エネルギーで地域を元気にする仕事
発売日:2025年7月15日
出版社:学芸出版社

まちに貢献する地域エネルギー会社で働く! 全国各地で地域エネルギー事業を通じたまちづくりが加速している。再生可能エネルギーは地方にこそポテンシャルがあり、地域課題解決と併せて実施したり、利益を地域に再投資できる。本書は、地域エネルギー会社のほか、コンサル・自治体・省庁で働く18人のリアルな声から、地域を良くする仕事の魅力・やりがいを伝える。
著者情報
一般社団法人ローカルグッド創成支援機構(編著)
地域エネルギー会社や自治体などで構成される、日本最大の地域新電力の団体。地域経済循環や地域脱炭素化を目指す地域エネルギー会社の設立・運営支援を行う。地域活性化を支援するプラットフォームとしてローカルにグッドな取組を幅広く推進。
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解説
地域密着型のローカルな現場で、地球の未来に向け脱炭素を実践するグローバルな働き方をする。そんなカッコいい仕事がしてみたい方へ。仕事を始めたきっかけ、日々の業務、どんな活躍ができるかなど、リアルな声を集めました。
本書のコンセプトと構成
- はじめに
- 1章 全国で拡大中! 地域エネルギー会社の意義と魅力 1 地域エネルギー事業は、地域からの「お金の流出」を防ぐ
- 2章 まちを元気にする地域エネルギー会社のリアル 01 地元企業と一丸となり福島の再生と発展を後押しする─須賀川瓦斯/橋本直子
- 3章 地域エネルギー会社をサポートする 11 自治体とともに地域脱炭素に挑戦する─テス・エンジニアリング/平間 大
- おわりに 付録 一般社団法人ローカルグッド創成支援機構の紹介
2 地域エネルギー会社が、地域共生型再エネを増やす
3 企業が求める再エネを作り、地域の競争力とする
4 地域エネルギー会社が「ローカルシンクタンク」となる
5 地域新電力との違い
6 地域エネルギー会社で働く魅力
02 復興まちづくりから環境未来都市へ、電気事業で貢献する─東松島みらいとし機構/髙橋 巧・佐々木萌子
03 エネルギーの地産地消と脱炭素で「やまがた創生」を実現する─やまがた新電力/遠藤 駿
04 電力需給管理の内製化で地域の自立を目指す─秩父新電力/帶川恵輔
05 地域で生まれた電気代を通じて地元を応援する─湘南電力/土井悠史
06 電気事業の収益を活用して山村地域を活性化する─三河の山里コミュニティパワー/鈴木雄也
07 人材を引きつける職場環境をつくる─ローカルエナジー/宇田川玲子・渡辺綾子・安田直子
08 木質バイオマス発電で地域資源を循環させる─うすきエネルギー/小川拓哉
09 環境先進国ドイツでの学びを水力発電事業に活かす─太陽ガス/及川斉志
10 官民連携で再エネ&マイクログリッド事業と人材育成を進める─ひおき地域エネルギー/中尾 雄・天辰恵里
12 地域新電力が安心して地産地消できるインフラづくり─まち未来製作所/青山英明
13 前例なきところからオリジナルのゼロカーボンシティをつくる─瀬戸内市/坪本美希
14 地域の課題解決と脱炭素の取り組みをサポートする─環境省/清間笑奈
著者インタビュー
日本では若年層を中心に、地方から大都市圏への人口流出が依然として続いている。一方で、地方におけるまちづくりに関しては追い風も吹いている。2024年に誕生した石破茂新政権が地方創生の支援予算の倍増を決定するなど、再び地方創生への国民的関心が高まろうとしている。これまでの地方創生政策の反省を踏まえ、より効果的で実効性のある地方のまちづくりとそれを担う人材に多くの注目が集まることとなる。若年層を中心にSDGsへの関心が高いことも地域人材の獲得と育成を後押ししている。地域に存在する未活用の資源は、多くの志ある若者にとって魅力の対象となっている。日本をはじめとする先進国で格差が拡大し、資本主義の行き詰まりと市場の失敗が露呈する中で、地方が抱える多くの社会課題は、逆に若年層の眼にはその課題を解決するイノベーションの源泉と映りつつある。地方にこそ新たなフロンティアがあるというのが、先端的な若者層の共通認識となろうとしている。
人生100年時代を迎えようとする中で、人々のキャリア意識も大きく変わりつつある。大学を卒業して有名な大組織に就職し、そこでキャリアの大半を送るような人生は終焉を迎えようとしている。そうした直線型キャリアを志向するのではなく、働く組織や場所を変え、そこで多様な経験と学びを蓄積していくことがより豊かな人生につながるという、「ライフシフト」が大きな潮流となり、私たちの生き方を変えつつある。コロナ禍を経て定着したリモートワークと働き方の民主化の動きも、こうしたライフシフトの潮流を加速させている。
