再エネの電源比率を高める効率的運用、東京や中部での導入促進が課題

2017年07月25日

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

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7月21日、経済産業省は再エネの導入拡大を可能とする需給調整資源の活用のあり方を、電力潮流の挙動とともに詳しく分析した「電力需給モデルを活用したシミュレーション調査」の調査報告書を発表しました。

再生可能エネルギーと電力需給の管理

2015年のCOP21で採択されたパリ協定において、21世紀後半に世界の温室効果ガス排出量を実質的にゼロにする厳しい目標が言及され、ゼロ・エミッションかつ安全保障にも資する再エネの導入は今後も拡大すると考えられます。

日本においては、経済産業省の長期エネルギー需給見通しがあり,その中では日本の2030年の再エネの電源比率を22%~24%まで拡大する目標が示されています。しかし、時間帯によって出力変動のある再生可能エネルギー発電の本格導入に向けては、系統の需給運用を考慮することが必要です。なかでも、固定買取価格制度の導入開始以来、太陽光発電の導入が急速に増加したことが、系統へ大きく影響すると考えられています。

そうした背景もあり、経済産業省は「電力需給モデルを活用したシミュレーション調査」の調査報告書を発表しました。この報告書では、電力需給モデルを用いた数値シミュレーション分析により、再エネの導入拡大を可能とする需給調整資源の活用のあり方を、電力潮流の挙動とともに詳しく分析しています。

地域間で格差のあるノーダルプライス

長期エネルギー需給見通しでは、2030年の再エネ電力比率を22%~24%と想定しています。今回の報告書によるシミュレーションでは、長期エネルギー需給見通しの想定に加えて、再エネ導入が3割(32%)を達成するケースとの比較が行われます(図1)。

この再エネ3割増加のケースでは、環境省によるポテンシャル推計も踏まえ、風力発電と太陽光発電導入量は、長期需給見通しの想定(「基準ケース」)と比較して、倍増すると想定されています。

再生可能エネルギー発電設備量に関する想定

図1 再生可能エネルギー発電設備量に関する想定 出典:経済産業省

ノーダルプライスは、系統に関するコスト負担を考える上で重要な要素です。ノーダルプライスとは、ある地点の需要が単位量[kWh]増えた場合に追加的にかかる電力供給コストです。送電混雑や送電ロス等がなくなった場合は理想的な形といえますが、そうすると各地点のノーダルプライスは同一となります。逆に、系統の混雑が悪化するほどノーダルプライス格差が拡大し、託送料金も高騰します。

日本のノーダルプライスは、風力導入量の大きい北海道,東北,九州地域では再エネの余剰電力の影響で、ノーダルプライスが相対的に低下傾向となります。特に再エネ3割ケースでは、再エネ導入量の増加に伴う余剰電力の大規模な発生により,電力が供給過剰気味になるため,全国的にノーダルプライスが低下します。北海道や東北においては、特に電力が余るため、ノーダルプライスの低下が著しく地域間の格差が広がっています(図2)。

図2 各電力供給管内の電力ノーダルプライス(年間平均値) 出典:経済産業省

北海道、東北および九州の3地域で高い出力制御率

電力が特に余る地域については、出力制御の必要性が出てきます。しかし、再生可能エネルギーによる給電を最大限有効活用するには、出力抑制は最小化することが望ましいです。

この出力制御について、特に再エネ3割ケースでは、北海道、東北および九州の3地域では頻繁に発生し、対策の必要性が高いです(図3)。こうした出力制御を低下させる方法は様々ありますが、以下にて地域間の再エネ導入量を最適化すること、そして連携線自体を強化する方法の効果を見ていきます。

太陽光発電と風力発電の出力抑制率

図3 太陽光発電と風力発電の出力抑制率 出典:経済産業省

手法① 地域間で再エネ電源を最適化、東京や中部で再エネを促進

現在、太陽光等の自然変動電源は、九州や北海道地域などを中心に導入が進んでいます。そのため、こうした地域では電力需要の規模に対して自然変動電源の出力が相対的に大きく増加する時点が既に現れており、需給運用が困難となる要因になります。

そのため、各地域で再エネの導入量を最適化することで、出力抑制を少なくすることができます。特に東京や中部地域で再エネ発電を促進する「再エネ最適化ケース」では、太陽光の出力抑制が各供給エリアでほぼゼロとなります。加えて、九州等で太陽光余剰電力の発生が回避され、基準ケースに比べ、日本全体として電力ノーダルプライスの平準化が進みます(図4)。

(左)太陽光の出力抑制、(右)電力ノーダルプライス

図4 (左)太陽光の出力抑制、(右)電力ノーダルプライス(再エネ最適化)  出典:経済産業省

手法② 電力の余る北海道などでは連携線を強化

再エネの出力抑制を少なくする方法として、連携線自体を強化する方法があります。仮に、北本連系線、東北域内幹線(秋盛幹線/岩手幹線、十和田幹線、北上幹線、奥羽幹線)、関門連系線の送電線容量が基準ケースに比べ2倍に増強される場合は、太陽光の出力抑制率は全国で1.7%から0.7%まで改善します。また、ノーダルプライスも各地域間にて平準化が進むこととなります(図5)。

(左)太陽光の出力抑制、(右)電力ノーダルプライス (連系線増強)

図5 (左)太陽光の出力抑制、(右)電力ノーダルプライス (連系線増強) 出典:経済産業省

連系線容量を削減したケース、電力システム総コストの増加

連系線の運用に制約がかかるケースでは、連系線の容量制約により、太陽光、風力の出力抑制率が増加し、システム総コストも増加します。基準ケースに比べ、連系線、周波数変換所の運用容量が75%減少する「連系線制約ケース」に関しては、電力システム全体の総コストが200億円以上増加することとなります(図6)。

そのため、地域間の電力を融通する広域メリットオーダーの実現は、再エネ電力の効率的運用だけではなく、電力コスト全体の抑制に貢献すると考えられます。

電力システム総コストの比較

図6 電力システム総コストの比較 出典:経済産業省

電力システムの効率運用、再エネ導入は東京・中部、連携線強化は北海道・東北・九州

今回の報告では、電力システムを効率的に運用するためには、再エネ導入は東京・中部を中心に、そして連携線強化は北海道・東北・九州を重点的とすることが示唆されています。

例えば太陽光発電は、電力需要や調整容量の大きい東京、中部電力管内等で導入を進めることで、電力ノーダルプライスの価格水準が系統全体で平準化する傾向が見られました。

連携線強化に関しては、再エネ導入が進んでいる北海道、東北、九州地域の連系線容量を増強した場合、系統全体でのノーダルプライスの平準化の傾向が見られました。逆に,国内の連系線容量の運用容量が減少した場合、電力コストの上昇や再エネ出力抑制量の増加をもたらすことが示されました。

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