省エネ法

省エネ法とは

省エネ法は、「エネルギーの使用の合理化に関する法律」の通称として使われ、石油危機を契機として昭和54年(1979年)に、「内外のエネルギーをめぐる経済的社会的環境に応じた燃料資源の有効な利用の確保」と「工場・事業場、輸送、建築物、機械器具についてのエネルギーの使用の合理化を総合的に進めるための必要な措置を講ずる」ことを目的に制定されました。

対象となるエネルギー

エネルギーとは一般的にはすべての燃料、熱、電気を指して用いられる言葉ですが、省エネ法におけるエネルギーとは、一部の燃料、熱、電気を対象としています。

対象となるものは、原油及び揮発油(ガソリン)、重油、その他石油製品(ナフサ、灯油、軽油、石油アスファルト、石油コークス、石油ガス)、可燃性天然ガス、石炭及びコークス、その他石炭製品(コールタール、コークス炉ガス、高炉ガス、転炉ガス)であって、燃焼その他の用途(燃料電池による発電)に供するもの、上記の対象となる燃料を熱源とする熱(蒸気、温水、冷水等)、上記の対象となる燃料を起源とする電気です。

対象とならないものは、太陽熱及び地熱等、上記の対象となる燃料を熱源としない熱であることが特定できる場合の熱。太陽光発電風力発電廃棄物発電など、上記の対象となる燃料を起源としない電気のみであることが特定できる場合の電気。このような、廃棄物からの回収エネルギーや、風力、太陽光等の非化石エネルギーは対象となりません。

省エネ法が規制する事業分野

省エネ法が直接規制する事業分野としては、「工場又は事業所その他の事業場」、「輸送」、「住宅・建築物」、「機械器具」、の4つがあります。

「工場又は事業所その他の事業所」の分野で規制の対象とされる事業者は、工場・事業場(オフィス、小売店、飲食店、病院、ホテル、学校、サービス施設などすべての 事業所)を設置して事業を行う者です。

「輸送」の分野で規制の対象とされる事業者は、貨物・旅客の輸送を業として行なう輸送事業者、自らの貨物を輸送事業者に輸送させる荷主です。

「住宅・建築物」の分野で規制の対象とされる事業者は、建築時の場合、住宅・建築物の建築主、増改築、大規模改修時の場合、住宅・建築物の所有者・管理者、特定住宅(戸建て住宅)の場合、住宅供給事業者(住宅事業建築主)となります。

「機械器具」の分野で規制の対象とされる事業者は、エネルギーを消費する機械器具の製造事業者及び輸入事業者です。

省エネ法で発生する義務

事業者全体のエネルギー使用量(原油換算値)が1,500kℓ/年度以上であり、特定事業者又は特定連鎖化事業者に指定並びに認定管理統括事業者に認定された事業者には、「適正な人員の選任と配置」、「書類の提出」の義務が課せられます。

※事業者全体のエネルギー使用量(原油換算値)が合計して1,500kℓ/年度以上である場合は、そのエネルギー使用量を国に届け出て、特定事業者の指定を受ける必要があります。フランチャイズチェーン事業等の本部とその加盟店との間の約款等の内容が、経済産業省令で定める条件に該当する場合は、その本部が連鎖化事業者となり、加盟店を含む事業全体のエネルギー使用量(原油換算値)が合計して1,500kℓ/年度以上の場合には、その使用量を本部が国に届け出て、本部が特定連鎖化事業者の指定を受ける必要があります。

適正な人員の選任と配置

各事業所にエネルギー管理統括者及びエネルギー管理企画推進者を選任して配置しなければなりません。

書類の提出

特定事業者、特定連鎖化事業者又は認定管理統括事業者に指定時のみ、現状のエネルギー使用状況を記した、エネルギー使用状況届出書を経済産業局に提出しなければなりません。

本社、工場、支店、営業所、店舗等で使用した燃料、熱、電気の年間使用量を集計し、原油量に換算したものを用います。また、毎年度、定期報告書を、原則毎年度、中長期計画書を提出しなければなりません。さらには、エネルギー管理統括者及びエネルギー管理企画推進者を選解任時に、エネルギー管理統括者等の選解任届出書を提出しなければなりません。

事業者クラス分け評価制度

経済産業局は、定期報告書等の内容を確認し、事業者をS(優良事業者)・A(一般事業者)・B(停滞事業者)へクラス分けします。Sクラスの事業者は、優良事業者として経済産業省のホームページで事業者名や連続達成年数が表⽰されます。

Bクラスの事業者については判断基準の遵守状況、エネルギー消費原単位、電気需要平準化評価原単位の推移等について確認するため、「報告徴収」、「立入検査」、「工場等現地調査」が行われる場合があります。

また、報告徴収、工場等現地調査、立入検査の結果、判断基準遵守状況が不十分と判断された場合、Cクラス(要注意事業者)となり省エネ法第6条に基づく指導が実施されます。エネルギーの使用の合理化の状況が判断基準に照らして著しく不十分であると認められた場合には「合理化計画の作成指示」が行われます。

罰則

省エネ法には、主に義務に従わなかった事業者に対して罰則が設けられています。

エネルギー使用状況届出書を届出しなかった場合、虚偽の届出をした場合

→50万円以下の罰金

定期報告書、中長期計画書を提出しなかった場合、虚偽の報告をした場合

→50万円以下の罰金

エネルギー管理統括者、エネルギー管理企画推進者、エネルギー管理者、エネルギー管理員を、選任・解任の届出をしなかった場合、虚偽の届出をした場合

→20万円以下の過料

エネルギー管理統括者、エネルギー管理企画推進者、エネルギー管理者、エネルギー管理員を、選任しなかった場合

→100万円以下の罰金

エネルギーの使用の合理化の状況が著しく不十分と認められた場合

→合理化計画の作成指示

→指示に従わない場合には企業名の公表をしたうえで命令

→命令に従わない場合には100万円以下の罰金

温対法との対比

温対法は、省エネ法が石油危機を契機として、省エネルギー対策を強化・促進する目的で1979年に制定されたのに対して、地球温暖化対策の推進を目的に、京都議定書が策定された翌年1998年に公布されました。

省エネ法と温対法の大きく異なる点としては、対象者の範囲が異なる点が挙げられます。省エネ法の規制の対象となるのは、「工場又は事業所その他の事業場」、「輸送」、「住宅・建築物」、「機械器具」の4つの分野に当てはまる事業者のみでしたが、温対法では、国と地方公共団体、企業などの事業者、国民に対してまで、それぞれが果たす役割と責務が定められています。

また、それぞれの法に対する罰則でも、異なる点を挙げることができます。省エネ法では、最高で100万円以下の罰金などいくつかの罰則が設けられています。これに対し温対法では、排出量の報告をしない、または虚偽の報告をした場合にのみ、20万円以下の過料という罰則があります。

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