エネルギーデジタル化の最前線 第16回
一般社団法人エネルギー情報センター

通信とライフデザインの融合を掲げ、顧客視点に立ったサービス開発とビッグデータ分析技術により、便利で楽しく使い続けられるアプリを実現。KDDIの取り組みを紹介する。
執筆者:一般社団法人エネルギー情報センター
理事 江田健二
富山県砺波市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア株式会社)に入社。エネルギー/化学産業本部に所属し、電力会社・大手化学メーカ等のプロジェクトに参画。その後、RAUL株式会社を起業。主に環境・エネルギー分野のビジネス推進や企業の社会貢献活動支援を実施。一般社団法人エネルギー情報センター理事、一般社団法人CSRコミュニケーション協会理事、環境省 地域再省蓄エネサービスイノベーション委員会委員等を歴任。
記事出典:書籍『IoT・AI・データを活用した先進事例8社のビジネスモデルを公開 エネルギーデジタル化の最前線2020』(2019年)
概要
KDDIは、2016年4月の家庭向け電力小売自由化にあわせて全国を対象としてエネルギー事業へ参入した。参入当初から全国を対象に事業を展開したことは異例だ。同社が展開するauでんきの特徴は、特典とアプリを通じた付帯サービスにある。特典として利用料金にあわせてポイントが付与され、同社の総合通販サイトで使うことができる。
アプリ開発においては徹底した顧客視点と対応のスピードを重視している。アプリではスマートメーターデータを活用して前日の電力使用量が見えることに加えて、IoT機器を新たに設置することなく家電別の消費内訳も見ることができる。アプリを継続的に使用してもらうための仕組みにはガチャを取り入れ、通常の倍のアクセス数を実現している。今後は蓄電池やauHOMEとの連携を図っていく方針だ。
通信業界からのエネルギービジネスへの参入
2016年4月の電力小売り全面自由化をきっかけに、さまざまな企業が電力事業に参入する中、KDDIは、当初から全国規模で事業を開始したことで多くの注目を集めた。というのも、ほとんどの新電力が首都圏や東名阪などエリア限定的に開始していたからである。
この点について、同社のライフデザイン事業本部 エネルギービジネス本部エネルギービジネス企画部長の都築氏は、「KDDIは主軸の通信事業がすでに全国一律でサービスを展開しているため、エネルギーだけをエリア限定にすることは考えられなかった」と振り返る。
同社は「通信とライフデザインの融合」という方針のもと、金融やコマースなどと並んで、エネルギーを構成要素のひとつと位置付けて展開。エネルギービジネスの参入にあたっては、事業基盤であるICTを活用した、より効率的で、より利便性の高いエネルギーサービスの提供、ならびに、お客様の新たなライフスタイルの創造を目標に掲げている。
同社の電力事業は大きく2つのモデルがある。ひとつは、関西、中国、北陸、中部における一般電気事業者と連携した「協業モデル(いわゆる代理モデル)」。もうひとつは、自社の「小売電気事業者(PPS)モデル」である。後者の事業展開においては、KDDIが資本を入れる新電力会社のエナリスにて需給調整を担っているところが特徴的だ。販売はサービス仕立ても含めて一律で「auでんき」ブランドとして展開。電気新聞が2018年6月に公表した新電力販売量ランキングでは、低圧分野において同社は全国で2位にランクインしている。
auでんきの特徴
家庭部門を対象にした低圧分野の料金プランは、MプランとLプランの2本立てだ。Mプランが従量電灯B、Lプランが従量電灯Cに該当する(東京電力エリアの場合)。エリアに応じて一般電気事業者の料金プランと同額に設定し、そこにKDDIならではの「お得」を上乗せして需要家にメリットを提供している。もちろん、その「お得」はauの通信利用の契約者であれば、大きくメリットを享受できる。
具体的なauでんきの特典は、毎月の利用料金に応じて最大5%相当分を「WALLETポイント」で還元すること。還元率は、月の電力料金が4,999円までは1%だが、5,000円~7,999円においては3%、8,000円以上では5%と段階を分けている。貯まったポイントの使い方は、auショップでスマートフォンの機種変更や通信利用料金への還元もでき、また、現在KDDIが力を入れている総合通販サイト「Wowma!」での買い物に使うこともできる。
小売事業を開始した当初の特典は、au WALLET プリペイドカードへのキャッシュバックであったが、2018年度から全面的にポイント還元へ変更した。「ポイントと聞くと少し価値が下がるような印象が昔はあったと思うが、ポイントの利用用途はだいぶかわってきている。ポイントは利用方法の選択肢に拡張性があるため、お客様にはお得を感じていただいている。」と都築氏は利用者からの反応に手ごたえを認識している。
アプリに「相当」なこだわり
KDDIが他社との差別化と位置付けているのは顧客接点となるauでんきアプリだ。付加価値を高めるべく、利用者から飽きられたと想定されるコンテンツについては率直に入れ替えている。同社内では、この入れ替えをあえて「進化させる」と表現する。
本来の電力小売事業におけるアプリとしての基本性能はもちろん充実させている。スマートメーターからあがってくる前日の電力利用量はもちろん、週・月・年という単位も瞬時に表示させることができる。また、設定画面で家電を登録すれば、家電別の消費内訳も閲覧が可能だ。登録可能な家電は、冷蔵庫、エアコン、テレビ、照明、温水洗浄機、洗濯機の6種類だ。
ここまでは他社のアプリでも可能な機能だが、特筆すべきは分析機能である。電気利用料については、利用者と同じような属性と比べて、平均的な使用量なのか、または使いすぎなのかを把握することができ、省エネを促進することができる。この比較世帯のデータはモデル家庭として算出したものではなく、利用者と近いエリアに居住している、世帯構成や家の間取りが近い世帯を比較として表示するため、納得度が高い。
また、家電別の消費内訳データからは、買い替えシミュレーションができる。たとえば10年前から使用しているエアコンであれば、最新モデルはどのくらい性能が向上しているかを示し、あわせてWowma!のクーポンを利用者に提供することで、購入につなげる流れを作っている。
これらの分析の背景には、KDDI総合研究所が長年取り組んできたビッグデータ解析技術とノウハウが詰め込まれている。実際、契約者に対するアプリ利用率は、一般的な他アプリと比較しても高い水準にあるという。
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