太陽光発電の買取価格決定、新たな事業戦略への道筋を考察
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2016年02月25日
一般社団法人エネルギー情報センター
2月22日、調達価格等算定委員会は、2016年度の太陽光発電買取価格案をとりまとめました。住宅用・非住宅用ともに買取価格は引き下げられており、固定価格買取制度に頼らない新たな事業について考察します。
太陽光発電の買取価格が決定
固定価格買取制度の枠組みを定める「調達価格等算定委員会」が、2016年度の再エネ買取価格の最終案を2月22日にとりまとめました。太陽光発電に関しては、住宅用・非住宅用共に買取価格が引き下げられ、その他の電源は2015年から据え置きとなります。
住宅用の太陽光発電は2円の引き下げ
住宅用となる10kW未満の太陽光発電に関しては、2円の引き下げとなっております(図1)。システム費用、運転維持費が下落し、発電効率や売電している比率が上がったため、昨年(2015年)の買取価格では利益が生まれ過ぎるといった判断です。太陽光発電の設置者が適正なIRRで利益が発生するよう、2円の引き下げという形になりました。
図1 住宅用太陽光の買取価格 出典:調達価格等算定委員会
産業用の太陽光発電
産業用となる10kW以上の太陽光発電については、2015年の7月以降と比較し、3円の引き下げとなります(図2)。主な要因としては、システム費用が昨年と比較し、安く設定されたからです。システム費用が安い場合、買取価格が安くなっても、太陽光の設置者は利益が得られるとの判断です。
システム費用が引き下がった主な原因としては、モジュール単価が低くなっているほか、費用を抽出する範囲の変更が挙げられます。太陽光発電は案件によって設置費用にばらつきがありますが、昨年は上位19~20%の費用からシステム価格を算出したのに対し、2016年度は上位15%として算出されています。固定価格買取制度においては、より競争的な価格水準を採用することとされているので、より効率的な上位15%というシステム費用を規定値にしたと考えられます。
図2 産業用太陽光の買取価格 出典:調達価格等算定委員会
全電源の買取価格
太陽光発電以外の買取価格は、昨年から据え置きとなります(図3)。
再エネの普及促進についてですが、来年の2017年度には固定価格買取制度を改定することが決まっています。制度的に抜本的に変わり、太陽光では大規模な発電設備を対象に入札方式を導入する一方、住宅用の太陽光には価格低減方式を採用します。そのほかの電源に関しては、事業予見性の観点からも、数年先までの長期で買取価格を設定する方式になります。
図3 全電源の買取価格 出典:調達価格等算定委員会
固定価格買取制度の代替としての補助金活用
再生可能エネルギーの導入には、固定価格買取制度以外でも国等による支援を受けることができます。むしろ、固定価格買取制度の設備認定を受けると取得できない補助もあり、例えば2016年度の予算では、「再生可能エネルギー事業者支援事業費補助金」が該当します。この補助金は2016年度から新規に設置されたもので、太陽光発電の導入に係る費用を3分の2以内で補助するものです。(図4)
図4 再生可能エネルギー事業者支援事業費補助金について 出典:経済産業省
環境金融の側面からアプローチ
近年、日本においても金融面から再生可能エネルギー普及を後押しするという機運が高まっています。PRIに関しては、昨年に世界最大の機関投資家ともいわれるGPIFが署名発表、そのほか上智大学が日本の大学として初めて署名するなどの動きがありました。2月23~24日にはESG、持続可能投資、持続可能資本に関する国際会議、「RI Asia 2016」が開催され、今後も環境・再生可能エネルギー分野への期待は高まっていくと考えられます。
iPhoneを生み出したAppleのデータセンターは、100%がグリーン電力でまかなわれています。Googleのオフィスも、同様に100%がグリーン電力です。これらは、顧客へのPRという側面の他にも、金融・投資家等からの評価を考慮した決定に基づくものだと考えられます。日本においては散発的なメガソーラーの設置等は見られますが、海外のようにまとまった形でのグリーン電力活用事例はまだまだ少ないように感じられます。しかし、日本の場合でも再エネファンドを取り扱っている銀行も増えており、今後は投資という側面でもより再エネ普及が推進されると考えられます。
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執筆者情報
一般社団法人エネルギー情報センター
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