世界初、山口県に竹専焼のバイオマス発電を開設、出力規模は約2MW
政策/動向 | 再エネ | IT | モビリティ | 技術/サービス | 金融 |
2017年10月20日
一般社団法人エネルギー情報センター

10月18日、藤崎電機は世界初となる竹を燃料として専焼するバイオマス発電所の起工式を執り行ったと発表しました。山口県山陽小野田市にて開設されるこの発電所は、出力規模は約2MW、山陽小野田バンブーバイオマス発電所と名付けられました。
世界初、竹を燃料として専焼するバイオマス発電所
竹は日本では古来より、食用や日用雑貨、建材等に多く使われていました。しかし、近年、中国産の竹の増加やプラスチック製への移行により竹の需要が激減し、その結果各地の竹林が放置されるようになりました。
竹は成長力が非常に強く、そこに生育する樹木の健全な成長を阻害させ、枯死させることもあります。他の樹木や生物多様性への影響が大きいので、放置竹林の拡大防止と、伐採した竹を資源として有効活用することが重要な課題となっています。
竹は日本全土に広がっており、特に西日本を中心に放置竹林が問題視されています。そのため、竹のバイオマス発電利用については、2017年3月に日立製作所が新技術を開発したと発表するなど、各方面にて注目が集まっています。[関連記事]
こうした中、藤崎電機は世界初となる竹を燃料として専焼するバイオマス発電所の起工式を執り行ったと発表しました(図1)。山口県山陽小野田市にて開設されるこの発電所は、出力規模は約2MW、山陽小野田バンブーバイオマス発電所と名付けられました。
図1 起工式、集合写真 出典:藤崎電機
地域経済効果は推定89億円、地域活性化に
山陽小野田バンブーバイオマス発電所の想定年間発電量は約1580万キロワット時となり、一般家庭に換算すると約4860世帯の年間電力使用量に相当します。CO2に関しては、年間約8223トンの排出削減効果が見込まれています。
発電所の投資額は約23億7千万円、FIT法に基づく売電期間20年では、地域経済効果が89億円と推定されており、地元雇用も含め地方創生にも繋がることが期待されます。
藤崎電機によると、山口県山陽小野田市は、山口県が林野庁から委託を受けて竹の伐採・チップ化・燃焼する実証事業(平成25~27年度)を日本で唯一行っていたこと、竹の供給体制が確立しやすい条件が整っていたことなどが、建設に至った理由としています。
2013年から検討開始、ドイツのランビォン社と協力して開発
藤崎電機は、2013年より竹の有効活用方法としてバイオマス発電所での燃料利用を検討しています。2014年上旬よりバイオマス発電所の実績と経験が豊富な企業を調査し、2015年6月にドイツのランビォン社と正式契約に至りました。ランビォン社は、1890年創立、バイオマス発電所の設計製造販売を手掛けており、世界90カ国以上での実績を有しています。
藤崎電機によると、2014年6月には竹サンプルをドイツに送り成分分析、ランビォン社が検討を重ねました。そして2015年5月にドイツハンブルグで燃焼実験を行うことに決定、その試験の成功により2015年6に「バンブ-バイオマス発電装置の共同開発、OEM製造、アジアエリアでの独占販売」の契約を作成することとなりました。その後調印を行い、7月23日に山口県庁での立地協定調印を行うこととなりました。
バイオマスに向かない竹の利用、燃焼炉の開発などで対応
竹は杉やヒノキと違い、①竹の中が空洞であることから輸送効率が悪い、②チップ化することにより乳酸発酵する性質があるためにストックが難しい、③カリウム・二酸化ケイ素等によって燃焼炉が傷みやすいなどの問題を抱えています。
しかし、藤崎電機のグループ会社で、今回の事業に参画するガイアパワーによると、これらの問題を解決し、竹の育成、タケノコの販売、竹材の燃料化による発電という循環型エコシステムの構築を実現化しつつあるとしています。例えば、炉の課題は、前述のようにランビォン社との共同開発により、世界初の竹の燃焼炉を開発しこの問題を解決しています。
この続きを読むには会員登録(無料)が必要です。
無料会員になると閲覧することができる情報はこちらです
執筆者情報

一般社団法人エネルギー情報センター
EICは、①エネルギーに関する正しい情報を客観的にわかりやすく広くつたえること②ICTとエネルギーを融合させた新たなビジネスを創造すること、に関わる活動を通じて、安定したエネルギーの供給の一助になることを目的として設立された新電力ネットの運営団体。
企業・団体名 | 一般社団法人エネルギー情報センター |
---|---|
所在地 | 東京都新宿区新宿2丁目9−22 多摩川新宿ビル3F |
電話番号 | 03-6411-0859 |
会社HP | http://eic-jp.org/ |
サービス・メディア等 | https://www.facebook.com/eicjp
https://twitter.com/EICNET |
関連する記事はこちら
一般社団法人エネルギー情報センター
2025年04月29日
日本の電力インフラは現在、大きな変革期を迎えています。再生可能エネルギー(以下、再エネ)の導入拡大やEV(電気自動車)充電施設の増加に伴い、電力設備の管理・保守の重要性が一層高まっています。その中で、電気主任技術者は電力設備の安全を確保し、安定した電力供給を支える要となる存在です。 しかし近年、電気主任技術者の人材不足が深刻化しており、電力業界全体に影響を及ぼしています。特に、高齢化による人材減少、資格取得の難しさ、再エネ・EV充電施設の急増がこの問題を加速させる要因となっています。 本コラムでは、電気主任技術者の人材不足の背景と現状を明らかにし、今後の電力業界における影響についてお伝えします。
一般社団法人エネルギー情報センター
2025年04月16日
FIT制度、2025年度から太陽光・風力・水力の一部が単価変更、再エネ賦課金は3.98円で前年度から14%増加
本記事では、2025年度以降のFIT(固定価格買取)制度に関する再エネの動向を見ていきます。太陽光発電は初期投資支援スキームが導入され、また洋上風力は価格調整スキームが導入されるなど、今後新たな形での再エネ事業開発が進められることが期待されます。
一般社団法人エネルギー情報センター
2025年03月23日
第7次エネルギー基本計画について(後編) :原子力発電の役割とカーボンニュートラル実現に向けた政策
2024年12月17日、経済産業省は「第7次エネルギー基本計画」の原案を公表しました。前編では、日本のエネルギー政策の基本方針や2040年度の電源構成の見通しについて解説し、再生可能エネルギーの導入拡大や火力発電の比率低減が進められている現状をお伝えしました。 後編では、これらの課題に対する解決策として、原子力発電の役割と再評価、エネルギーコストの見通し、そしてカーボンニュートラル※1達成に向けた政策について詳しく解説します。
一般社団法人エネルギー情報センター
2025年03月19日
2025年2月、電力先物市場は過去最高の取引高を記録し、3月にはさらに更新。加えて、ヘッジ会計の適用が進展し、市場の透明性と安定性が向上しています。本コラムでは、最新の市場動向とその影響を解説します。
一般社団法人エネルギー情報センター
2025年02月27日
経済産業省は2024年12月17日、有識者会議(総合資源エネルギー調査会・基本政策分科会)を開催し、今後のエネルギー政策の方向性を定める「第7次エネルギー基本計画」の原案を公表しました。本稿では、その概要を2回に分けて解説します。前編では、計画の背景や基本方針、2040年度の電源構成の見通しについてお伝えします。