温対法

温対法とは

温対法とは、正式名称を「地球温暖化対策の推進に関する法律」といいます。1997年に京都で開催された気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)での京都議定書の採択を受け、日本の地球温暖化対策の第一歩として国、地方公共団体、事業者、国民が一体となって地球温暖化対策に取り組むための枠組みを定めたことにより、1998年10月9日に制定された法律第107号です。京都議定書の締結に伴い、2002年に改定されました。

地球温暖化が地球全体の環境に深刻な影響を及ぼすものであり、気候変動に関する国際連合枠組条約及び、気候変動に関する国際連合枠組条約第三回締約国会議の経過を踏まえて制定されました。「地球温暖化対策推進法」と、省略されることもあります。

全ての者が自主的かつ積極的にこの課題に取り組むことが重要であり、気候に対して人為的干渉を及ぼすことない水準で大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させ、地球温暖化を防止することが人類共通の課題です。

地球温暖化対策に関して国、地方公共団体、事業者及び国民の責務を明らかにし、地球温暖化対策に関する基本方針を定めることにより対策の推進を図り、現在そして将来の国民の健康で文化的な生活の確保、人類の福祉への貢献をすることを目的としています。

温対法に基づいて、2006年4月1日から温室効果ガスを多量に排出する特定排出者に自らの温室効果ガスの排出量を算定し、国に報告することが義務付けられました。また、国は報告された情報を集計し公表することとされています。

地球温暖化

「地球温暖化」とは、人の活動によって発生する温室効果ガスが大気中の温室効果ガスの濃度を増加させることで地球全体として、地表と大気の温度が追加的に上昇する現象のことと、法律により定義されています。

また、「地球温暖化対策」とは、温室効果ガスの排出の抑制と、動植物による二酸化炭素の吸収作用の保全、強化や、その他の国際的に協力して地球温暖化の防止を図るための施策をいいます。

温室効果ガス

この法律の定義する「温室効果ガス」の種類は、大別して6項目あります。それは、二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、ハイドロフルオロカーボンのうち政令で定めるもの、パーフルオロカーボンのうち政令で定めるもの、ふっ化硫黄です。

「温室効果ガスの排出」は、温室効果ガスを大気中に排出し、放出もしくは漏出させ、他人から供給された電気や電気を熱源とする燃料などの熱を使用することをいいます。

「温室効果ガスの総排出量」は、温室効果ガスの種類ごとに政令で定める方法により算定されるその物質の排出量に、その物質の地球温暖化係数を乗じて得た量の合計量をいいます。

地球温暖化係数とは、二酸化炭素を基準にして、他の温室効果ガスがどれだけ温暖化する能力があるか表した温室効果ガスの種類ごとに決められている係数のことです。

対象となる温室効果ガスと事業者

エネルギー起源のCO₂では、特定事業所排出者と特定輸送排出者が対象です。全ての事業所のエネルギー使用量合計が1,500kl/年以上となる事業者のことを指します。

エネルギー起源のCO₂以外の温室効果ガスでは、温室効果ガスの種類ごとに全ての事業所の排出量合計がCO₂換算で3,000t以上であり、事業者全体で常時使用する従業員の数が21人以上という要件をみたす特定事業所排出者を指します。

排出量算定の対象となる活動

温室効果ガスの排出量の算定の対象となる活動について、項目ごとに記載します。エネルギー起源CO₂では、燃料の使用、他者から供給された電気の使用、他者から供給された熱の使用、非エネルギー起源CO₂では、原油又は天然ガスの試掘や生産、セメントの製造、生石灰の製造、ソーダ石灰ガラス又は鉄鋼の製造、ソーダ灰の製造と使用、アンモニアやシリコンカーバイド、カルシウムカーバイド、エチレンの製造、カルシウムカーバイドを原料としたアセチレンの使用、電気炉を使用した粗鋼の製造ドライアイスの使用、噴霧器の使用、廃棄物の焼却もしくは製品の製造の用途への使用や廃棄物燃料の使用が対象です。

