静岡県で農業用水を利用した小水力発電、一般家庭約600戸分の電力を発電

2016年05月05日

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

静岡県で農業用水を利用した小水力発電、一般家庭約600戸分の電力を発電の写真

5月2日、静岡県は小水力発電所2ヶ所が完成したため、開所式を行うと発表しました。農業用水を活用した小水力発電では、県営としては初めて事業化された内容となります。(一般社団法人エネルギー情報センター 新電力ネット運営事務局)

農業用水で小水力発電、最大出力は2ヶ所で約310kW

今回完成した小水力発電は、大井川右岸地域3512haの田畑を潤す大井川用水を活用したものであり、西方及び伊達方発電所の2ヶ所となります。農業用水を活用した小水力発電では、県営としては初めて事業化されたものです。

この小水力発電による電力収益は、水利施設の光熱費や点検・補修費等に充当され、施設の維持管理費の負担軽減が図られます。この負担軽減により、農業用水を管理する土地改良区の体質強化が図られ、多彩な農産物を産出する本地域の農業のさらなる発展に寄与します(図1)。

大井川用水地区の営農状況

図1 大井川用水地区の営農状況概要 出典:一般社団法人農業農村整備情報総合センター

今回完成した2ヶ所の小水力発電所により、年間約200万kWhが発電されます。この電力量は、一般家庭約600戸分の年間消費電力量を賄える規模となります(表1)。

小水力発電は純国産の再生可能エネルギーであり、発電の際に二酸化炭素が発生しないクリーンエネルギーです。持続可能な社会の構築に寄与するとともに、静岡県の進める「エネルギーの地産地消」推進にも貢献する発電方法であるといえます。

西方発電所 伊達方発電所
所在地 菊川市西方 掛川市伊達方
使用水量 1.8~4.8m3/s 1.7~4.7m3/s
水車形式 水中タービン水車 水中タービン水車
出力(最大/常時) 169KW/33KW 142KW/30KW
年間可能発電量 105.1万KWH 90.6万KWH
事業期間 平成25年~平成28年 平成25年~平成28年

表1 小水力発電所2ヶ所の概要 出典:静岡県

5月23日に小水力発電所の開所式を開催

5月23日の10時から、西方発電所敷地内において開所式が開催される予定です(図2)。主催は農家の人たちでつくられた組織である大井川右岸土地改良区、協賛は省エネルギー・環境対応商材を展開する静岡の総合商社である鈴与商事株式会社となります(表2)。

日時 平成28年5月23日(月)10:00~
場所 菊川市西方(西方発電所敷地内)
主催 大井川右岸土地改良区
協賛 鈴与商事(株)
来賓 静岡県知事、関東農政局長ほか

表2 開所式の概要 出典:静岡県

発電所の立地

図2 発電所の立地・開所式の開催場所 出典:静岡県

国営では大井川用水を活用した小水力発電が平成25年に稼働

「箱根八里は馬でも越すが越すに越されぬ大井川」と馬子唄に唄われた大井川は、南アルプス白根間ノ岳(3189m)に源を発し駿河湾に流入する流路延長186km、流域面積1280km2の急流河川です。この大井川用水は、日本を代表する用水のひとつとして、農林水産省の疏水百選に選定されており、周辺は農業の盛んな大地が広がっています。農業用水の確保などに必要な基幹水利施設は、昭和22年度から43年度にかけて実施された「国営大井川農業水利事業」により整備されました。

この「国営大井川農業水利事業」が完了し約40年が経過した頃、施設の老朽化による機能低下などが生じてきました。そのため、新たに「国営大井川用水農業水利事業」が平成11年度に着工されました。この事業の中で、土地改良施設の維持管理費の低減を図るため、用水路(落差工)の改修にあわせ小水力発電所が建設されました。平成23年8月から建設が行われ、平成25年6月に完成、同年7月より本格稼働しています(図3)。

建設された小水力発電所は年間で約430万kWhの発電量となります。この発電量は、一般家庭約1200戸分となります。また、CO2の削減効果は約2.2千トン/年であり、約16万本の杉が吸収する量と同等となります(表3)。

