通信自由化から電力自由化を考える(4) – 自家発電の行方

2016年03月14日

株式会社ICTラボラトリー

代表取締役 鈴木浩之

通信自由化から電力自由化を考える(4) – 自家発電の行方の写真

さて、今回は自家発電の行方を、通信における公衆網と自営網の関係の変化から考えてみたい。通信では、これにより設備投資の内訳が変わり、ベンダ顔ぶれも変わっていきました。ここから読み取れることもあるはずです。

さて、今回は自家発電の行方を、通信における公衆網と自営網の関係の変化から考えてみたい。通信では、これにより設備投資の内訳が変わり、ベンダ顔ぶれも変わっていきました。ここから読み取れることもあるはずです。

2.通信産業で起きていたこと・起きていること – 設備投資

下図は米国の事例であるが、通信機器市場の内訳である。実は、通信機器市場において、通信事業者のシェアは、2000年代においては40%程度なのである。

通信機器市場における通信事業者のシェア

残念ながら、1980年代・1990年代・2010年代についての公衆網+自営網の通信機器市場データの統計がないのであるが、おおよそ、公衆網と自営網の比率は下図のようになっていると思われる。

公衆網と自営網の比率予測

なぜ、このような大規模な逆転が起きたのであろうか?

それは、通信網構成機器のこの30年間の変化を、事務所・家の風景を見れば、わかる。

以下にその構成機器を表にした。これだけ民間側の機器が増えてくれば、民間の投資の比率が増大するのは当然である。しかも、Google, Amazon, Facebook等のデータセンタ・XaaS・SNS事業者も民間の設備投資に計上されている。

通信網構成機器における年代別推移

この変化を引き起こした主要な要因を以下にリストアップする

  1. NTT民営化に伴う端末開放 – 公衆網~自営網接続の自由度が拡大し端末が多様化
  2. PC、スマートフォン等のインテリジェントデバイスの普及
  3. 競争による帯域拡大と価格下落 – Mb/s・Gb/sクラスの専用線が安価で利用可能
  4. インターネットの普及 – 社内ネット、拠点間ネット、企業間ネットの普及
  5. DSL/FTTHでのブロードバンド通信の一般家庭への浸透
  6. 民間プレイヤの増大 (家庭、企業、ISP, ウェブサービスプロバイダ、データセンタ等)

XaaS・SNS等のクラウドサービス普及とともに、データセンタの比重は更にあがっていくであろう。又、コネクテドカー・IoTの進展は、民間の設備投資を更に拡大させるであろう。

通信事業者の設備投資も全体としては増えるのだろうが、その伸び率は、金額・プレイヤ数共に増えている民間投資よりも低く、結果的に通信事業者の比率は下がっていくと予想される。

3.通信産業で起きていたこと・起きていること – ネットワーク運用者の顔ぶれ

このように設備投資が変わったことには、投資主体が大きく変わったことに由来する。

以下に主要投資主体を示すが、これだけプレイヤが増えてくれば、公衆網の設備投資の比率が下がるのは当然である。

主要投資主体の年代別推移

4.通信産業で起きていたこと・起きていること – 主要機器ベンダ顔ぶれ

このような設備投資の主体が変わったことで、通信機器ベンダの顔ぶれは大きく変わった。1990年代までは通信機器ベンダ=公衆網機器ベンダ=交換機ベンダであったが、今は、公衆網の比率が下がり、かつ交換機の需要そのものが無くなってしまったので、通信機器ベンダ= “携帯端末+企業網+公衆網機器” ベンダとなっている。

市場規模を反映して、上位を占めるのは携帯端末や企業網機器のベンダになっている。

以下表でそのことを示していく。

通信機器ベンダの主要プレイヤー推移

5.電力産業に起きうること

さて、電力産業において、民間投資が電力事業者投資を上回る日は来るのであろうか?

資源エネルギー庁発表によると、日本の最終エネルギー消費の部門別供給源構成比は以下のようになっており、電力の比率は23%である。(2012年度)

日本の最終エネルギー消費の部門別供給源構成比

出典:資源エネルギー庁

例えば、自動車の駆動部がガソリンエンジンから電気モータにシフトしていけば、石油のシェアは縮小し、電力のシェアは拡大することになる。

これらの電力以外が供給している部分に民間投資が進出すれば、民間投資が電力投資を上回る日が来る可能性もある。

まだまだこれからではあるが、既にその兆しはある。

  1. 工場・高層ビルのマイクログリッド構築 (予備電源、コスト削減)
  2. 一般家庭における太陽光発電の導入と屋内配電システム構築
  3. 太陽光発電等を起点とした電力供給システムの構築 (コミュニティ、街灯、その他)
  4. 燃料電池を起点とした電力供給システムの構築 (自動車、その他)

又、どこまで伸びるかは不明だが、IoTデバイス・ウェアラブルデバイス・携帯デバイスへの給電システムの構築もある (無線給電/USB給電)

その時、電力供給者・電力機器ベンダの顔ぶれはどのようになっているのであろうか?

この事は、いずれ、別の角度から推察をしていきたい。

通信民営化が1985年にあって、インターネット/携帯電話が普及し始めたのは1990年代後半。そこから、世の中が大きく変わっていきました。

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執筆者情報

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株式会社ICTラボラトリー

代表取締役 鈴木浩之

1985年4月 富士通株式会社に入社。光伝送機器事業部門に配属され、機器開発から商品企画、及び通信部門事業戦略立案を担当。2006年3月、富士通を退職し株式会社ICTラボラトリーを設立。以後、ICTやスマートグリッド(=ICT×エネルギー)を中心に市場調査サービスを開始し、今日に至る。

企業・団体名 株式会社ICTラボラトリー
所在地 東京都千代田区一番町13-2 KSKビル3階
電話番号 03-5357-1463
メールアドレス info@ict-lab.co.jp
会社HP http://www.ict-lab.co.jp/
サービス・メディア等 http://www.ict-lab.co.jp/sales
https://www.facebook.com/hiroyuki.suzuki.9638

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