FIT買取期間が終了する2019年以降、新たな供給力と需要を獲得するビジネスチャンスに

2017年12月19日

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

FIT買取期間が終了する2019年以降、新たな供給力と需要を獲得するビジネスチャンスにの写真

12月18日、「再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会」が開催され、FIT制度からの自立に向けた事業環境の整備などについて検討が行われました。2019年以降、各発電所のFIT買取期間が順次終了しますが、その発電所は小売電気事業者やアグリゲーターにとって、新たな供給力と需要を獲得するビジネスチャンスとなります。

FIT期間切れの太陽光発電、自由契約で余剰電力を売電

2009年に開始された余剰電力買取制度は、太陽光発電で作られた電力のうち、余剰電力が買取対象となる制度です。10年間の買取期間が設定されており、2019年以降順次、その期間を終えることとなります。

買取期間が終了した電源については、法律に基づく買取義務は無くなります。そのため、「①電気自動車や蓄電池と組み合わせ自家消費」、「②小売電気事業者やアグリゲーターに対し、相対・自由契約で余剰電力を売電」といった2種類の方法にシフトすることが基本となります(図1)。

こうした環境変化は、住宅用太陽光発電設備を設置している需要家にとっては、自家消費型のライフスタイルへの転換を図る契機となります。また、小売電気事業者やアグリゲーターにとっては、新たな供給力と需要を獲得するビジネスチャンスとなります。

これらのようにFIT終了をメリットとするには、FIT制度からの自立に向けた市場環境を醸成する必要があります。そのため今後、買取期間の終了とその後のオプション等について、官民一体となって広報・周知が徹底される可能性が委員会で示されています。

住宅用太陽光のFIT買取期間終了後の基本的な考え方

図1 住宅用太陽光のFIT買取期間終了後の基本的な考え方 出典:経済産業省

これまではFIT買取価格が電気料金よりも高いため、売電量の最大化を図る傾向にありました。しかし買取期間が終了する案件が生じ始める2019年には、自家消費のメリットが現在より大きくなると考えられます。それは、2019年には10kW未満太陽光のFIT買取価格が家庭用電気料金と同水準に設定され、売電のメリットが薄くなるからです。(図2)。

2019年における住宅用太陽光をめぐる状況

図2 2019年における住宅用太陽光をめぐる状況 出典:経済産業省

FIT終了直後の案件、買手が不在の場合は一般送配電事業者が引き受け

FIT買取期間終了後には、一時的に余剰電力の買手が不在(無契約での逆潮流)になるケースが生じる可能性があります。こうした場合、無契約だからという理由で余剰電力の系統への逆潮流ができないよう解列することは難しいです。何故ならば、住宅用太陽光発電設備の場合は、宅内配線状況によっては解列により小売供給まで遮断される懸念があるからです。つまり、電気が止まることで、需要家に対して過大な不利益をもたらし得る可能性があります。

そのため、当該余剰電力については、一般送配電事業者に引受けを要請することが検討されています。この余剰電力については、一般送配電事業者が無償で引き受けることが要請される方向性です(図3)。

ただし、一般送配電事業者による引受けはあくまで一時的・例外的な措置です。今後の制度検討では、小売電気事業者やアグリゲーターによる、再エネを活用したビジネスを促進するような内容とすることが重要とされています。例えば前述のように、仮に発電した電力が無償で引き取られることとなれば、発電者としては電力の供給先切替を検討する契機となることが考えられます。

余剰電力の一時的な買手不在時の対応

図3 余剰電力の一時的な買手不在時の対応 出典:経済産業省

非FIT電源からの逆潮流を解禁することの必要性

現在、一需要家内にFIT認定設備と非FIT認定設備が併存する場合には、非FIT認定設備からの逆潮流は禁止されています。それは、FIT認定設備による発電量等を正確に計測することで、FIT制度に基づく買取量(逆潮流量)を正確に計量する必要があるからです。

ただ、2019年以降は買取期間が終了する案件が出るため、設置時期に差異があれば、FIT認定設備と非FIT認定設備(2019年で期間終了)が併存するようになる可能性があります。こうした場合、非FIT認定設備からの逆潮流を可能とする必要が出てきます。そのため、FIT電源の電気と非FIT電源の電気を区分する計量方法の整理を行う必要があります。

実証の結果、差分計量により、FIT電源からの逆潮流量と非FIT電源からの逆潮流量をそれぞれ計量することが技術的に可能であることが確認されています(図4)。このため、差分計量を適用することを前提として、非FIT電源からの逆潮流を解禁することの必要性が、今後検討されます。

FIT/非FIT認定設備が併存する場合の逆潮流の計量方法

図4 FIT/非FIT認定設備が併存する場合の逆潮流の計量方法 出典:経済産業省

按分計量を行っている需要家、買取者が異なる場合は差分計量へ移行

段階的に太陽光発電を増設したケースなど、買取価格が設備毎に異なる場合が既にあります。そうした場合、現在は証明用メーターを用いて按分計算を行い、各逆潮流量が算出され按分計量されています。

既に複数のFIT認定設備を保有し、按分計量を行っている需要家においても、設備の一部が非FIT化する可能性があります。そうした場合、按分計量から差分計量に移行する必要があるか否かについては、下記の形で整理される方向性です(図5)。