所在地 島田市伊太
最大出力 893kWh
年間発生可能電力量 約 430万kwh
CO2排出削減効果 約2.2千トン/年
発電方式 流れ込み式(水路式)
使用水量 最大17m3/s
落差 約7m
水車形式 プロペラ水車(S形チューブラ水車)
工事工期 平成23年8月~平成25年6月

表3 国営大井川用水農業水利事業における小水力発電の概要 出典:静岡県

伊太発電所の特徴
  1. 発電水利権はかんがい用水水利権の完全従属
  2. 非かんがい期水量がかんがい期の約4割と比較的多い
  3. 水路本線に発電所が建設され、バイパス方式より効率が良い
  4. 住宅地に近く系統連系地点までの距離が短い、きめ細かな騒音・振動対策が必要
  5. 上流の既設発電所により大きなゴミが除去
伊太発電所の全景

図3 伊太発電所の全景 出典:関東農政局

はてなブックマークGoogle+でシェア

執筆者情報

新電力ネット運営事務局の写真

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

EICは、①エネルギーに関する正しい情報を客観的にわかりやすく広くつたえること②ICTとエネルギーを融合させた新たなビジネスを創造すること、に関わる活動を通じて、安定したエネルギーの供給の一助になることを目的として設立された新電力ネットの運営団体。

企業・団体名 一般社団法人エネルギー情報センター
所在地 〒160-0022
東京都新宿区新宿2丁目9−22 多摩川新宿ビル3F
電話番号 03-6411-0858
会社HP http://eic-jp.org/
サービス・メディア等 https://www.facebook.com/eicjp
https://twitter.com/EICNET

関連する記事はこちら

日本の再エネ普及を左右したRPS制度の歴史を見る、2017年度から5年間で段階的に廃止の写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2016年06月10日

新電力ネット運営事務局

日本の再エネ普及を左右したRPS制度の歴史を見る、2017年度から5年間で段階的に廃止

6月7日に開催された新エネルギー小委員会によると、RPS制度は平成29年度から5年間で段階的に廃止されていく方針です。本コラムでは、再エネの普及を推進するため2003年に全面施行されたRPS制度のこれまでの歴史と、今後どのように廃止に向けて進んでいくのか概観していきます。

30分ごとの日射量予測データを配信、太陽光発電の供給力推定を支援の写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2016年04月22日

新電力ネット運営事務局

30分ごとの日射量予測データを配信、太陽光発電の供給力推定を支援

4月21日、一般財団法人日本気象協会は、高精度・高解像度のエリア日射量予測サービス「SYNFOS-solar 1kmメッシュ」の提供を開始すると発表しました。電力会社や小売事業者の需給運用として活用できるサービス内容となっています。

固定価格買取制度の費用負担から見る制度設計の写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2015年10月29日

新電力ネット運営事務局

固定価格買取制度の費用負担から見る制度設計

2030年度のFIT買取価格は、国民負担の抑制とのバランスが考慮され、3.72兆円~4.04兆円の範囲に収まように検討されます。その費用負担の中で設計される今後の固定価格買取制度や規制緩和等について見ていきます。

環境NGO、再エネ重視の新電力を紹介・応援、グリーン電力求める声に応じるの写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2016年05月23日

新電力ネット運営事務局

環境NGO、再エネ重視の新電力を紹介・応援、グリーン電力求める声に応じる

電力自由化に伴い誰でも電力会社を選択できるようになった今、グリーン電力を求める消費者に正しく情報を伝える必要性が高まっています。そこで、環境NGOであるFoE Japanの吉田明子氏に、再エネ重視の企業を応援する「パワーシフト・キャンペーン」について話を聞きます。

太陽光発電で電源供給するトラック、熊本地震の被災地に派遣の写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2016年06月16日

新電力ネット運営事務局

太陽光発電で電源供給するトラック、熊本地震の被災地に派遣

6月14日、電源供給車「ソーラーパワートラック」が熊本地震の被災地へ出発しました。このソーラーパワートラックの派遣は、地球温暖化防止をテーマに活動をするNPO法人エコロジーオンライン(栃木県)と、災害・環境NPO法人グリーンパワーファクトリー(神奈川県)が共同で立ち上げた「Green Power for くまもと」によるものです。