新しいサービスの創出を狙っている。

米国、韓国で実績の高いエンコアードにソフトバンクが出資、JVを設立

ソフトバンクは2016年4月の電力小売全面自由化を契機に、グループ傘下のSBパワーを通じて家庭向け電力小売事業を開始。

その後もエネルギー起点の新サービスを開発するため、パートナー候補を検討していた。国内だけでなく米国や欧州など海外企業も候補に入れ、検討を重ねた結果、米国、韓国をはじめグローバルで10万世帯以上にエネルギーデータを使ったプラットフォームサービスを展開するエンコアード(Encored, Inc.)が最も適すると判断。エンコアードもソフトバンクが出資を行うことで共同展開することに合意、エンコアードジャパンの設立に至った(以下エンコアードジャパンをエンコアードとして表記)。

エンコアードは、株式の50.1%をソフトバンクが取得する、同社のグループ会社だ。エネルギーIoT/ビッグデータ関連製品・ソフトウェア及びサービスの開発・販売・輸出入を主な事業内容とする。組織体制は、ソフトバンクから出向、または兼務する社員が業務にあたっている。前述のSBパワーはエンコアードの事業とシナジーが見込めるため、「2社が共同で事業を進められる利点がある」と中野氏は語る。

強みは上流から下流まで一気通貫できる組織体制

エンコアードは自社グループでプロダクトやアプリの企画から設計、開発、さらに販売まで手掛けることができる。いわば生産の上流から下流まで一気通貫できることが同社の強みである。特に、販売においてはソフトバンクが有するセールスチャネルを活用できる。

パートナーやエンドユーザーである家庭のニーズをすくい上げるだけでなく、ニーズに応じたサービスやアプリを、ノンストップで迅速に、且つミニマムコストで開発することができる。電力情報分離技術、電力使用量推定技術、電力情報をもとにユーザカスタマイズされた広告を提供するシステムなど多数の特許を保有。また、アプリ上で手軽に参加可能なコンシューマ向けのデマンドレスポンスシステムも特許を出願している状況である。独自のAIを用いて、蓄積した家庭内のビッグデータを解析し、サービスを進化し続けることができる。

電力使用量センサーと生活環境センサーでデータを収集し、アプリを通じて情報を提供

家庭には、標準サービスとして、節電アドバイス、家電コントローラーを用いた最適制御、家族の在宅確認ができる安心サポート、簡易セキュリティを提供する。

まず、家庭内に電力データを計測する「エネトーク」と、1台で温度、湿度、照度、加速度を測ることができるセンサー「エネトーク タッチ」を設置する。エネトークは分電盤内に設置し、1秒単位で電力データを取得する機能を持つ(設置には第2種電気工事士以上の資格が必要)。

エネトークタッチは、玄関ドアや浴室ドア、窓、トイレドアなど様々な場所に設置することができる。エネトークから取得した電力データやエネトークタッチから得られた各種データを解析した情報を表示するのがエネトークアプリだ。精度の高い電力データや生活環境データを掛け合わせることで、家電使用状況や生活パターンを予測し、多様なサービスを提供してくれる。

IoTセンサーの多様な組み合わせで、これまでにない新しいサービスが生まれる

エネトークタッチは自由に追加し、自由に組み合わせることができる。つまり、新しい使い方や新しいサービスを生み出すことができる。

しかも同じアプリ上で動かせるため拡張性が高い上に使い勝手がよい。これは差別化要素になるだろう。たとえば、エネトークタッチを使うことで玄関ドアの開閉がわかる。家族が帰宅した際にメールやプッシュ通知するよう設定しておけば、気がかりな家族の帰宅確認を遠方にいてもメールやプッシュ通知で確認することができる。ここに電力使用量が判るエネトークを組み合わせることで、在宅しているかどうか、電気を使っているかどうかがリアルタイムで判る。

こうしたきめ細かな見える化は、子供を持つ家族や、一人暮らしの高齢者の親を持つ家庭には嬉しいサービスだろう。実際、子供のいる社員の多くが、自社のサービスを使って便利さを実感しているという。

新しいサービスを次々と展開し続ける

エンコアードでは日々新しいサービスを創り続けている。最新機能であるデマンドレスポンス(DR)は、パートナー(事業者)さまが電力需要の抑制を促したい時間帯に、スマートフォンアプリを通じてユーザーへ節電要請可能な「事業者DR」とユーザー自らが節電日時を事前予約する「マイDR」を機能が実装されている。(2018年11月現在特許出願中)
このDR機能は、節電量に応じて付与されるポイントを貯めて賞品等に交換できるサービスなど、パートナー(事業者)さまが自社のサービス拡充に活用できる仕組みを提供する。

また家庭内の温湿度データをもとにした熱中症予防通知サービスを進化させ、家庭内の2点間の温度を計測・比較したヒートショック検知機能を追加した。このヒートショック検知機能は、ある住宅メーカーのお客様から「こんなことできない?」といったリクエストをもとに作ったという。

まさに、企画から生産・販売まで一気通貫できる強みを活かして作られたサービスだ。さらには、利用者がアプリ上で機能を選択すると、登録家庭に専門スタッフが駆けつけ、自宅の様子を外部から確認することができるという、駆けつけサービスも提供を開始している。
これもお客様の声から生まれたものだ。

サービスの特徴を見ていて気が付くのは、電気をベースとしながらも必ずしも電気に特化していない点だ。電力データは家庭のベースとなる情報として取得しつつも、生活環境データや人の動きに関するデータに幅広く対応することで、「家の中のあらゆるサービスを提供していくプラットフォームになっていく。生活全般をサポートするアプリのイメージに近い」と中野氏は話す。

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EICは、①エネルギーに関する正しい情報を客観的にわかりやすく広くつたえること②ICTとエネルギーを融合させた新たなビジネスを創造すること、に関わる活動を通じて、安定したエネルギーの供給の一助になることを目的として設立された新電力ネットの運営団体。

企業・団体名 一般社団法人エネルギー情報センター
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