メタン(CH₄)では、燃料を燃焼の用に供する施設や機器における燃料の使用、電気炉における電気の使用、石炭の採掘、原油又は天然ガスの試掘や生産、原油の精製、都市ガスの製造、カーボンブラック等化学製品の製造、家畜の飼養、家畜の排せつ物の管理、稲作、農業廃棄物の焼却、廃棄物の埋立処分、工場廃水の処理、下水とし尿等の処理、廃棄物の焼却もしくは製品の製造の用途への使用や廃棄物燃料の使用が対象です。

一酸化二窒素(N₂O)では、燃料を燃焼の用に供する施設や機器における燃料の使用、原油又は天然ガスの試堀や生産、アジピン酸等化学製品の製造、麻酔剤の使用、家畜の排せつ物の管理、耕地における肥料の使用、耕地における農作物の残さの肥料としての使用、農業廃棄物の焼却、工場廃水の処理、下水とし尿等の処理、廃棄物の焼却もしくは製品の製造の用途への使用や廃棄物燃料の使用が対象です。

ハイドロフルオロカーボン類(HFC)では、クロロジフルオロメタン(HCFC-22)の製造、ハイドロフルオロカーボン(HFC)の製造、家庭用電気冷蔵庫等HFC封入製品の製造におけるHFCの封入、業務用冷凍空気調和機器の使用開始におけるHFCの封入、業務用冷凍空気調和機器の整備におけるHFCの回収及び封入、家庭用電気冷蔵庫等HFC封入製品の廃棄におけるHFCの回収、プラスチック製造における発泡剤としてのHFCの使用、噴霧器及び消火剤の製造におけるHFCの封入、噴霧器の使用、半導体素子等の加工工程でのドライエッチング等におけるHFCの使用、溶剤等の用途へのHFCの使用が対象です。

パーフルオロカーボン類(PFC)では、アルミニウムの製造、PFCの製造、半導体素子等の加工工程でのドライエッチング等におけるPFCの使用、溶剤等の用途へのPFCの使用が対象です。

六ふっ化硫黄(SF₆)では、マグネシウム合金の鋳造、SF₆の製造、変圧器等電気機械器具の製造及び使用の開始におけるSF₆の封入、変圧器等電気機械器具の使用、変圧器等電気機械器具の点検や廃棄におけるSF₆の回収、半導体素子等の加工工程でのドライエッチング等におけるSF₆の使用が、三ふっ化窒素(NF₃)では、三ふっ化窒素(NF₃)の製造、半導体素子等の加工工程でのドライエッチング等におけるNF₃の使用が対象です。

排出量の報告

特定事業所排出者は毎年度7月末日までに、特定輸送排出者は毎年度6月末日までに報告をしなければなりません。算定対象期間は、HFC、PFC、SF₆、NF₃の代替フロン等ガス以外の温室効果ガスは年度ごと、代替フロン等ガスは暦年ごととなっています。報告をしない、または虚偽の報告をした場合には20万円以下の過料の罰則があります。

温対法のポイント

温対法は、温暖化防止を目的とする日本で初めての法制度です。「排出自由」の考え方を改めて、国、地方公共団体、事業者、国民の全ての主体の役割を明らかにします。6%削減目標を達成するための将来の対策にとって欠かせない「土台」を用意しています。

温室効果ガスの6項目全てを対象にした取り組みを促進しています。二酸化炭素の対策としても、省エネ以外の取り組みも含めて幅広く対策を促進します。特に事業者については、他者の取り組みに寄与する製品開発等の措置をも促します。

国や地方はもちろん、相当量を排出している事業者についても、計画作りやその実施状況の公表を促します。これによって、国民に開かれた形での計画的な取り組みを広く促します。

全国共通的な取り組みだけではなく、地方にも応じた細かな対策を推進します。このため地方公共団体に対しても、地球的問題に関してその責任範囲内で可能な役割を発揮するように求めます。

