炉頂圧発電

炉頂圧発電とは

製鉄所の高炉で使用する設備で、高炉から排出される圧力を有効利用する発電方法です。また、製鉄所の騒音や振動などの環境対策としても利用されています。

炉頂圧発電はコジェネレーションの一つです。コジェネレーション(熱電併給)とは、天然ガス、石油、LPガス等を燃料として、エンジンタービン、燃料電池等の方式により発電し、その際に生じる廃熱も同時に回収するシステムのことです。

工場ではプロセスにおいて大量の蒸気を使用しており、蒸気によりエネルギーロスが発生します。これを有効利用して発電を行うことができます。新興国では安価な石炭がエネルギー源の多くを占めることが多く、本方式による熱電併給は地球環境の向上や、化石燃料価格の安定化に貢献します。

炉頂圧発電のメリットとデメリット

メリット

  1. メインの役割が製鉄でその副産物として電力が出るため、発電のための燃料が不要です
  2. 発電することによって排出される温室効果ガスが発生しません。そのため、発電により公害が発生しません
  3. 従来の炉頂圧制御の際は騒音や振動が発生していました。しかし、炉頂圧発電を設置したことにより騒音や振動が電力へと変わり、騒音や振動が軽減されました

デメリット

  1. 動力源として利用するガスには腐食性ガスが含まれるため定期的な設備の点検が必要となることです

炉頂圧発電の仕組み

鉄鉱石を還元して鉄を作る高炉の炉頂部から出るガスは、通常3〜4気圧の圧力を持っています。この圧力を利用してタービンを回すことにより電気を取り出す仕組みです。炉頂圧発電は高炉の集塵設備の下流に設置されます。

2016年代では効率の良い軸流タービンが主流となっていて、タービンの羽を可変とし、その角度を変えることにより、排出される気圧をより効率的に電力に変換できるようになっています。

炉頂圧発電の普及

高炉ガスの圧力エネルギーを回収する考えは1960年代前半にソ連によって相次いで成されました。炉頂圧発電は和歌山で1974年9月に初めて日本に導入され、2016年9月では国内で26基が稼働しています。日本だけではなく海外でも普及しており、中国では7基、台湾では6基、ブラジルでは4基、韓国では3基、アメリカでは2基、合わせて22基が稼働しています。

製鉄業では、製造工程で大量の石炭や水を使うため、ばい煙や粉じん、そして二酸化炭素(CO2)、窒素酸化物、硫黄酸化物などの排ガスが大気中に放出され、大気汚染とともに公害問題がありました。

「炉頂圧発電」はその対策のひとつとして1960年代から検討が進められ、1973年のオイルショックを契機に、全国の製鉄所は省エネルギー対策としても効果のあった炉頂圧発電を建設するようになり、全国各地の高炉には100%炉頂圧発電が装備されています。炉頂回収プラントは燃料を使用しないため、発電量がほぼそのまま利益になります。

現状と今後の動向

既に国内では全高炉に設置されており、2010年において年間約35億kKWの電力を発電しています。これにより年間190万トンのCO2削減効果を挙げています。これは100万kWの原子力発電所0.5基分に相当します。 また、海外でも普及が行われています。

1996年の時点で韓国では既に100%普及し、中国でも重要な省エネルギー対策と考えられています。日系企業が設置に係わった事例は2014年度までに58機があり、中国・韓国においては年間1073万トンのCO2削減効果を上げています。

一方、1996年時点において、欧米ではイギリスで0%、アメリカで2%、ドイツで24%とまだまだ未設置の高炉が多くあります。さらに2011年の報告書によるとAPP(クリーン開発と気候に関するアジア太平洋パートナーシップ)7ヵ国に普及した場合のCO2削減ポテンシャルは年間542万トンとされています。

莫大な電力を消費する製鉄業において省電力化は経済面、環境面ともにきわめて重要な課題です。そのため、新たに燃料コストや環境負荷がかからない炉頂圧発電のさらなるの普及が望まれます。

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