大規模太陽光の入札、初めて募集容量を上回る、上限価格では落札できず、最低価格14.25円/kWh
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2019年01月04日
一般社団法人エネルギー情報センター
第3回目の大規模太陽光発電の入札結果が公表され、最高落札価格は15.45円/kWh、最低落札価格14.25円/kWh(加重平均落札価格15.17円/kWh)という結果になりました。第1回目と比較すると非常に安価(加重平均落札価格では-4.47円/kWh)になり、今後ますますの価格低減のため、対象範囲拡大などの対応が検討されています。
第3回目のメガソーラー入札、最低落札価格14.25円/kWh
第5次エネルギー基本計画において、2030年に向けて再生可能エネルギーを主力電源化していく方向性が示されたことを踏まえ、国はコスト低減の加速化をより一層強化する方策を検討しています。
その方策の一つとして入札制度があり、日本においては2017年4月に施行された改正FITにおいて、2000kW以上のメガソーラー事業を対象に入札制度が導入されました。
2017年度に実施された第1回入札(募集容量:500MW)では、29件(490MW)が参加を申し込み、その内23件(388MW)が入札参加資格を得ました。しかしながら、実際の入札件数は9件(141MW)となり、さらに第2次保証金を納付して認定に至った案件は、4件(41MW)に留まりました。
このように第1回目は、募集容量(500MW)に大きく満たない結果となりましたが、入札自体は最低価格で17.20円/kWh(加重平均落札価格:19.64円/kWh)での落札があり、これまでと比較すると安価な水準になりました。事業用太陽光発電の調達価格は、2017年度で21円/kWhであったため、入札にて安価になっており、一定のコスト低減効果が現れたといえます。
2018年度上期には、第2回の入札(募集容量:250MW)が上限価格非公表として実施されました。19件(393MW)が参加を申し込み、15件(334MW)が入札参加資格を得ましたが、実際の入札件数は9件(197MW)に留まりました。
第2回目では、第1回目の最低入札価格よりも安価な「16.47円/kWh」の案件もありましたが、上限価格が15.50円円/kWhと設定されており、落札者数は「0」でした(図1)。
2018年度下期には第3回の入札(募集容量:197MW)が、上限価格非公表として実施されました。38件(761MW)が参加を申し込み、32件(637MW)が入札参加資格を得て、実際の入札件数は16件(307MW)でした。
16件のうち13件が上限価格(15.50円/kWh)以下で入札を行い、このうち低い価格で入札したものから順に、募集容量(197MW)に達するまでの7件が落札しました。
最高落札価格は15.45円/kWh、最低落札価格14.25円/kWh(加重平均落札価格15.17円/kWh)となり、第1回目と比較すると非常に安価(加重平均落札価格では-4.47円/kWh)になっています(図2)。
第3回目は、実際の入札容量が募集容量を上回っている点が、第1回目・2回目と大きく異なります。第1回目・2回目では募集量量を下回っていたので、上限価格以下に設定できれば、落札となる形でした。一方で、第3回目では、安価な順から落札となり、上限価格と同じ価格で入札した事業者は、落札対象外となりました。
事業用の太陽光発電については、これからも7円/kWhの目標に向け、徐々にFIT買取価格が低くなっていく可能性が高いです。まず、2030年度目標のエネルギーミックス(太陽光:6,400万kW)の水準に対して、現時点の太陽光発電のFIT前導入量+FIT認定量は7,580万kW(導入量4,450万kW)となっています。
目標量に対して十分なボリュームのため、FIT買取価格を高く設定し、導入を強力に後押しする流れになる可能性は低いです。また、事業用太陽光が全件数に占める比率は、FIT認定量・導入量ベースともに95%程度と、大きな割合を占めており、他の電源推進でバランスを取っていくものと考えられます。
買取価格についても、2000kWクラスにおいては、欧州で2018年度で8~9円/kWhの水準に達しており、日本はそれと比較すると高いです(図3)。最新の買取価格は、住宅用(10kW未満)の2019年度の調達価格が24円/kWh、事業用(10kW以上2,000kW未満)の調達価格が2018年度で18円/kWhですが、政策としては、より海外との差を縮める方向に舵を切っていくものと考えられます。
ドイツでの太陽光入札の事例
第1回 2015.4 |
第2回 2015.8 |
第3回 2015.12 |
第4回 2016.4 |
第5回 2016.8 |
第6回 2016.12 |
第7回 2017.2 |
第8回 2017.6 |
第9回 2017.1 |
第10回 2018.2 |
第11回 2018.6 |
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---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
募集容量 | 150MW | 150MW | 200MW | 125MW | 125MW | 160.483MW | 200MW | 200MW | 200MW | 200MW | 182.479MW |
平均落札価格(ユーロセント/kWh) | 9.17㌣ | 8.49㌣ | 8.00㌣ | 7.41㌣ | 7.25㌣ | 6.90㌣ | 6.58㌣ | 5.66㌣ | 4.91㌣ | 4.33㌣ | 4.59㌣ |
(ユーロセント/kWh)入札価格範囲 | 8.48㌣~11.29㌣ | 1.00㌣~10.98㌣ | 0.09㌣~10.98㌣ | 6.94㌣~10.98㌣ | 6.80㌣~10.98㌣ | 6.26㌣~8.45㌣ | 6.00㌣~8.86㌣ | 5.34㌣~65.4㌣ | 4.29㌣~7.20㌣ | 3.86㌣~5.74㌣ | 3.89㌣~4.96㌣ |
