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デマンドレスポンスの市場環境

株式会社西原エネルギー

代表取締役 高橋洋平

デマンドレスポンスの市場環境の写真

このシリーズでは第1回目にデマンドレスポンス(DR:Demand Response)の概要を鳥瞰し、第2回目はデマンドレスポンスをビジネスとして手掛けている企業を紹介してきました。第3回目の今回はデマンドレスポンスの市場環境に注目したいと思います。

デマンドレスポンスの市場環境

結論を先に書くと、需要家側エネルギーリソースの効果的な活用を促進する機運が高まり、デマンドレスポンスの商用化に向けて環境整備が急速に立ち上がりつつあります。

下図1のように需要家側エネルギーリソースの市場規模は巨大です。この市場が動き始めると大きなビジネスチャンスが生まれます。今回のレポートでは日本のアグリゲーションビジネスの全体方針を策定する為に設置された経産省の「エネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネス検討会」、及び同様に米国カリフォルニア州の「Demand Response Auction Mechanism(略称: DRAM)」という実証実験の概要をレポートします。

需要家側エネルギーリソースの規模間

図1 出典:経産省「エネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネス検討会」資料

今年の1月29日に経済産業省で「エネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネス検討会」が開催されました。会議資料の中で、検討会設置の背景についてこう述べています

「平成27年11月26日の“未来投資に向けた官民対話”の場において、「家庭の太陽光発電やIoTを活用し、節電した電力量を売買できる『ネガワット取引市場』を、2017年までに創設をする。そのため、来年度中に、事業者間の取引ルールを策定し、エネルギー機器を遠隔制御するための通信規格を整備する」という総理指示が出されたところ。それらを受けて、再エネ、省エネ、電力システム、情報通信など部局横断的に存在する様々な課題を整理・総合的に議論するためのプラットホームを構築し、アグリゲーションビジネスの全体方針を策定するとともに当該ビジネスの発展を支援することを目的とする。」

アグリゲーションビジネスで想定されるサービスは下図2のように多岐に渡ります。

想定される主なサービス

図2 出典:経産省「エネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネス検討会」資料

デマンドレスポンスの商用化の立ち上がりに関して必要不可欠な環境整備が2つあると思います。1つ目は需要家からアグリゲートしたネガワットを自由に売買できる市場の創設です。実際に先行市場である米国では、DRアグリゲータはPJMなど電力卸取引市場でネガワット電力を売買することにより成長をしてきました。例えば最大手のEnerNoc社の2014年の売上472百万ドルの70%がPJMを始めとする卸取引市場向けでした。

2つ目は電力会社の協力です。日本では永らく系統の需給調整は各電力会社が自前で賄ってきました。しかし今回の検討会では東京電力が下図3の通り「アグリゲーションビジネスにおいて調整力への参加を期待したい」と踏み込んできていることで、市場が新規参入者に開放される方向です。

送配電事業者が需給バランス調整・周波数維持において期待すること

図3 出典:経産省「エネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネス検討会」資料

電力卸取引市場と電力会社の積極的な姿勢。今回の「エネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネス検討会」はこの2つの条件が満たされており、商用化への立ち上がりが期待されます。

更に今回の検討会での議論は「予算措置に適切に反映していく」との事で、政策をおカネの面でもバックアップしていく姿勢が明示されています。一例として今年度から約30億円の予算が計上されたバーチャルパワープラント構築事業費補助金が挙げられます。

バーチャルパワープラント築事業費補助金

図4 出典:経産省「エネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネス検討会」資料

この通り、日本のアグリゲーションビジネスは商用化に向けて正しい方向に動き始めたといえると思います。一方で自由化先進国の米国での動きはどうでしょうか?こちらも結論から言うと、日本より数年先行し、既にカリフォルニア州では今年の6月から「Demand Response Auction Mechanism(略称: DRAM)」という実証実験が開始されます。日本にとっても制度的に参考になるプログラムですので、制度の概略をレポートします。

カリフォルニア州は2020年までにピーク負荷の5%(640MW相当)をデマンドレスポンスで賄う目標を掲げてます。その大目標の下、DRAMは電力会社のResource Adequacy(RA)達成の為の調達先候補の1つとして、デマンドレスポンスなどの需要側エネルギー・リソースでRAの試験運用を行う事を目的に設立された実証プログラムです。RAとは、カリフォルニア州ではピーク電力量の115%までの予備力購入を電力会社に課している法的義務を指します。現在はほぼ全てのピーク電源がガス火力発電となっており、コスト高です。前回のレポートで紹介した通り、通常発電コストは1メガワット当たり約30ドルに対し、こうしたピーク電源では最大で1メガワット当たり2000ドルに跳ね上がるようです。

DRAMでは最低22MWの調達を電力3社(PG&E、SCE、SDGE)に義務付け。内最低20%は住居用エネルギー・リソースからの調達を義務付けています。カリフォルニア州ではDRAMを通じてアグリゲーターに系統調整の卸売市場への直接参加を促し、需要側エネルギーのグリッド(送配電網)への取り込みを狙っています。下図5がDRAMのプログラムスケジュールです。2016年6月から入札開始の計画です。

DRAMのプログラムスケジュール

図5 出典:Olivine社資料

DRAMにはEnerNocなど従来からの大手DRアグリゲーターに加え、分散電源型エネルギー・リソース(HEMS、家庭用太陽光、EVバッテリーなど)を中心とするアグリゲーターが多数参加している点が斬新です。

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