  1. 買取者が同一の場合 ⇒ 按分計量の継続又は差分計量への移行を選択
  2. 買取者が異なる場合 ⇒ 差分計量へ移行

按分計量を行っているシステムの一部が非FIT化する場合

図5 按分計量を行っているシステムの一部が非FIT化する場合 出典:経済産業省

差分計量に必要な「個別の配線工事の手配」などの費用、需要家側が負担の可能性

差分計量へ対応するためには、電気計器等の追加が必要です。そうした電気計器等の調達・設置・運用等については、一般送配電事業者が一括して実施することが合理的とされています。

この続きを読むには会員登録(無料)が必要です。

無料会員になると閲覧することができる情報はこちらです
電力の補助金

補助金情報

再エネや省エネ、蓄電池に関する補助金情報を一覧できます

電力料金プラン

料金プラン(Excel含)

全国各地の料金プラン情報をExcelにてダウンロードできます

電力入札

入札情報

官公庁などが調達・売却する電力の入札情報を一覧できます

電力コラム

電力コラム

電力に関するコラムをすべて閲覧することができます

電力プレスリリース

プレスリリース掲載

電力・エネルギーに関するプレスリリースを掲載できます

電力資格

資格取得の支援

電験3種などの資格取得に関する経済支援制度を設けています

はてなブックマーク

執筆者情報

一般社団法人エネルギー情報センターの写真

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

EICは、①エネルギーに関する正しい情報を客観的にわかりやすく広くつたえること②ICTとエネルギーを融合させた新たなビジネスを創造すること、に関わる活動を通じて、安定したエネルギーの供給の一助になることを目的として設立された新電力ネットの運営団体。

企業・団体名 一般社団法人エネルギー情報センター
所在地 東京都新宿区新宿2丁目9−22 多摩川新宿ビル3F
電話番号 03-6411-0859
会社HP http://eic-jp.org/
サービス・メディア等 https://www.facebook.com/eicjp
https://twitter.com/EICNET

関連する記事はこちら

ペロブスカイト太陽電池の課題解決と今後の展望の写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2024年11月01日

新電力ネット運営事務局

ペロブスカイト太陽電池の課題解決と今後の展望

前編では、ペロブスカイト太陽電池の基本的な特徴やそのメリットについて紹介しました。今回は、性能の安定性や材料に含まれる鉛の問題、エネルギー変換効率などの課題に対する最新の解決策や企業の取り組みを交えて解説します。

ペロブスカイト太陽電池の特徴とメリットの写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2024年09月27日

新電力ネット運営事務局

ペロブスカイト太陽電池の特徴とメリット

太陽光発電は、再生可能エネルギーの代表的な存在として世界中で注目を集めています。その中でも、シリコン太陽電池に次ぐ次世代のエネルギー技術として「ペロブスカイト太陽電池」が大きな注目を集めています。ペロブスカイト太陽電池は、軽量で柔軟性があり、従来の太陽電池では難しかった場所での活用が期待されていることから、多様な分野での普及が期待されています。 2024年度には福島県内での実証実験が予定され、日本国内でも本格的な導入に向けた動きが始まっています。注目が集まるペロブスカイト太陽電池について、2回に渡りお伝えします。第1回目では、ペロブスカイト太陽電池の基本的な特徴やメリット、そしてシリコン太陽電池との違いについて、詳しく解説していきます。

2024年度の出力制御②優先給電ルールにおける新たな施策についての写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2024年08月28日

新電力ネット運営事務局

2024年度の出力制御②優先給電ルールにおける新たな施策について

再生可能エネルギー(再エネ)の導入拡大が進み、導入量が増えた結果、 電力需要が低い時期には「発電量過多」になり、全国的に 出力制御 が行われるようになってきました。この出力制御について、2回に渡りお伝えしています。 1回目はそもそも出力制御とは何か、増加している要因、過去の事例についてお伝えしました。今回は、経済産業省・資源エネルギー庁が優先給電ルールに基づく新たな施策を公表したので、その内容をご紹介します。

太陽光ケーブル窃盗が再エネ普及を脅かす②ー盗難対策の重要性と太陽光ケーブル盗難から事業者を守るサービスや商品についてーの写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2024年07月18日

新電力ネット運営事務局

太陽光ケーブル窃盗が再エネ普及を脅かす②ー盗難対策の重要性と太陽光ケーブル盗難から事業者を守るサービスや商品についてー

太陽光発電施設から銅線が盗まれる事件が後を絶ちません。銅相場が高止まりし、売却狙いの犯罪が再生可能エネルギーの産業を脅かしています。1回目は太陽光発電設備が狙われる理由と自衛についてをお伝えしました。2回目は盗難対策の重要性と太陽光ケーブル盗難から事業者を守るサービスや商品についてお届けします。

太陽光ケーブル窃盗が再エネ普及を脅かす①ー犯罪が増え続ける背景と自衛についてーの写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2024年06月13日

新電力ネット運営事務局

太陽光ケーブル窃盗が再エネ普及を脅かす①ー犯罪が増え続ける背景と自衛についてー

太陽光発電施設から銅線が盗まれる事件が後を絶ちません。銅相場が高止まりし、売却狙いの犯罪が再生可能エネルギーの産業を脅かしています。第2回にわたり銅窃盗の再生エネルギー戦略への影響と各企業の防止策についてご紹介します。1回目は太陽光発電設備が狙われる理由と自衛について、2回目は太陽光ケーブル盗難から事業者を守るサービスや商品についてお届けします。

 5日間でわかる 系統用蓄電池ビジネス