ローカルグッド創成支援機構においても、こうした大きな社会のトレンドをテコとしながら、地域新電力事業者のもとに先端的人材を引き寄せ、その人材を中核としながら、各地方独自のまちをつくり上げていく努力が極めて重要となる。当機構では、このような動きを実現するため、2024年から地域・人材共創機構と連携しながら、会員の協力も得つつ意欲ある人材をマッチングさせる試行に着手している。
他方、地域エネルギー会社で働く人々の仕事の実態は、必ずしもわかりやすいとは言えない。地域エネルギー事業には、需給管理をはじめとする相当の専門スキルや知識が求められるが、その実態は業界外の人々に広く周知されているとは言い難い。まして地域エネルギー事業から派生し拡大していくまちづくり関連の事業については、地域ごとに独自の個性や取組みの違いがあるため、それをひとつのマニュアルのような形に定型化することは難しい面もある。
本書はそうしたハードルや難点を克服し、日本各地で活躍する18人の皆さんのリアルな仕事ぶりを描き出し、その魅力を伝えるとともに、多くの読者の方々に地域で仕事をする実感を体感していただくことを目的に編集されたものである。事業の性格上、仕事の内容については共通する部分も多い反面、各地の置かれた状況やステークホルダーとの関係性の違いを反映して、地域ごとに仕事の内容やスタイルが異なっていることも多い。しかし、こうした地域エネルギー会社が直面している挑戦の多様性も、そこで働く魅力と分かち難く結びついていると言うこともできる。
ローカルグッド創成支援機構は、「地方を良くする」「ローカルをグッドにする」という大きな目標を掲げ、「人に魅力ある強い仕事を地方につくる」ために2014年9月に創立された組織である。私たちは、2011年3月11日に発生した東日本大震災の凄惨な経験を通じて、地域コミュニティの大切さと地方の持つ明るさや強さを目の当たりにしてきた。こうした経験を踏まえて、当機構は先の目標を掲げ、地域新電力事業を中核に据えつつ、10年間の歩みを続けてきた。2024年12月現在、会員は88社を数え、地域新電力事業者の団体としては、日本最大規模の組織となっている。
私たちが考える地方の良さ(ローカルグッド)とは、地方が環境的・社会的・経済的に自立した主体性を持つことである。しかし、この自立に必要となる要素が、しばしば地方で不足するケースがある。例えば人材や経験の不足、あるいは市場に対して固定費が大きくなり過ぎるといった課題である。こうした課題を解決するために、私たちは地域が限られた資源で活動するための「Share」、相互に補完し合う枠組み「Open」、そして後発を育て連携する仕組み「DIT(Do It Together)」の3つを活動の基本理念に据え、「地域新電力インキュベーションプログラム(IP)」をはじめとする支援プログラムを開発してきた。
この地域新電力IPの特長は、事業のキモとなる需給管理を中心とする専門業務を未経験の地元の皆さんにトレーニングし、地域が自ら運営できるようにすることである。これにより、日本各地で独自に知的能力を有する雇用を創出し、運用ノウハウを蓄積し内製化することで、それまで地域から流出してきた資金を域内にとどめ、次なる投資につなげることが可能となる。こうして、地域新電力事業によるエネルギーの地産地消と地域循環は、資金と人材の地域循環をもたらし、ひいてはローカルグッドの実現につながることになるのである。
現在当機構では、この地域新電力IPを継続し充実を図るとともに、その経験も踏まえて、まちづくりなどの新たなプログラムの開発を進めていく方針であり、2024年10月に鹿児島県日置市で開催された10周年記念全国大会においては、「次の10年、エネルギーマネジメント会社からローカルマネジメント会社へ」を新たなスローガンに掲げた。次の10年で地域脱炭素化の担い手として地域の企業とも連携してそれを牽引していく。会員が各自治体にとって頼りになるパートナーないし相談相手へと脱皮していくために必要なのが、新たな人材の獲得と育成にほかならない。
日本各地で活躍する18人の皆さんの声をお伝えすることで、想いを持ってエネルギーを通じたまちづくりに挑戦する方々を増やしたいというのが、本書の原動力となっている。単線型・直線型のキャリアの時代が終わろうとしている現在、意欲と志のある方々が一人でも多くこの仕事に関心を持たれ、新たなキャリアに挑戦するきっかけとなることを願ってやまない。
ローカルグッド創成支援機構代表理事
大滝精一
(「はじめに」より)
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