国民が行う温暖化防止のための行動を進めやすく、効果的にするための仕組みを設けます。啓発や広報、相談、推進員の研修、調査研究、製品情報提供等をする、国、都道府県の地球温暖化防止活動推進センターがある他、個々の住民への直接的な啓発、助言、情報提供をする地球温暖化防止活動推進員などがあります。

温対法に対する責務

温対法に対する責務を、項目ごとに分けて説明します。国の責務は、環境監視、排出抑制、吸収作用の保全強化のための総合的施策の推進、関係施策における排出抑制等の配意、自ら出す温室効果ガスの排出抑制等、地方公共団体、事業者、国民の取り組みの支援、政策向上のための調査研究、国際協力などです。

地方公共団体の責務は、自ら排出する温室効果ガスの排出抑制等、区域の住民や事業者の活動の促進のための情報提供等、その他の自然的もしくは社会的条件に応じた措置などです。

事業者の責務は、自ら排出する温室効果ガスの排出抑制等、製品改良や国際協力等他の者の取り組みへの寄与、国や自治体の施策への協力などです。国民の責務は、日常生活に関する排出抑制と、国や自治体の施策への協力などです。

省エネ法との対比

温対法と同じように、省エネ法でも温室効果ガスを一定以上排出する事業者に対し、その排出量等を国へ報告することが義務付けられています。ここでは温対法と省エネ法にどのような異なる点があるのか対比をします。

温対法は、1998年に京都で開催されたCOP3での京都議定書の採択を受け、日本の地球温暖化対策の第一歩として国、地方公共団体、事業者、国民が一体となって地球温暖化対策に取り組むための枠組みとして定められました。

温対法に対する責務で記載したように、温対法では国と地方公共団体、事業者、国民それぞれが役割を果たし、地球温暖化対策の推進を目的としています。

一方省エネ法についてです。省エネ法の正式名称は、「エネルギーの使用の合理化等に関する法律」といいます。石油危機を契機として1979年に制定された法律であり、省エネルギー対策の強化と促進を目的とする法律です。

省エネ法におけるエネルギーの対象は、特定の燃料、熱、電気です。廃棄物からの回収エネルギーや風力、太陽光等の非化石エネルギーは対象ではありません。電気の需要の平準化については、2013年改正時に導入されました。工場や事業場、輸送、住宅や建築物、機械器具を規制しており、温対法とは対象範囲が異なります。

また、罰則についても異なる点があります。温対法では排出量の報告をしない、または虚偽の報告をした場合には20万円以下の過料という罰則があります。

一方省エネ法では、エネルギー使用状況届出書と定期報告書、中長期計画書を提出しなかった、または虚偽の報告をした場合には50万円以下の罰金が科せられます。

さらに、エネルギー管理統括者、エネルギー管理企画推進者、エネルギー管理者、エネルギー管理員の選任と解任の届出をしなかった、または虚偽の報告をした場合には20万円以下の過料、そもそも選任をしなかった場合には100万円以下の罰金が科せられます。

他にも、エネルギーの使用の合理化の状況が著しく不十分と認められた上、合理化計画の作成指示に従わない場合には企業名の公表と命令が下されますが、それにも従わない場合は100万円以下の罰金が科せられます。

このように、温対法の罰則はひとつで20万円以下の過料であるのに対し、省エネ法の罰則は複数あり最大で100万円以下の罰金と温対法よりも額が大きくなります。

J-クレジット制度との関連

J-クレジット制度とは、省エネルギー機器の導入や森林経営などの取組によるCO₂などの温室効果ガスの排出削減量や吸収量を、「クレジット」として国が認証する制度です。

国内クレジット制度とオフセット・クレジット(J-VER)制度が発展的に統合した制度で、国により運営されています。創出されたクレジットは、低炭素社会実行計画の目標達成やカーボン・オフセットなど、様々な用途に活用できるものです。温対法の調整後温室効果ガス排出量や、調整後排出係数の報告に利用可能です。

