航空機と衛星の特徴を併せ持つ太陽光ドローン「Zephyr」、成層圏を25日以上飛行
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2018年08月16日
一般社団法人エネルギー情報センター

欧州の大手航空機メーカーAirbus社は8月、太陽光発電ドローン「Zephyr S」が25日23時間57分に及ぶ連続飛行に成功し、世界記録を達成したと発表しました。前回の世界記録が約14日だったため、10日以上の記録更新となります。
航空機と衛星の特徴を併せ持つ太陽光ドローン「Zephyr」
太陽光ドローン「Zephyr」は、欧州の大手航空機メーカーAirbus社が手がける高高度疑似衛星(HAPS)型の無人航空機(UAV)です。燃料は太陽光発電のみであり、平均高度21km(民間航空機の巡行高度(~10km))の成層圏を飛行します。航空機ではなく、そして衛星でもない「Zephyr」は、両方の側面を組み込んだ特徴を有します。
HAPSとは、成層圏で運用される飛行船、航空機、ドローン等を指します。通信衛星に比べて低コストであり、例えば地域ごとにWiFi環境を構築できる点がメリットの1つです。
「Zephyr」は、海上監視や、国境パトロール、通信、森林火災の検知など、幅広いソリューションを提供するために開発されました。衛星のように通信網を世界各地に提供しながら、数百マイルもの領域を長期間にわたり観測・監視することができます(図1)。

図1 「Zephyr」の概要 出典:Airbus
通常の航空機よりはるかに高い高度を飛ぶため、気象変化の影響を受けず、雲に遮られることなく太陽光発電が可能です。夜間は、バッテリに充電した電力を使って飛行を継続します。
「Zephyr」と同じ高度で飛行していた唯一の民間航空機はコンコルドで、軍用機でも高高度偵察機「U-2」と「SR-71 ブラックバード」だけでした。しかし、これらの航空機は給油が必要であり、長期間の任務には不向きです。その点「Zephyr」は太陽光発電を燃料としており、安価かつ長期間の飛行が可能です。
このような特徴を持つ「Zephyr」の初フライトが実施され、疑似衛星として25日以上の連続飛行に成功、世界記録を達成したとAirbus社が発表しました。7月11日に米国アリゾナ州で離陸した後、25日23時間57分におよび飛行を続けました。
Airbus社によると、これまでの最長記録は、数年前に「Zephyr」プロトタイプ機によって記録されたものとしています。その際の連続飛行記録は14日ほどであり、この時点で既に一般的な航空機よりも10倍も長かったとしています。
2種類の「Zephyr」、大型機は現在開発中
Airbus社は、「Zephyr S」と「Zephyr T」の2種類を設計しており、今回の世界記録は「Zephyr S」が達成しています。生産モデルの「Zephyr S」は、翼幅が25m、重さは75kg未満です。一方で、現在開発中の「Zephyr T」の翼幅は33m、重さは140kgと大型化しています。
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