部屋全域へのワイヤレス充電を実証、コンセントフリー社会へ一歩前進、東大発表
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2019年06月18日
一般社団法人エネルギー情報センター
東京大学は6月、マルチモード準静空洞共振器という送電器構造を考案・実装し、3m×3mの部屋全域へのワイヤレス充電ができることを実証したと発表しました。広範囲に数十ワット程度の電力を送信できることから、将来的に電池が切れない IoTシステムへの応用が期待されます。
広範囲に数十ワット程度の電力を送信、東大の研究チームが実証
ワイヤレス電力伝送システムは、電波の送受信により電力を伝送するシステムであり、有線で接続することなく、情報通信機器等への充電や給電が可能になります。そのため、工場内で利用されるセンサー機器等への給電、オフィスにおけるマルチメディア機器等の充電など、幅広い分野での利用が期待されています。
また、近年のモノのインターネット(Internet of Things ; IoT、以下「IoT」)の台頭とともに、インターフェース、センサー、アクチュエータなど、様々な機能が組み込まれた電子機器が増えつつあります。電池交換のコストや配線の煩雑さは機器の数とともに増加するため、各機器への電力供給のコストの問題が顕在化しつつあります。
そのため、多数の機器への自律的なエネルギー供給技術は、身の回りの全てのモノがネットワークを通じて接続され、協調して動作する究極の IoTの実現に向けた鍵になると考えられます。
ワイヤレス電力伝送システムの実用化に向けては、国内外で実験・開発が進められており、例えば総務省は2030年代に目指すべき電波利用社会として、家庭内電源がフルワイヤレス化し、災害時の遠隔地への大電力伝送が可能になる未来像を描いています。こうした社会では、駐車場に設置した給電設備から充電することや、必要に応じて太陽光発電等から送電線無しでの送電が可能となります。[関連記事]。
こうした中、東京大学はマルチモード準静空洞共振器という送電器構造を考案・実装し、3m×3mの部屋全域へのワイヤレス充電ができることを実証したと発表しました(図1)。広範囲に数十ワット程度の電力を送信できることから、将来的に電池が切れない IoTシステムへの応用が期待されます。
小型の受電器に対し、部屋内のほぼ全ての位置に電力を伝送可能
2007年にマサチューセッツ工科大学が提案した磁界共振結合方式をはじめとしたワイヤレス充電技術は、自律的なエネルギー供給を実現する技術として期待されてきました。しかし、広い空間内のさまざまな場所に位置する小型機器に対し、安全に、自律的に、かつ効率的に電力を供給することは困難でした。
このため、広い空間内へのワイヤレス充電に対する新たなアプローチとして、2017年に準静空洞共振器(QSCR)が提案されました。これは、部屋自体を金属板や導体棒などにより構成して送電器とすることで、部屋内に位置する機器へのワイヤレス充電を行うものです。しかし、部屋の中央に巨大な導体棒を設置する必要があることや、壁付近において充電の効率が低下するなどの課題が存在しました。
これらの課題を解決するために、東京大学の研究グループはマルチモード準静空洞共振器(Multimode QSCR)というアプローチを考案しました。今回の発表は、Multimode QSCR構造を3m×3m スケールで実装し、ワイヤレス充電システムとしての実証を行った内容になります。
今回開発された部屋全域をカバーするワイヤレス充電システムは、部屋大のMultimode QSCR(送電器)と、受電器により構成されます(図2)。壁や床に送電機構を埋め込むことで三次元状に分布する交流磁界が生成されるため、従来の手法のように部屋内に導体棒などの構造物を設置する必要がないメリットがあります。
給電範囲に比べて著しく小さい機器のワイヤレス充電は非常に難しいことが知られていますが、今回の研究では給電範囲の1:1000(面積比)のサイズの受電器に対し、ほぼ全ての位置に電力を伝送できることが実証されています。
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執筆者情報
一般社団法人エネルギー情報センター
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