蓄電池×新テクノロジー 第4回
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一般社団法人エネルギー情報センター

蓄電池×新テクノロジーについて第4回に渡ってお伝えしています。前回はIoTと電力・エネルギービジネスの密接な関係についてお伝えしました。今回は進化するロボット技術の最新動向についてお伝えします。
執筆者:一般社団法人エネルギー情報センター
理事 江田健二
富山県砺波市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア株式会社)に入社。エネルギー/化学産業本部に所属し、電力会社・大手化学メーカ等のプロジェクトに参画。その後、RAUL株式会社を起業。主に環境・エネルギー分野のビジネス推進や企業の社会貢献活動支援を実施。一般社団法人エネルギー情報センター理事、一般社団法人CSRコミュニケーション協会理事、環境省 地域再省蓄エネサービスイノベーション委員会委員等を歴任。
記事出典:書籍『2時間でわかる 蓄電池ビジネスの未来: ウィズコロナ時代に拡大する20兆円市場に注目せよ!』(2020年)
進化するロボット技術の最新動向
蓄電池と関連する技術として、ロボットにも注目が集まり、市場も拡大しつつあります。そもそもロボットとはどのようなものでしょうか。
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、ロボットを「センサー、知能・制御系、駆動系の3つの要素技術を有する、知能化した機械システム」と定義しています。ロボットの役割は、産業用ロボットのような「生産環境における人の作業の代替」、無人システムのような「危機環境下での作業代行」、日常生活の中での家事支援や介護支援等の「日常生活支援」に大別されます。ロボットの中でも、近年特に今注目されているのが「介護用ロボット」ですが、大きく分けると次の3種類があります。
- 介護支援型
- 自立支援型
- コミュニケーション/セキュリティ
移乗や入浴、排泄などの介護業務を支援するロボット。人が無理な姿勢で作業したり重いものを持ったりするなど、身体的に負担のかかる仕事をする際のサポートを行う。
歩行や食事、リハビリなどを一人でできるようサポートして、要介護者の自立を支援するロボット。要介護者の膝に装着して膝付近の負担を減らし、自立歩行や立ち座りの動作を支えるロボットなどがある。
コミュニケーションを図ったり、センサーによって要介護者の様子を見守ったりするロボット。お喋りをしたり、音楽をかけたりするなど、レクリエーションに使用できる機能が備わったものもあり、癒し効果にも活用されている。
電気を収穫する「エネルギーハーベスティング」
ここで、これからの蓄電池の活用にとって重要になってくるであろう、注目の最新技術についても触れておきます。それは「エネルギーハーベスティング」というものです。エネルギーハーベスティング技術とは、人やモノの振動、照明の光や熱など、周りの環境から採取できる微小なエネルギーを収穫(ハーベスト)して、電力に変換する技術のことです。これは「環境発電技術」とも呼ばれており、今後、市場規模が世界的に拡大していくであろうといわれています。このエネルギーハーベスティングでは、収穫した電力を貯めておく入れ物が必要です。その入れ物が蓄電池です。
具体的にどうやって発電するのかというと、例えば歩く、階段を登る、自転車をこぐ、パソコンのキーボードを叩くといったエネルギーで発電するのです。イスに座っていて貧乏揺すりをしたときに発電されて、その電気を携帯に充電できるイスも実用化されています。
このようにちょっとした揺れでも発電できる技術が生まれ始めています。将来、スマートフォンにも発電装置が付いていて、スマートフォンを振るだけで発電できてしまう、というシステムも開発されるかもしれません。すでに、人が話をしている声(音声)を電気エネルギーに変換できるシステムを研究開発している「音力発電」という会社もあります。こうしたシステムがスマートフォンに搭載されていれば、おしゃべりしているだけで発電できてしまいます。
エネルギーハーベスティングによって得られるエネルギーの量は大型発電システムなどに比べると多くありません。ですが、エネルギーハーベスティングで小まめに発電した電気を上手く使うシステムができればとても効率的ですし、省エネルギーにも貢献できます。
今後、エネルギーハーベスティング的な発想で、生活の中の様々な振動や活動エネルギーが電気エネルギーに変換できるシステムが普及していくでしょう。今、人間の活動エネルギーのほとんどは無駄にされています。それを少しでも電気エネルギーに変換して蓄電池に貯めることができれば、これほど効率的なことはありません。
エネルギー×最新テクノロジーの事例
最後に、エネルギー関連業界でクラウドコンピューティング、AIなどデジタル技術を活用した先進的な取り組みを行っている国内外企業の事例を紹介しておきましょう。
E・ON
ドイツの大手エネルギー会社E・ONは、家庭向けに太陽光発電と蓄電池を活用したソリューション提供を急速に拡大していく方針を打ち出しています。顧客が同社から購入した住宅用太陽光発電により発電された電気の余剰分を引き取り、顧客が電気を必要とする時(夜間など)に同社側から電力を供給する、というものです。蓄電池を設置していなくても、太陽光発電で余った電力を仮想の電力口座に貯めておくことができる、というコンセプトです。
SENEC
2009年に設立し、1.8万台以上の蓄電池をドイツ国内外で販売している蓄電池ベンチャーです。2015年に電力小売事業者登録した同社は、月額手数料に応じた一定の電力量をクラウドから引き出すことができる「SENEC.cloud」を提供しています。
ゾンネン
ドイツでは、住宅用太陽光発電と家庭用蓄電システムを活用した「クラウド・コミュニティモデル」が注目を集めています。
ドイツの蓄電システムベンチャー、ゾンネンはクラウド・コミュニティモデル「ゾンネンコミュニティ」を提供しています。これは、コミュニティの蓄電システム内にある電力が、コミュニティ参加者(顧客)のニーズに応じて自動的に融通されるというものです。
ゾンネンコミュニティの強みは、グリッドパリティ(再生可能エネルギーによる発電コストが既存の電力のコストと同等かそれより安価になる)の達成、ゾンネンバッテリーの価格低下、ドイツの蓄電システムの導入補助金などです。また、将来的な電気料金の上昇によって、投資回収期間の短縮化と、大幅な収益が得られる可能性が考えられます。
伊藤忠商事
2009年に設立し、1.8万台以上の蓄電池をドイツ国内外で販売している蓄電池ベンチャーです。2015年に電力小売事業者登録した同社は、月額手数料に応じた一定の電力量をクラウドから引き出すことができる「SENEC.cloud」を提供しています。
デジタルグリッド
ブロックチェーン技術を活用した電力のP2P(Peer to Peer/ネットワーク上に存在する端末が、一対一の対等の関係で通信を行うこと)取引に注目が集まっています。新たな電力取引プラットフォームの構築を目指す企業が増加していますが、東大発ベンチャー企業のデジタルグリッドもその一つです。
2017年に設立されたデジタルグリッドは、卸電力取引所(JEPX)を介さず、発電事業者と需要家が直接取引を行うことができる新たなプラットフォーム作りに取り組んでいます。この取り組みに対し、東京ガス、九州電力、住友商事、日立製作所、清水建設、ソニーなど50社以上が出資しています。
この他にも、1万台の需要家用蓄電池を秒単位で遠隔制御する独自技術の研究開発と実証を進めているNEC、小学校に設置した蓄電池を活用したVPP運用サービスを展開している東芝エネルギーシステムズ、AIを使って家庭用の蓄電池を効率的に充電できる新サービスを開始したシャープなど、各企業が蓄電池技術を活かした様々なシステムやサービスの提供に積極的に取り組んでいます。
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