入札上限価格(ユーロセント/kWh) | 11.29㌣ | 11.18㌣ | 11.09㌣ | 11.09㌣ | 11.09㌣ | 11.09㌣ | 8.91㌣ | 8.91㌣ | 8.84㌣ | 8.84㌣ | 8.84㌣ |
調達価格の決定方式 | pay-as-bid | uniform uniform Pricing |
uniform uniform Pricing |
pay-as-bid | pay-as-bid | pay-as-bid | pay-as-bid | pay-as-bid | pay-as-bid | pay-as-bid | pay-as-bid |
出典:経済産業省資料より作成
FITによる買取価格は、資本費や運転維持費を始めとする「通常要する費用」を足し上げ、「適正な利潤」水準として設定されたIRRから導出されます。つまり、太陽光発電が安価になり、発電効率も上がる場合、買取価格が据え置きであると利潤が生まれすぎるため、買取価格にて調整することとなります。
例えば、事業用太陽光発電の「通常要する費用」の1つであるシステム費用について、昨年度までは、最新年に設置された1,000kW以上の上位25%が採用されてきました。しかし今後は、上位25%よりも効率的な水準にて2019年度の調達価格等の設定を行う方向性がまとまっています。加えて、これまでの1000kW以上から、今後は50kW以上の案件がトップランナー分析の対象として取り扱われる見込みです。
2018年度は「1,000kW以上の上位25%水準(22.07万円/kW)」にて利潤が生まれるよう計算されていたところ、2019年度は「50kW以上の上位17.5%水準(18.2万円/kW)」が基準となる方向性です。このため、2018年度調達価格の算定に利用されたシステム費用22.07万円/kWよりも、3.87万円(17.5%)低減するため、FIT買取価格は大きく下落することが想定されます。
事業用太陽光の入札対象範囲、「500kW以上」などに拡大する可能性
2018年にIEAが発表したデータによれば、2018年~2023年に導入される大規模再エネプロジェクトのうち、全容量の60%程度が入札などの競争的な手法によって調達価格の決定がされる見通しとなっています。
日本においても、事業用太陽光の入札対象範囲については、現在の「2000kW以上」から対象範囲を広げるべきであるか、検討が進められている所です。最終的には「50kW以上」や「100kW以上」を入札対象範囲に拡大することを視野に入れ、2019年度の入札対象範囲は「250kW以上」又は「500kW以上」とすることが適当ではないかとして話が整理されています。
ただし、ドイツにおいては、2015年より100kW以上の地上設置型太陽光発電に対して入札制を導入したものの、入札執行コストの増大等を踏まえて、2017年より対象が750kW以上に限定されました。このように、行政コスト等を理由にその範囲を「750kW以上」に変更したドイツの例を踏まえれば、段階的に入札対象範囲が拡大していく可能性が高いと考えられます。
2019年度の入札量の見込み、2019年度は750MW
入札の実施に当たっては、より事業者間の競争が進み、コスト低減が促されるような入札量の設定を行うことが重要です。調達価格等算定委員会においては、2019年度の入札量は、750MWとすることが候補として挙がっています。
また、第2回及び第3回の入札結果を踏まえると、年度の後半に実施される入札に応札が集中する(第2回入札量:第3回入札量=197MW:307MW≒2:3)ことが想定されます。
そのため、第4回(年度上期)の入札量は300MWとし、第5回(年度下期)の入札量は原則450MWとしつつ、第4回の応札容量が300MWを下回った場合には、その下回った容量分を450MWから差し引いた容量とするルールとなる見込みです。
地域公共案件、保証金が免除になる可能性
第5次エネルギー基本計画においても、地産地消型エネルギーシステムの普及に向けて、「国、自治体が連携し、先例となるべき優れたエネルギーシステムの構築を後押しする」こととされており、FIT制度においても地域公共案件に対して一定の配慮を行うことが考えられます。
そのため、2019年度の入札では、「農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー電気の発電の促進に関する法律(農山漁村再エネ法)」に基づいて、市町村が認定する入札案件を対象とし、その保証金の減免が行われる可能性があります。
現在、FIT制度の入札に当たっては、①入札参加者に対して第1次保証金(500円/kW)、②落札者に対して第2次保証金(5,000円/kW)が求められます。しかし、農山漁村再エネ法の対象については、第1次保証金、第2次保証金のいずれについても免除することが提言されています。
第1回目バイオマス発電の入札、1件の落札で19.60 円/kWh
2018年12月18日、一般社団法人低炭素投資促進機構より、太陽光第3回入札と同時に、バイオマス第1回入札の結果が公表されました。対象設備は、出力10,000kW以上の一般木材等によるバイオマス発電設備、入札量(募集容量)は180MW、供給価格上限額は20.60 円/kWh(入札時は非公表)により実施されました。
入札参加資格の審査のために提出された事業計画数の合計は7件でしたが、実際に入札となったのは1件であり、その1件の落札価格は19.60 円/kWhでした(図4)。
今後の入札スケジュール
2018年度の入札実施スケジュールについては、太陽光は年度の上期と下期にそれぞれ1回、バイオマスは年度の下期に1回の入札を実施することとし、認定取得期限はいずれの回についても2019年3月末となっています。
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執筆者情報
一般社団法人エネルギー情報センター
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