分散型エネルギーとV2G(Vehicle to Grid)の可能性|Nuvve社 CEO来日特別対談 レポート

2025年04月30日

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

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世界最先端のV2G(Vehicle to Grid)技術を有するNuvve社のCEO、Gregory Poilasne氏が来日し、東京で特別セッションが開催されました。本セッションでは、一般社団法人エネルギー情報センター理事であるRAUL株式会社の江田とGregory氏が対談を行い、日本のエネルギーシステムの未来とNUVVE JAPANの戦略について語られました。本記事では、当日のイベントの様子を時系列に沿ってご紹介します。

セッション1

エネルギー情報センター理事 江田による「エネルギーシステムの今と未来」

セッション冒頭、江田は日本のエネルギーシステムの進化について言及しました。FIT制度導入後の太陽光・風力の普及、電力自由化による市場の変化を背景に、今後は系統用蓄電池がインフラ強化の鍵を握ると指摘しました。

2024年3月時点で接続契約を結んでいた系統用蓄電池は3GWでしたが、同年12月には6GWに増加。このデータをもとに、今後は数千基規模の蓄電池が導入される可能性が高いと述べました。

一方で、需給調整市場や容量市場の整備が進むなか、収益の不安定さやルール変更の頻発、運用コストの不透明さ、さらには火災リスクといった課題にも触れました。こうしたリスクに対応していくには、信頼できる外部パートナーの存在がますます重要になるのではないかとの見解を示しました。

最後に、蓄電池ビジネスにおいては運用開始後のパートナー選びが事業の成否を左右するとし、アグリゲーターとして日本市場に参入するNuvveの取り組みにも注目している様子でした。


セッション2

CEO Gregory氏によるNuvveの紹介と日本市場への戦略

Gregory氏は、Nuvve社がV2Gの研究・運用において25年の実績を有し、米国、デンマーク、イギリス、日本に拠点を持つグローバル企業であることを紹介。特にデンマークでは9年間にわたり日産リーフなどのEV車両を活用し、1台あたり年間2,000ドルの収益を上げる事例を紹介しました。

V2Gとは、電気自動車(EV)のバッテリーを単に充電するだけでなく、電力系統へ放電することも可能とする技術であり、長時間駐車されるEVのバッテリーを系統用蓄電池として活用することで、再生可能エネルギーの変動を吸収し、需給調整に寄与します。

NuvveのV2Gプラットフォームは、複数台のEVを連携制御し、仮想発電所(VPP)として統合的に運用できる点が大きな特長です。さらに、AIを活用した価格予測や電力需要変動の解析、充放電の最適制御、バッテリー劣化を抑えるアルゴリズムも搭載されています。

日本では、かつて豊田通商とともに名古屋でV2G実証事業を行った経験があり、今後は全国展開を目指します。EV普及率が低い日本市場では、まず定置型蓄電池のアグリゲーションから開始し、欧米で培った実績を活かしながら日本での地位確立を狙います。


セッション3

江田 × Gregory氏:エネルギー戦略対談

対談では、Nuvveが日本市場に関心を寄せる理由と、EVではなく定置型蓄電池のアグリゲーションから始める背景について語られました。特に2026年から始まる予定の「低圧リソース」(一般家庭や中小事業者が保有する小規模蓄電池)の市場参加解禁を、大きな転機と位置付けています。

制度面での変革期を迎える日本は、参入のベストタイミングであり、Nuvveの技術力と運用ノウハウが分散型電源の統合・活用において価値を発揮すると強調しました。Gregory氏は、日本をアジア市場への展開拠点と位置づけ、韓国や東南アジア進出も視野に入れていることを明かしました。

加えて「日本市場で数%のシェアでも十分なビジネスが成立する」とした上で、今後5年以内に10〜25%の市場シェア獲得を目指すと語りました。


セッション4

NUVVE JAPANの戦略とサービス

最後に登壇したNUVVE JAPANの上田氏は、日本市場における具体的なビジネスモデルについて説明しました。現在、アグリゲーターライセンスを申請中であり、最終的には1GW(原発1基分に相当)の蓄電池リソースを集約し、需給調整市場や容量市場に参加する「マイクロギガファクトリー構想」を掲げています。

この構想では、Nuvveの高度なV2G技術を活用し、ビル・工場・家庭・EVなどの分散電力リソースを束ね、最適制御によって市場取引の収益を最大化することが目的です。

サービスは以下の5ステップで顧客ごとに最適なソリューションを設計・実装します。
1.初期ヒアリング:導入目的、目標収益、再エネ志向、地域防災ニーズ等の把握
2.システム設計:用途別(系統用、FIP併設、マイクログリッド併設等)の蓄電池構成提案
3.シミュレーション:市場参加による収益予測
4.導入・取引:導入支援、アグリゲーション登録、市場接続、運用開始
5.運用・報告:収益・稼働状況のレポート提供、社外監査によるトレーダーのスキル向上

誠実性・透明性・成長性を軸に、NUVVE JAPANはオーナー企業や自治体の多様なニーズに応えるとともに、信頼できるアグリゲーターとして長期的なパートナーシップの構築を目指しています。

本対談を通じて、NUVVE JAPANのビジョンと技術の全貌が明らかになりました。エネルギーの地産地消が求められる時代において、分散型リソースの活用はますます重要性を増しています。同社の今後の動向から、目が離せません。

2025年6月16日(月)13時~セミナー開催

今こそ知るべき、蓄電池ビジネスの価値 ~信頼できるパートナーと始める「系統用蓄電池」入門~
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