温対法に関しては、温対法に基づく無効化期限までにJ-クレジットの無効化手続を完了させ、所定の様式に必要な情報を記載し提出することで活用できます。

これは、原則報告対象年度内に無効化手続が完了したクレジット量となります。ただし、報告対象年度の翌年度の6月末までに無効化手続が完了したクレジット量については、報告対象年度の効果として報告するか、翌年度の効果として報告するかは任意となります。

電力会社によるJ-クレジット制度を活用した排出量算定方法

電力会社の基礎二酸化炭素排出量の算定方法については、自社電源に由来する電気と他者から調達した電気の合計量となります。前者は、算定省令に定められている燃料の使用量に燃料種ごとの単位発熱量、燃料種別排出係数および44/12を乗じて二酸化炭素排出量を算定します。

後者は、他者から調達した電気の発電に伴い排出された基礎二酸化炭素排出量を基礎二酸化炭素排出量の算定フロー図にしたがい、調達先より得られる情報に応じて把握します。

契約等に基づき電源が特定できる場合については、調達先より得られる情報に応じ、基礎二酸化炭素排出量を算定します。電源は特定できないが、事業者や事業所単位の情報から算定できる場合については、受電電力量に事業者等ごとの基礎排出係数を乗じて算定します。その他に、他者から調達した電気について上記いずれの方法によっても基礎二酸化炭素排出量を算定することが困難な場合は、当該受電電力量に代替値を乗じて基礎二酸化炭素排出量を算定します。

コジェネレーションシステムによる発電に関しては、基礎二酸化炭素排出量の算定にあたり、当該システムに投入された化石燃料の使用に伴う二酸化炭素の排出量を、定められている方法で電気と熱に按分することによって算定します。

自社電源に由来する電気や他者より調達した電気であっても、小売供給しなかったなど他の電気事業者等に販売した場合は、定められている方法により、当該電気を販売した者の基礎二酸化炭素排出量から控除するものとします。

非エネルギー起源CO₂基礎排出量の算定式は、CO₂排出量(tCO₂)=廃棄物の焼却量もしくは製品の製造の用途への使用量(t)×単位焼却・使用量当たりのCO₂排出量(tCO₂/t)となります。廃棄物燃料の使用に関しては、CO₂排出量(tCO₂)=使用量(klまたはt)×単位使用量当たりのCO₂排出量(tCO₂/klまたはtCO₂/t)となります。

メタン、一酸化二窒素基礎排出量の燃焼施設における燃料の使用算定式は、ガス排出量(tガス)=使用量(t,kl,1,000Nm³)×単位発熱量(GJ/t,GJ/kl,GJ/1,000Nm³)×単位発熱量当たり排出量(tガス/GJ)となります。

工場廃水の処理の算定式は、CH4排出量(tCH₄)=工場廃水処理施設流入水に含まれるBODで表示した汚濁負荷量(kgBOD)×単位BOD当たりの工場廃水処理に伴う排出量(tCH₄/kgBOD)N2O排出量(tN₂0)工場廃水処理施設流入水中の窒素量(tN)×単位窒素量当たりの処理に伴う排出量(tN₂O/tN)となります。

HFC,PFC,SF₆,NF₃の基礎排出量は、合計19種ある化学物質のHFC類は、合計で3,000tCO₂以上、合計9種ある化学物質のPFC類は、合計3,000tCO₂以上、SF₆とNF₃はそれぞれ3,000tCO₂以上となります。

いずれも当該ガスを排出した場所を管理や運営している事業者が算定・報告します。基本的な算定方法は、活動の種類ごとにHFC-23等の個々の化学物質ごとの排出量を求め、個々の化学物質ごとに地球温暖化係数を乗じてCO₂の単位に換算し、HFC、PFC、SF₆、NF₃等ガスの種類ごとに合算して計算します。