震災における太陽光発電取り扱いの留意点、素手で触れると感電する恐れ
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2016年04月20日
一般社団法人エネルギー情報センター
4月19日、一般社団法人太陽光発電協会は「震災によって被害を受けた場合の太陽光発電システム取り扱い上の留意点 」の内容を修正・発表しました。このコラムでは、太陽光発電における取り扱い留意点のほか、地震が発生した際のリスクヘッジについても見ていきたいと思います。
震災で被害を受けた太陽光発電、触らず業者に連絡
太陽光発電とは、太陽の光エネルギーを電気に変換する発電方式のことです(図1)。この太陽光発電について、地震の損壊を受けた機器の取り扱いについて見ていきたいと思います。
「倒壊の危険がある家屋に設置された太陽光発電」については、漏電の危険性がありますので、分電盤の遮断機を切りパワーコンディショナの運転ボタンを停止にして下さい。その後、ご購入の販売・施工業者に連絡し、適切な処置を依頼して下さい。
「倒壊した太陽光発電システム」について、太陽電池パネルに太陽の光が当たれば発電する可能性があります。素手などで触れると感電する恐れがありますので、触らないよう注意して下さい。
- 破壊されていても感電の恐れがありますので、触らない様にして下さい。
- 被害への対処の実施にあたっては、販売・施工業者に連絡し適切な処置を依頼して下さい。
図1 住宅用太陽光発電システムについて 出典:一般社団法人太陽光発電協会
太陽光発電で停電の対応が可能なケースも
太陽光発電は、停電時に自立運転ができる場合があります。そういったケースでは、炊飯、湯沸かし、携帯電話充電等の利用が可能となります。
自立運転中に異常を感じたら中止し、業者に連絡してください。自立運転については、環境省の太陽光発電の使い方に関するパンフレットや、各製品の取り扱い説明書をご確認ください。
太陽光発電の破損は、保険が利用できる場合も
太陽光発電には各種の保険がありますが、保険の種類によっては、地震による破損が補償対象となっているケースがあります。ただし、メーカーなどによって補償制度の内容には違いがあるので、注意が必要です。
一般的に自然災害補償の補償範囲は、火災、落雷、ひょう、大雪、台風、水害となっており、地震と噴火は補償対象から外れる場合が多いです。そのため、まずは補償を受けられるのか確認してみることを推奨いたします。
南海トラフで発生する地震、30年以内に70%程度の確率で発生
これまでは、地震が発生した際の太陽光発電の取り扱いに関する注意点について見てきました。以下にて、将来的に地震が発生するリスクと、今後災害が発生した際における太陽光発電の保険について概観していきたいと思います。
地震調査研究推進本部によると、30年以内における南海トラフ(マグニチュード8~9クラス)が発生する確率は、70%と推計されています。その他、日本には各種の地震リスクが潜在しており、一例として関東地方における主要な地震発生確率を下記の表にて記載しておりますので、ご参考下さい(表1)。
地震 | マグニチュード | 地震発生確率(30年以内) | ||
---|---|---|---|---|
海溝型地震 | ||||
三陸沖から房総沖 | 東北地方太平洋沖型 | Mw8.4〜9.0 | ほぼ0% | |
三陸沖北部から房総沖の海溝寄り | 津波地震 | Mt8.6−9.0前後 | 30%程度(特定海域で7%程度) | |
正断層型 | 8.2前後 Mt8.3前後 | 4%〜7%(特定海域で1%〜2%) | ||
福島県沖 | 7.4前後(複数の地震が続発する) | 10%程度 | ||
茨城県沖 | 6.9〜7.6 | 70%程度 | ||
繰り返し発生するプレート間地震 | 6.7〜7.2 | 90%程度もしくはそれ以上 | ||
相模トラフ | 相模トラフ沿いのM8クラスの地震 | 8クラス (M7.9〜M8.6) |
ほぼ0%〜5% | |
プレートの沈み込みに伴うM7程度の地震 | 7程度 (M6.7〜M7.3) |
70%程度 | ||
南海トラフ | 南海トラフで発生する地震 | 8〜9クラス | 70%程度 |
表1 関東地方における海溝型地震の発生確率 出典:地震調査研究推進本部
日本付近でマグニチュード6以上の地震が全世界の20%発生
日本は、地形・地質・気象などの自然的条件から、台風・豪雨・豪雪・洪水・土砂災害・地震・津波・火山噴火などによる災害が発生しやすい国土となっています。
世界全体に占める日本の災害発生割合は,2009年時点でマグニチュード6以上の地震回数20.5%、活火山数7%となっており、世界の約0.25%の国土面積に比べると、非常に高い割合となっています(図2)。
図2 世界全体における日本の地震と活火山の割合 出典:内閣府
全国各地で震災のリスク
日本は世界でも珍しい4つものプレートが集まる地点となっており、地震が多発する要因となっています。また、日本には約2000の活断層があると推定されており、全国各地で地震が発生する可能性があります(図3)。
図3 30年以内に地震が起こる可能性(主な海溝型地震と活断層) 出典:地震調査研究推進本部
太陽光発電における地震の備え、保険商品でもリスク軽減が可能
太陽光発電に関しては、一例として保険を利用することで地震の負担を軽減する手段があります。例えば、三井住友海上火災保険は、メガソーラー事業者向けに、保険とデリバティブを組み合わせた「メガソーラー総合補償プラン」の販売を2012年6月20日に開始しています。
このプランは、火災保険(財物・利益)、賠償責任保険、日照補償デリバティブをパッケージ化したものです。円滑な事業運営を妨げる可能性のある主要なリスクを補償しており、加えてメガソーラー事業者ごとに、補償する条件や保険金額などを個別に設計することが可能です。地震リスクについては事業者・施設概要などに応じて個別に引受可否を検討する形です(表2)。
金額目安の例として、定格出力3MW、発電設備価格10億円の場合の年間保険料は、火災保険(企業財産包括保険 ※財物のみ)は約220万円、施設賠償責任保険(支払限度額5億円、免責金額なし)は約30万円です。金融商品に該当する日照補償デリバティブ(免責日照時間:2,000時間)の年間プレミアムは約180万円となっています。
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執筆者情報
一般社団法人エネルギー情報センター
EICは、①エネルギーに関する正しい情報を客観的にわかりやすく広くつたえること②ICTとエネルギーを融合させた新たなビジネスを創造すること、に関わる活動を通じて、安定したエネルギーの供給の一助になることを目的として設立された新電力ネットの運営団体。
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